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35.暴走列車戦

 朝日を浴び、錆びた車両が浮かび上がる。戦いはシンの号令から始まった。


 シンは貨物にいる戦闘員たちに向かって叫ぶ。


「いいか、みんな! どんな敵が来ても必ず倒して故郷に戻るんだ! いいな! これは愛する故郷を守るための戦いだ! 必ず勝って街の人々を、街の風景を、守るぞ!」


 おぉー!! という歓声が上がる。こちらの士気は万全のようだ。




 ぎぃぃ、とうなりをあげながら、廃鉱山のすたれた車両が動き始めた。ガタン、ゴトン、とゆっくりと、だが確実に、列車は動いていく。加速していく。


 ハヤトは唯一天井のある鋼鉄の先頭車両で、隣にいるローザに話しかける。


「俺たちは幸い命がふたつある。だが相手は一つしかない。これがどういうことかは考えようとも思わないが、きっと奴らは本気で来る。油断するなよ」


「はい、お兄様。ご心配ありがとうございます。それは承知の上です。彼らには本気で戦うモチベーションがありますもんね。もちろんこちらも本気なのは間違いないでしょうけど……」


 言いながらローザは空いた扉から見える後ろの貨物を見る。そこには大人数の戦闘員が乗っていた。空には護衛用の魔法使いも多数飛んでいた。


 列車は荒野を走る。草木枯れた大地を走る。



「来たぞ!」シンが叫ぶ。


 ハヤトがはっとして窓から首を出し、前を見る。遠くに魔法使いと思われる人影が多数見える。だが。


「なんだありゃ!? どんだけいるんだ! 聞いてねえぞ!?」


 後ろの貨物から怒号が飛んでくる。


 それも仕方ないか、とハヤトも思えるほど、その人数は桁違いだった。魔法使いだけでも500人は超えているのではないかと思えた。街で戦っている戦闘員がいることを考えると、殲滅隊は総力戦を挑んできたということだ。ハヤトはギリリと歯をきしませた。こいつは無傷じゃすみそうにないな。


「おい、シン!」


 ハヤトが叫ぶ。列車はだんだん早くなっていく。


「なんだ!?」


「まともに戦ってたらこっちはハチの巣だ。たしか線路はまっすぐ敷いたよな?」


「ああ」


「だったら撤退戦みたいな形で戦おうぜ! まともには戦えねえ!」


「わかった! でもどうする!」


 加速していく列車の風の中で叫ぶ。


「列車をぶっ飛ばすんだ! この列車の限界まで! 加速していきゃ相手の攻撃は当たらない!」


「わかった! とりあえず試してみる!」


 そうしてシンは列車の動力として火魔法を使っていた魔法使いたちに指示を出す。


「敵に近づいたら一気に加速する。そのタイミングは俺が指示する」




 そして30秒もしないうちに敵がはっきりと見えるところまで来た。ハヤトはシンに合図をした。


「今だ! 一気に加速しろ! ついでに攻撃も浴びせてやれ!」


 シンがそういうと、魔法使い三人は一斉に火魔法を全力で発揮する。列車がきしんだ。慣性の法則でハヤトとローザは後ろに吹き飛ばされかけた。窓枠をつかんで何とかこらえる。


「魔法使いたち、いっけええええええ!!」シンが号令を発する。


 すると貨物から、何倍もの勢力の魔法使いに向かって攻撃が放たれる。


 その攻撃は列車の速度が足され、相手の速度も足されてすさまじい速さで敵に当たる。そうしてたくさんの魔法使いたちが脱落していく。が、数の優劣は依然変わらない。


「シン! もっとだ、もっと! 撤退戦になったら銃器使いが攻撃にまわる! だからもっと加速してくれ!」


「わ、わかった!」


 そういわれるがまま、列車を加速していく。だが列車の古さがたたったのか、炉にひびが入り始める。まだ時速100キロを超えた程度だ。


「シン、もっと早く!」


 その瞬間、敵の魔法使いたちと交差し、敵の攻撃が貨物に直撃する。速度のおかげで多少は被害を抑えられたが、光になって消えていった者たちも少なくない。


「無理だ! 炉がもたない!」


「それなら俺がやってやる!」


「は!?」


 シンを押しのけて、ハヤトは炉に向かって全力で火魔法を放つ。


「炎よ、怒れ!」


 ぼうっと凄まじい炎が炉に放たれた。


 すると先頭車両内に地獄のような熱気が反射する。そして炉がますます軋みをあげる。


「何やってるんだ!」シンが叫びながらハヤトを引っ張ろうとする。


「うるせえ! こうしねえとますます被害が増えるだけだ! いくぞ、ローザ! 貨物だ!」


「はい、お兄様!」


 そうして二人は後ろへと向かった。


「お前たちはもっと加速させろ! 炉が爆発してもいい! とにかく加速だ! それしか勝ち目はない! 妥協するな! 全力でやれ! 300キロまで!」


 そうして列車は加速に加速を重ね、ぐいぐいと速度を増していった。貨物にいた戦闘員たちも、向かってくる風にたまらず顔を背けるほどだ。


 列車は200キロ毎時まで到達した。そしてハヤトは貨物に向かった。

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