バカでごめんなさいいいいいいぃ
訓練寮棟の茜の個室にて。
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロリン。
ほどよい硬さがある狭いベッドの上で茜は器用に転がり回っていた。
眉尻を下げて、鼻の下を伸ばして、口の端を下げて、か細い呻き声を上げながら。
「ああああああ~~~。いやだああああああ~~~。いやだよおおおおおお~~~。操縦シミュレーション室に行きたくないよおおおおおお~~~。菊花にダメ出しされるの怖いよおおおおおお~~~。胸が抉られるよおおおおおお~~~」
茜が操縦シミュレーションを行った初日。
本来であれば午前の部と午後の部と二回行われるはずだったのだが、頭が真っ白になった茜を監視カメラ越しに見ていた教官と、茜専用のサポートAIである菊花の二人から、マニュアルを読み直すように厳命が下されたので、午後の部は行われず。
二日目からは午前の部と午後の部と二回操縦シミュレーションを行う事ができたのだが、頭が真っ白になったとは言わずとも、極めた緊張と勉強不足が相まって、何度も何度も何度も数え切れないほど何度も操作を間違える始末。
その度に、菊花から言われるのである。
あんた、本当に訓練生なの。と。
絶対零度の声音で以て。
この一週間。菊花は画面上に姿を見せてくれた事は一度もなく、声だけであった。
「絶対零度の声のまま注意もするし指摘もするし間違えずにやれるまで操縦シミュレーション室から出さないからって言うし。もう見放す寸前? いや、見放していますけど命令で仕方なく僕のサポートをしてやってます。って言わんばかりの声。教官はツンデレ女子高校生仕様にしているって言ったけど絶対に嘘だよツンデレじゃないよツキツキだよズキズキだよだようううううう僕だって間違えたくないよ勉強だってしているよでもこんな分厚いのにマニュアル本絵が少なくて文字が小さすぎて頭に入って来ないんだもんんんんんバカでごめんなさいいいいいいぃ」
動きを止めて仰向けになった茜は顔に綿の枕を押しつけたのであった。
「んんんんんんん」
(2026.10.11)




