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36.続・暴走列車戦

 この列車が100キロ毎時程度しか想定されてないであろうことは想像できた。ただ貨物を運ぶだけなのだから。貨物の重さに耐えられるだけの耐久性にハヤトはかけていたのだ。


 ハヤトはすさまじい風の中に飛び込み、連結部分を飛び越え、貨物に乗り込む。ローザもそれに続く。


「まだ250キロも出てねえだろ! もっと速くしろ!」


 ハヤトが先頭車両に向かって怒鳴る。


「は、はい!」魔法使いのうちの誰かが答える。


 ハヤトが魔法を使ったことで、急激に250キロに近づいてはいたが、まだぬるい。これじゃあ相手の魔法が届いてしまう。


 列車よりも後ろになった魔法使いの大群たちが一斉に攻撃を浴びせてくる。ハヤトの範囲外戦法を行うにはまだスピードが足りない。

 ただ、徐々に相手の魔法使いたちも列車の速度を追い切れずに脱落しはじめている。よし、このままいけば……! ハヤトは思った。


 だが。


 ドーン! と大きな音が聞こえたかと思うと、一番後ろの貨物が跡形もなく吹き飛んでいた。


 クソっ、やられた! ハヤトは思った。


「もっと速くだ! 俺が、しゃべれなく、なるくらい!!」


「で、でも炉が……!」


「炉なんかぶっ壊しちまえ!」


 そういいながらハヤトは炉に向かって火魔法をねじ込んだ。熱気が後部の車両まで尾をひいてきた。


 列車はドンドン加速していき、ギイギイと不快な音を立て始めた。いよいよ暴走列車だな。




 列車はようやく250キロを超えた。だんだん魔法使いたちが小さくなっていく。ここまでついてきている奴らは相当の腕の持ち主だ。ハヤトは考えた。こいつらさえ潰せれば……!


「いくぞ、ローザ!」


 そしてハヤトはアサルトライフルで連射した。連射速度はあまり速くはないが、威力はその分大きい。特にローザの狙撃スキルがあれば敵を叩きのめすことができる可能性が高い。

 一発一発狙いをできるだけ正確に定めつつ撃ち続ける。そのうちに魔法使いの攻撃をよけつつも、彼らは徐々に数を減らしていった。



 なんとか魔法使いを掃討できたか、と思ったところで、先頭車両の方でドォーンとすさまじい爆発音が聞こえる。


「どうした!」


 しばらく返答がない。


 ハヤトは心配したが、やがて煙が晴れ、声が聞こえる。


「こっちはもう爆発するってわかってたから大丈夫だよ! それより敵は!」シンの声だ。


「敵は大方倒した! っと」


 後ろから飛んできた魔法を、ローザが引っ張ってくれたおかげで間一髪回避。そして反撃して敵は消えていった。


「でもブレーキがきかないんだ!」シンが言う。


「はあ? 何やってんだ!」


「俺たちのせいじゃねえ! お前のせいだろ!」シンが嘆く。「このままじゃ、あの橋が耐えられるかどうか……!」


「チッ!」ハヤトは悪態をつきそうになるのをこらえる。やることは一つしかない。この暴走列車を崖に落とすよりはましな方法がある。




 ハヤトは貨物にいる魔法使いの残りに向かって叫ぶ。


「おい、お前たち! 飛べる奴は全員飛んで、この列車を止めてくれ! もうすぐ崖に入る! この速度じゃ橋が落ちるかもしれねえんだ! だから列車の前に石を落としてくれ!」


 後ろから返答があった。


「おう、わかった! 岩をおとしゃいいんだな!」


「ああ!」


 そうして魔法使いたちは飛び立っていった。列車はまだ時速250キロを超えている。この速度を半分以下に落とさなくては。




 やがてほどなくして列車が崖に差し掛かる。


 ハヤトは先頭車両に向かって叫んだ。


「今から先頭車両の前に岩を落とす! だからできるだけ後ろの車両に移動しろ! 飛べる奴は飛んでいい!」


「はい!」


 何人かの魔法使いたちが答える。こっちはずいぶんとまじめだ。貨物の奴らの野蛮さというか粗暴さがしのばれる。


 全員が退避しきったところでハヤトは落石をまった。


 そして。


 ドゴォーン! と列車よりも大きな岩が落っこちてきた。ハヤトは貨物の後部車両でその衝撃に耐えた。


 しかし彼の想定とは逆に、その岩は割れることなくギリギリと転がっていった。列車のスピードは落ちても、このままでは橋に引っかかってしまう。


「お兄様! 間に合いません!」


 もうすでに橋が見えていた。


「みんな、衝撃に備えろ!」ハヤトが叫ぶ。


 そして岩は橋に突っ込み、橋にひっかかる。そうして先頭車両はひしゃげるとともに、残った勢いで橋が崩落したが、列車は何とか停止した。


「こりゃいいや」ハヤトが落ちていく橋を見ながらぼやく。「もう一回橋の作り直しだな……」




 橋の崩落を受けて、飛べない者は飛べる魔法使いたちに運んでもらい、ハヤトたちは橋の向こう側に到達することができた。


 戦力は半減、そして橋は落ちて列車も半壊してしまったが、橋と列車は今後のために急ピッチで修復可能とのことだった。荒野エリアに残った殲滅隊にも投降をうながして、なんとかクーゼル側の人間に加わってもらった。




 ハヤトは考えた。今回クーゼルでの戦いも含めて、相手は総力戦を仕掛けてきて、結果として敗北を喫した。となれば残党がゲリラと化すか、もう一度総攻撃に出てくるかのどちらかの可能性が高い。そこでこれ以上被害が出ないように、早めに例の他の打開策、とやらを探してこのデスゲームを終わらせなければ。




 それから街に戻ったハヤトたちは、クーゼルを守った貢献者として街の人々に歓迎された。


 クリスティーナやオースティン、それにアカリといった面々も死なずにすんだ。今回は勝利と言ったところだろう。今まで挑んできたゲームはすべてクリアしてきた。あとはこのデスゲームを何とかして終わらせるだけだ。

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