1話
1話
星から離れた宇宙に光はない。あるのは漆黒を溶かした途方もない空間。人が生み出した輝きだけがその空間を照らしている。
時折流れてくる鉄と星屑にぶつからないように気を使いながらМVCと呼ばれる機体を操縦する。先程見つけた脱出用ポッドを抱えながらルビリスは考えていた。
「……どうして?ロアユトは私たちしか持っていないはずなのに……」
ルビリスにとって、ロアユトとの共鳴は当たり前のことだ。だが、外の世界ではそうではない。そもそもロアユトが存在しないからだ。ロアトリーと呼ばれる星にしかない鉱石であり、地球の人々は戦争を起こすほど欲しがっている。脱出ポッドの中の彼はどこから来たのか、その謎はルビリスを不安にさせていた。
「ねえあなた、どこから来たの?」
「……」
ルビリスの問いかけに少年は答えない。先程からこの調子だ。
「あんな戦闘空域に民間の脱出ポッドでいるなんて……巻き込まれていたらとっくに死んでいたわよ?」
「……」
少年を見つけた時、敵の脱出ポッドかと疑って調べたが地球軍や他の軍のマークはなくおそらくは民間の物だろう、と判断して母艦に持って帰ることにしたが万が一敵であった場合、上官がなんと言うか。考えただけで恐ろしい――イア隊長に殺されかねない。ルビリスは自分の腕をさすりながらMVCを操縦する。
「……もう、私が怒られちゃうじゃない」
「――あなたはどこから来たの」
「え……?」
不意に少年が語りかけてきた。ただポツリと呟くように。
「私が先に聞いてるのに……まあいいわ、私はロアトリーから来たの」
ルビリスがそう答えると少年が息を飲む。軽く呼吸を止めて、吐き出した。
「そう……俺は、地球から来た」
「……は?ちょっとあなた、なに言って」
少年は口に出すのをためらうかのように言葉を口に留めて、
「――あの星、あなたの住むロアトリーに呼ばれている気がして」
まるで知らない言葉のように、ルビリスの住む星の名を紡いだ。




