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今日からよろしくお願いします




 ネットワーク通信が乗っ取られる危険性を鑑みて、災害復興用搭乗型巨大ロボット「ナナカマドん」はネットワーク通信を遮断したアナログ仕様になっている。

 AIによるサポートもこの操縦シミュレーション室でのみ使用可能で、実践では使用不可。

 実践では指令室からの命令順守が第一だが、予測不能の出来事も起こる為に、俊敏な自己判断が必ず必要になる。




「操縦手順を覚えるのは基礎中の基礎。操縦シミュレーションの初日に完璧に覚えていなくちゃいけない事を覚えていないなんて。しかも覚えられないなんて泣き言を口にするなんて話にならない。もう二週間も経ったのに、マニュアル本の十分の一も覚えられていないなんて。不適格なのよ。もういいんじゃない。努力したってできない事はできない。人間は完璧じゃないもの。諦める事も大切よ」

「………はい。そうですね。そうですよね」


 操縦シミュレーション室にて。

 午前の部の操縦シミュレーションが終わった直後の事である。

 菊花《きっか》からの言葉に顔を蒼褪めさせながらも返事をした茜《あかね》。ありがとうございましたと菊花に頭を下げて部屋から出て行った。




「っは。反論もしないなんて。ほんと、さいあく。次の相棒はもっとマシな人間がいいわ」

「あの」

「っなに? あんた出て行ったんじゃないの?」


 菊花は五分も経たずに戻って来た茜に、けれど、尖がった声音で以て尋ねた。

 茜は顔を蒼褪めさせたまま、ここで暫く暮らしますと言った。


「………は?」

「教官に許可を貰って来ました。座学と体力トレーニングと風呂とトイレ以外はここで過ごします」


 茜は小さく頭を下げては小さく頭を上げてのち、今日からよろしくお願いしますと光を失った瞳を空の景色だけが映る画面に向けたのであった。











(2026.10.12)




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