第14話 完璧なパラディンと、あざとすぎる踊り子の登場
「アー、テステス! それでは皆さん、新エリアへ転送しまーす!」
神の陽気な声と共に、八人の参加者たちの視界が真っ白に染まった。
次に目を開けた時、彼らの足元にはサラサラとした白い砂浜が広がり、目の前にはエメラルドグリーンに輝く広大な海がどこまでも続いていた。波の音と、ジリジリと肌を焦がすような夏の太陽。
「うおおっ、海だ! 水着イベントの気配がするぜ!」
アヴァロンが漆黒の重鎧をガシャガシャと鳴らしながら、子供のように海へ向かって駆け出した。
そんな無邪気な暗黒騎士の背中を見つめながら、ティアは小さくため息をついた。
(昨日の夜、自分の命を懸けて私を助けてくれた時は最高にカッコよかったのに……やっぱり、基本はノリだけで生きてるただのバカでお調子者の男よね。海に鎧着てはしゃぐとか、アバターの設定に引っ張られすぎだし。でも、まあ……)
ティアの口元が、無意識に少しだけ緩む。しかし、その穏やかな空気は、続く神のアナウンスによって見事に粉砕された。
「お待たせしました! それでは、番組の起爆剤となる追加キャストの2名をご紹介します! どうぞー!」
砂浜の奥から、まばゆい光の粒子と共に二つのシルエットが現れた。
「やあ、初めまして。君たちが初期メンバーだね。美しい海と、それに負けないくらい魅力的な女性たちにお会いできて光栄だよ」
最初に声をかけてきたのは、白銀の聖鎧を身に纏い、太陽のように爽やかな笑顔を浮かべた金髪の『パラディン(聖騎士)』だった。
「僕は聖騎士のレオン。途中参加だけど、みんなと素敵な関係を築きたいと思ってる。特には……そこの君」
レオンは迷うことなく真っ直ぐにティアの前まで歩み寄ると、彼女の右手を取り、手の甲にそっと口づけを落とした(フリをした)。
「純白のシスター服……とても似合っているよ。君みたいな可憐な人がこのサバイバルを生き抜いてきたなんて、驚きだ。これからは、僕が君の盾になろう」
「えっ……あ、ありがとうございます……」
完璧すぎる王道イケメンの振る舞いに、ティアは思わず頬を赤らめた。
(な、なんなのこの人! 顔面偏差値カンストしてる上に、エスコートが自然すぎる! アヴァロンみたいな中二病の『俺様ナイト』とは次元が違う、本物の王子様キャラじゃない!)
ティアの打算センサーが激しく反応する。賞金一億円を狙うパートナーとしては、アヴァロンよりも圧倒的に「絵になる(撮れ高が稼げる)」優良物件である。
「おい、ちょっと待てよ新入り!」
そこへ、面白くなさそうな顔をしたアヴァロンが割って入った。
「ティアちゃんは俺のパーティーの要だ。勝手に口説いてんじゃねぇぞ」
「おや、君が彼女のパートナーかい? でも、ここは恋愛サバイバルだ。魅力的な女性を奪い合うのは、男としての礼儀だろう?」
バチバチと火花を散らす、暗黒騎士と聖騎士。
「ふふっ。男の人たちばっかり熱くなって、なんだか私が退屈しちゃうなー」
緊張感のある空気の中、もう一人の追加キャストが軽やかな足取りで前に出てきた。
褐色の肌に、エキゾチックで露出度の高い装飾を身につけた『踊り子』のアバター。
「私は踊り子のマヤ! みんな、よろしくねっ!」
マヤはウインクを飛ばすと、そのままアヴァロンの腕にギュッと抱きついた。
「わっ!? お、おい!」
「ねえねえ、暗黒騎士さん。すっごく強そうだね! 私、こういうワイルドな人ってだーい好き♡ あとで二人きりで、マヤに剣の振り方、教えてくれない?」
豊満な胸をアヴァロンの腕に押し当てながら、上目遣いで甘えるマヤ。
(……ッ! この女、完全に『あざとい系』の肉食女子だわ!)
ティアは瞬時にマヤの戦力を分析した。
(私みたいな『控えめなシスター』とは真逆のアプローチで、男の理性を直接揺さぶりに来てる。しかも、わざわざ私と良い雰囲気だったアヴァロンを最初のターゲットにするなんて……番組を盛り上げるためのヒール(悪役)を完璧に演じきってる!)
アヴァロンは「お、おう。まあ、素振りくらいなら……」と、突然の美女のスキンシップに鼻の下を伸ばしている。
(あのバカ! 昨日は私の素顔が一番だとか言ってたクセに、ちょっと胸を押し付けられただけでデレデレしちゃって!!)
ティアの心の中で、得体の知れないヤキモチが黒く渦を巻き始める。
「さあ皆さん、ご挨拶も済んだところで本日のミッションです!」
神の能天気な声が、再び空から降ってくる。
「本日は新メンバー歓迎の『ドキドキ水着でビーチバレー対決』! 勝ったチームには、今夜の豪華BBQの食材と、例の『VIPテント』の優先権が与えられます! 愛と嫉妬のスパイクを打ち込んでくださいね!」
青い海、白い砂浜。
完璧なエスコートでティアを狙うパラディン・レオンと、圧倒的な色気でアヴァロンを誘惑する踊り子・マヤ。
既存のペアを力技で引き剥がしにかかる劇薬の追加キャストを迎え、ラヴ・クエスト・アイランドの第2章は、波乱という名の嵐を巻き起こしながら幕を開けた。




