↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VR恋リアのテストだと思ったら本物の異世界でした〜「ヤラセだろ?」と勘違いした俺たちの愛の力が最強すぎる件〜  作者: ぽてと
魔王城と、一億円の選択

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/26

第22話 魔王(ディレクター)の甘い罠

ギィィィィィン……。

重厚な扉が開き、アヴァロンとティアは魔王城の最深部『玉座の間』へと足を踏み入れた。


そこは、血のように赤い絨毯が敷かれた、底冷えするほどに広大な空間だった。

部屋の最奥、禍々しいオーラを放つ漆黒の玉座に、一つの巨大な影が座っている。頭には山羊のようなねじれた二本の角。背中にはコウモリのような巨大な翼。まさにRPGのラストボスにふさわしい、絶望的な威圧感を放つ魔王の姿がそこにあった。


――しかし。

その魔王の頭には、なぜかテレビ局のスタッフがつけるような『インカム(ヘッドセット)』が装着されており、手にはカンペ用の『クリップボード』が握られていた。


「アー、テステス! 本番入りまーす! よくぞ辿り着きましたね、最終ペアのお二人!」


静寂をぶち壊す、どこまでも軽く、そして聞き慣れたハイテンションな声。

アヴァロンとティアは、思わずポカンと口を開けた。


「お前……まさか、神(ディレクター)か!?」

「ご名答! この『ラヴ・クエスト・アイランド』の総責任者(ディレクター)にして、最終ボスの魔王でもあります。いやぁ、二人のイチャイチャ、モニター越しに最高に楽しませてもらいましたよ!」

魔王(ディレクター)は、玉座から立ち上がり、パンパンと軽薄な拍手を送った。


「ふざけないで! 神様だか魔王だか知らないけど、アンタを倒せばゲームクリアで賞金一億円なんでしょ! さっさと賞金よこしなさい!」

ティアがフライパンを構え、鋭い視線を射抜く。


すると、魔王はニヤリと口角を吊り上げ、インカムのマイクを指で弾いた。

「ええ、もちろん。しかし、恋愛リアリティーショーの最終回(クライマックス)には、視聴者が最も喜ぶ『最高のどんでん返し』が必要ですよね?」


魔王が指をパチンと鳴らす。

瞬間、ティアの目の前の空間が歪み、二つのアイテムが空中にフワリと浮かび上がった。

一つは、禍々しい光を放つ『黒い短剣』。

もう一つは――神々しい黄金の輝きを放つ、『賞金一億円の小切手(ホログラム)』だった。


「ティアさん。いや……現実世界の『伊藤マイ』さん」

「……ッ!」

現実(リアル)の本名を呼ばれ、ティアの肩がビクッと跳ねた。


「極貧のフリーター生活、朝から晩までのブラックバイト、毎月ギリギリの家賃の支払い。私はあなたの過酷な『現実』をすべて把握しています。あなたは、他の参加者のようにロマンスを求めてこのゲームに参加したわけではない。その一億円で、人生を逆転させるためにここに来たはずだ」

魔王の甘く、そして冷酷な声が、玉座の間に響き渡る。


「そこで、ディレクター権限で特別なご提案です。……今ここで、その黒い短剣で、隣にいるアヴァロンさんを背後から刺してください。そうすれば、彼は強制リタイアとなり、ゲームはあなたの単独クリア。賞金一億円は、今すぐ全額、無税であなたの口座に振り込まれます」


「な……っ」

ティアの息が止まった。


「断る、というならそれでも構いません。二人で私に挑むのも自由です。……しかし、私とまともに戦えば、あなた方の勝率は0%。必ず全滅し、ゲームオーバーとなり、手に入る賞金は『0円』になります」

魔王は、翼を広げて圧倒的な魔力を解放した。それは、先ほどのクラーケンなど比較にならない、空間そのものを圧殺するような桁外れのプレッシャーだった。二人で挑めば、間違いなく殺される。それが本能で理解できるほどの力の差。


「さあ、究極の選択です。愛する男と共に戦い、無様に散って『0円』で現実に帰るか。それとも、ここで彼を裏切り、確実に『一億円』を手に入れて人生を大逆転させるか」


魔王の残酷な笑い声が響く。


「愛なんて、現実の生活の前では何の役にも立ちませんよ。あなたが一番よく知っているはずだ。お金がなくて、どれだけ惨めな思いをしてきたかを!」


「〜〜〜〜ッ」

ティアは、空中に浮かぶ一億円の小切手を見つめた。

頭の中に、これまでの泥水すするような過酷な生活がフラッシュバックする。

店長の怒号。すり減った靴。割引シールの貼られた惣菜。一億円があれば、そのすべてから解放される。何不自由ない、まともな生活が手に入る。そのために、自分はあんなに嫌だった「猫被り」をしてまで、このゲームを這い上がってきたのだ。


一億円が、すぐ目の前にある。

手を伸ばして、隣のバカな男を刺すだけで。


「……ティア」

声がして、ティアはハッと横を向いた。

アヴァロンが、漆黒の兜の奥から、静かに彼女を見つめていた。


アヴァロンの顔を見た瞬間、ティアの手はガタガタと激しく震え始めた。


(どうしよう……。一億円が欲しい。でも、アヴァロンを裏切るなんて、そんなこと……っ)


究極の二択。

打算か、愛か。

魔王の仕掛けた最悪の罠の前で、ティアの心は千切れるほどの悲鳴を上げていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。