↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VR恋リアのテストだと思ったら本物の異世界でした〜「ヤラセだろ?」と勘違いした俺たちの愛の力が最強すぎる件〜  作者: ぽてと
波乱のサバイバルビーチ! 追加キャストと嫉妬の火花

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/26

第19話 クラーケン襲来! パラディンの裏切りと本物の騎士

レオンとティアのペアは、無言のまま薄暗い洞窟の最深部へと足を踏み入れていた。

先ほどの『落石ドン(未遂)』の一件以来、二人の間には極めて冷え切った空気が流れている。レオンは苛立ちを隠そうともせずスタスタと前を歩き、ティアは冷めた目でその後ろ姿を追っていた。


「……行き止まりか。チッ、ハズレルートを引かされたらしいな」

レオンが舌打ちをした。

二人の目の前には、巨大な地底湖が広がっていた。波一つない不気味な水面が、たいまつの光をヌメヌメと反射している。


「戻りましょう。これ以上進んでも無駄みたいですし」

ティアが踵を返そうとした、その時だった。


ゴボッ……ゴボゴボゴボッ……!!


地底湖の水面が突如として大きく泡立ち、洞窟全体が激しい地震に見舞われた。

「きゃっ!?」

バランスを崩したティアがその場にしゃがみ込む。


ザバーーーーーーーンッ!!!

水柱と共に姿を現したのは、洞窟の天井に届くほどの巨大な八本の触手と、無数の不気味な眼球を持つ巨大なイカの化け物――ボスモンスター『クラーケン』であった。


「シャアアアアアアッ!!」

鼓膜を破るような咆哮が洞窟に響き渡る。

レイドボス級の圧倒的な殺意と威圧感。ゲームの画面越しではなく、現実の肉体で感じる『本物の死の恐怖』がそこにあった。


「な……っ!?」

聖騎士レオンは、その場に完全に縫い留められていた。

彼の頭の中にある『恋愛シミュレーション攻略マニュアル』には、好感度の上げ方やデートの選択肢は載っていても、「規格外の巨大モンスターとの実戦的立ち回り」など1ページも書かれていない。

プライドが高く、安全な場所から『完璧な王子様』を演じていただけの男にとって、この理不尽な暴力は完全にキャパシティを超えていた。


「レ、レオン様! 武器を……ッ!」

ティアが叫ぶ。

しかし、レオンの口から出たのは、情けない悲鳴だった。


「ひ、ヒィィィィッ!! く、来るなァァァッ!!」

ガシャンッ!

レオンはあろうことか、腰に差していた聖騎士の剣を放り捨てた。そして、腰を抜かしているティアの肩を乱暴に突き飛ばし、クラーケンの方へと押しやったのだ。


「えっ……?」

「ヒロインなら、大人しく僕の囮になって時間を稼げッ!!」


それは、保身のために女を犠牲にする、人間の最も醜い『素顔』だった。

レオンは恐怖で顔を引き攣らせながら、ティアを振り返りもせずに、洞窟の出口へ向かって一目散に逃げ出してしまった。


残されたのは、丸腰のシスターただ一人。

「ウソでしょ……。最低のクズじゃない……!」


シューゥゥゥッ……!

クラーケンの巨大な触手が、無防備なティアを完全に標的に定め、空高く振り上げられた。

大気を切り裂く音と共に、丸太のような触手がティアの華奢な身体へと叩きつけられる。


(あ、これ……本当に死ぬ……)

逃げることも防ぐこともできない。ティアがギュッと目を瞑り、死を覚悟した、その瞬間。


ドゴォォォォォォォォォンッ!!!!!


洞窟の岩壁が、内側から爆発するように粉々に吹き飛んだ。

もうもうと立ち込める粉塵の中から飛び出してきたのは、漆黒の重鎧に身を包んだ一人の騎士。


「……間に合ったぜ」


ガァァァァァァンッ!!

アヴァロンが、両手で構えた大剣で、ティアに迫っていたクラーケンの触手を真正面から受け止めていた。


「アヴァ、ロン……!?」

ティアは信じられない思いで目を見開いた。

別ルートを探索していたはずの彼が、壁を物理的にぶち破って駆けつけてきたのだ。


「遅くなって悪かったな、ティア。リリスと一緒にお宝見つけたんだけどよ、嫌な予感がして壁ブチ抜いてショートカットしてきたわ」

アヴァロンは、触手の尋常ではない膂力に歯を食いしばりながらも、ニッと不敵に笑った。

「それにしても……あの逃げてった金髪野郎。お前を置いてったのか?」


「……っ」

ティアが唇を噛むと、アヴァロンの目から、いつものお調子者の色がスッと消え去った。


「そうかよ」

アヴァロンの全身から、底冷えするような、しかし燃え盛るような『怒り』のオーラが立ち昇り始める。


「俺のパーティーの大事なヒロインを……囮にするようなクズが、騎士を名乗ってんじゃねぇぞッ!!」


咆哮と共にアヴァロンが大剣を弾き返し、クラーケンの巨体を大きく仰け反らせる。

その背中を見つめながら、ティアの胸の奥で、今まで感じたことのない激しい鼓動が鳴り響いた。


(バカ。バカアヴァロン。……あんた、どうしていつもそうやって、真っ直ぐなのよ……!)

一億円のための打算も、清楚なシスターの計算も、そこにはなかった。

ただ、自分のために激怒し、命を懸けて背中を守ってくれるこの「不器用な暗黒騎士」への、抑えきれない愛おしさが込み上げてきた。


ピロロロロロロンッ!!!!!!!


洞窟内に、神のシステムさえもバグを起こしたかのような、けたたましいファンファーレが鳴り響く。


『システムアナウンス! エラー! エラー! アヴァロンさんの極限の守護欲求と、ティアさんのリミットブレイク級の胸キュン(完全な陥落)が共鳴!!』

『アヴァロンさんに《愛の力・バフ(暗黒騎士の真の覚醒・物理法則無視)》が付与されました!!!』


ズドォォォォォォォォン!!

アヴァロンの漆黒の鎧が弾け飛び、その内側から、星の瞬きのような眩い光のオーラが噴き出した。

それはもはや暗黒騎士の力ではない。愛する者を守るためだけに顕現した、正真正銘の『ヒーロー』の力だった。


「おっしゃあ! いくぜ、ティア! 俺の、いや……俺たちの愛の力だァァァッ!!」


アヴァロンが跳躍する。

そのスピードは音速を超え、彼の大剣から放たれた光の斬撃は、地底湖の水を真っ二つに割り、巨大なクラーケンの巨体を唐竹割りに両断した。


「ギ、ギャアアアアアアアッ……!!」

断末魔の悲鳴と共に、レイドボスが光の粒子となって霧散していく。


静寂が戻った洞窟内。

光のオーラを散らしながら着地したアヴァロンが、大剣を肩に担ぎ直し、ゆっくりとティアの方へ振り返った。


「怪我、ねぇか? ……ティア」


その顔は泥と汗にまみれ、決してスマートとは言えない。

だが、ティアの目には、どんな計算し尽くされた王子様よりも、彼が一番カッコよく映っていた。


「……アヴァ、ロン……っ」

ティアはフラフラと立ち上がると、そのままアヴァロンの胸の中に勢いよく飛び込んだ。


「うおっ!?」

「バカッ! あんたなんて、ただのバカなんだから……っ、無理しないでよ……!」

ボロボロと涙をこぼしながら、素のヤンキー口調でしがみついてくるティア。

アヴァロンは一瞬驚いたように目を瞬かせたが、すぐに優しく微笑み、大きな手でティアの頭をポンポンと撫でた。


「わりぃ。でも、絶対にお前を守るって約束しただろ?」


打算の仮面が完全に砕け散り、二人の間の隔たりが完全に消え去った瞬間。

最強のバフを生み出した二人の絆は、この恋愛サバイバルにおいて、もはや誰にも引き裂けない本物の『愛』へと昇華しようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。