2話
2話
全てを飲み込む暗闇は私たちの話を静かに聞いていた。
探査用のライトの光がほのかに辺りを照らし、進むべき道順を教えてくれる。母艦までは後少し。新人の私に付いて来てくれたイア隊長は戦闘していた空域に残り哨戒を続けている。
「こちら第三部隊所属、ルビリス・ネルアン。任務完了により帰投しました。着艦の許可を願います」
「着艦許可よし――第一エリアの甲板に着艦してください」
MVCの脚が甲板にかかる。反動を押さえながら装置に着地した。着地した足場が沈み、艦内へ収納される。МVCにロックがかけられてようやくコックピットから外に出られた。
「ふー……任務完了!なんとか帰って来られた、けど……」
МVCを見上げながらその手に掴まれた脱出ポッドについてなんと上官たちに弁明するか考える。黙って帰艦したが許可をもらわないと彼を外に出すことはおそらくできない。彼が敵でない保証はどこにもないのだ。というか彼自身が地球から来た、と言っているのだから許されるわけがない。
「おーい!ルビリス!なにやってんの?」
頭を抱えて悩んでいると整備班のクォードが道具のコンテナを運びながら話しかけてきた。
「あ、クォード!あ、あの……ちょっとこれは……その」
「?なに慌ててるんだお前……って、はあ!?なんだこれ!お前なに持って帰って来てるんだよ!!」
全力で肩をクォードに揺さぶられて視界があちらこちらにブレる。
「ばっかじゃねえの!?無断で艦内に持ち込みするとか……!始末書じゃすまないぞ!?」
「わ、分かってるってば!謝ります怒られますー!!」
「これ謝ってすむなら俺の今までのミスなんか可愛いもんだわ!」
クォードと言い合っていると騒ぎを聞きつけた周りが集まってくる。「なんだなんだ、ってはあ!?」「おいこれ……やばいだろ」「これは……あかんねえ?」
周りの声は大きくなってルビリスに突き刺さる。耐えられなくなり、反論しようと口を開いたその時――
「なにをしている」
自分のМVCから降りてきたイア隊長と目が合った。
ヘルメットを仕舞いながら手すりを伝って隊長が近づいてくる。
「なんの騒ぎだ?説明しなさいルビリス」
「た、隊長……!はい!帰投中に戦闘空域を漂うポッドを発見し、近づいたところロアユトの共鳴が発生!中にいる少年の存在を確認したため、連れて帰りました!」
よろしい、とイア隊長が頷いて周りに持ち場へ戻れと命令する。説明を聞いた者たちはそれに少し不満そうにしながらも従って戻っていった。
「ルビリス、説明は分かりました。ですがこのことは帰艦する前に司令室に伝えておくべき事案です……後で私の部屋に来るように」
「はい……すみませんでした」
強い口調で言い終わると隊長は視線を伏せて考え始める。やはりクォードの言った通り始末書では済まなそうだ……不安になり後ろでに腕を組むと隊長が手を伸ばしてきた。
「ほら……まだヘルメットも仕舞わないで貴女は……息苦しいでしょう」
イア隊長は顔を近づけて私の首に手を伸ばし、ヘルメットのスイッチを押した。お、怒られるかと思った……!バクバクする心臓を押さえていると隊長は不思議そうに見てくる。
「どこか痛みますか?医務室まで送りましょうか」
「い、いえ!全然大丈夫です!この通り!」
私は慌てて胸を叩くと思ったよりも強かったらしく、咳き込んでしまった。その様子を見ていた隊長はしばらく固まった後笑いだした。
「っふふ……貴女」
咳き込んで跳ねた私の髪を隊長は手で梳かす。そうやってしばらく頭を撫でられていると満足したのか隊長の手が離れていく。
「……さあ、司令室に行きますよ」
「え?は、はい!」
肩を押されて先を行くイア隊長を追いかける。無重力のはずの宇宙で偽物の重力を生み出すライトに照らされて輝く彼女の髪を眺めながら――
「怒られに行きましょうか、二人で一緒に」




