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街は今日も平和です~神楽坂探偵事務所の邪神駆除日記~  作者: みやなぎさん


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9/12

第9話:遭遇『うさんくさい教育実習生(前編)』

「黒江さん黒江さん!

 聞いてくださいよ黒江さーん!!!」


平日、夕方の神楽坂探偵事務所。

放課後そのままやって来た茜は、制服のスカートをなびかせながら

勢い良くドアを開ける、壊れたら弁償させようと思った。

黒江のデスクでは、ぶかぶかのパーカーを羽織りタバコを咥え

ジッポライターの蓋をカチ....カチ.....と無心で開閉させている。


「.......ンだようるせぇな、友達いねぇのか?」


「こんな可憐な美少女に居ない訳ないじゃないですかっ!!

 それよりも!私のクラスに昨日から教育実習生が来てるんですけどね!?

 もうめっちゃくちゃイケメンで爽やかで!

 学校中の女子がそれはそれは大騒ぎなんですよ!!!」


「.......ふーん、よかったな。」


黒江は興味なさそうに死んだ目で返事をし、マッ缶を煽る。


「ちょっと!本当に聞いてます!?

 九十九先生っていうんですけどね、現代文を担当してるんです。

 『九十九 怜』先生!苗字からしてカッコよくないですか!?

 高級そうなスーツを完璧に着こなしてて!笑顔がすっごく眩しいんです!!」


「..........そ、良かったな。

 ワンチャン無いだろうけど、いい夢見ろよ。」


「ワンチャンなんて狙って無いですよ私は!

 まったく、おんなじ大人なのになんでこうも違いますかねえ。」


茜は黒江を頭からつま先まで見て、溜息をつく。


「........見た目は同い年くらいだろ。

 それよりも、仕事する前に課題は終わらせろよ。」


「はーい.....あ!」


課題をするために鞄を漁っていた茜は驚いたような声を出し

鞄をひっくり返して何かを探している。


「........忘れたか?」


「はいぃ.....取ってきます......。

 そうだ、どうせなら一緒にどうです?

 もしかしたら九十九先生に会えるかもしれませんよ!

 その死んだような目も疲れ切った顔も!

 九十九先生のイケメン顔みたら治るかも!!!」


「......勝手に行って来いよ、私は部外者だぞ。

 .....................マッ缶2本な。」


「えーっ、私が奢って欲しいくらいなのになあ。

 それじゃ行きましょ!準備してくださーいっ!」


──────────────────────────────


夕暮れ時の学校。

橙色の陽光が差し込む静まり返った校舎は

昼間のにぎやかさが嘘のように閑散としていた。


「それじゃ、ちょっと教室まで取ってきます!」


階段を駆け上がろうとする茜の背中に

黒江はポケットから煙草を取り出しながら声をかける。


「.......職員室で提出物の確認もしとけよ。

 忘れて萎えんのを見るのはもう飽きたぞ。」


「ナイス黒江さんっ!

 すぐ戻ってきます!少々お待ちをーっ!」


茜が素直に階段の上へと消えていくのを見届け

黒江は1人、西日が差し込む静かな昇降口の窓際に立った。

タバコを咥え火をつけようと、ジッポライターの蓋を

カチカチと開閉させていた、その時。


「.........校内は禁煙だよ、神楽坂探偵。」


静かで、しかしやけに耳に障る爽やかな声が聞こえた。

廊下の角から姿を現したのは、仕立ての良いスーツを纏った1人の青年。

茜が言っていた通りの、絵に描いたような好青年....九十九センセーだろう。

しかし黒江の鋭い嗅覚と経験が、皮膜の裏にある

異質すぎる違和感を即座に察知した。


(........コイツか。)


背筋が冷えるような感覚.......掌の上で弄ばれるイメージが浮かぶ。

こんな気配を纏うヤツを、黒江は1人だけ知っている。

黒江はジッポをポケットに仕舞い、死んだ目で男を睨みつける。


「......趣味の悪ィ仮装だな、ニャル。」


「あは、やっぱり君には通じないよね。

 しかしその目......いいね、実に素晴らしい。」


「話題を逸らすなよ、次の狙いは茜か?」


「どちらかというと君だけどね。」


九十九はニッコリと爽やかに微笑み、黒江との距離をゆっくりと詰める。

昇降口の空気が、一瞬にして凍り付いた。

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