十二雪目
正午過ぎ、メリッサ達を連れ、食後の散歩に庭園を散策して部屋に帰ると、部屋が恐ろしいことになっていました。
散乱する紙、紙、紙。布、布、布。
そんな散らかり放題の部屋の中には知らない女性達。そして、その中心に諸悪の根源らしき男が三名。
「殿下。これはどういう事態ですの? 女性の部屋に無断で入るばかりか、その部屋を散らかすなど流石に非常識が過ぎますわよ」
「パリシア! おかえり!」
私の言葉に漸く私が部屋に帰って来たことに気付いたらしく、ポーストン様は一瞬肩を震わせると、少し蒼白な顔で笑おうとしてるのか、顔が引きつっている。
スレルトは無邪気な笑顔で抱き着こうとしてきたが、一歩左に足を運び避けといた。
非常識男に抱き着かれるほど私は安くない。
そして、私が質問した男はと言えば…。
「スレルトを避けるなんて酷いじゃないか。パリシア」
第一声が“スレルト”であるから救えない。
「殿下。わたくしを責める前に、この非常識な事態について説明を要求しますわ」
私がそう言えば、王太子は何食わない顔で言いやがった。
「ああ、パリシアのウェディングドレスの案を考えてたんだよ」
「は?」
「一週間後にスレルトの披露宴を行う。その時に一緒にパリシアを紹介しようと思ってね」
この馬鹿は何を言ってるのだろう…。
「殿下。いいですか?わたくしは既婚者です。結婚してます。何故、紹介されなければならないのですか」
と言うか、何て紹介する気だ! 嫌な予感しかしないよ!
「勿論、側妃になるからだけど。まあ、パリシアが嫌がるだろうから、離婚させずに多夫一妻に法律を変えることになった」
「……“なった”?」
「ああ、『パリシア以外を側妃に迎えない。だからパリシアがヘソを曲げないように多夫一妻制とする』と言えば、満場一致で決まった。まあ、父上は微妙そうな顔をなさっていたけどね」
王様…。
うん、これは国の存続が関わるからね。…うん、仕方ない。
王様は許す。
だが、王太子は別だ!
なぜ、私が我儘な感じに言ってんだ!
あんたらが私を諦めたら丸く収まるだろが!
「ご冗談もここまでくれば笑えませんわね」
「冗談じゃなくて本気さ」
冷えた感情で微笑んだのに、流すように微笑まれて、また王太子はドレスの話に戻った。
「ポピュラーは黄色だけど、パリシアに黄色はイメージがわかないよね」
「パリシアには白が似合うよ!」
「白い服をよく着ておられますしね」
懲りずにその話に戻った男達にため息を吐いて部屋を後にする。
仕方なく庭園に戻って、イスに座る。
「それにしてもどういう心境の変化でしょうね」
紅茶を入れてくれるメリッサが不可解だと言わんばかりの声音で呟いた。
「さぁ? 昨日の話し合いで何かお気に召したのかな」
「そうだよね! あたし、殿下がパリシア様をお名前で呼ばれるの初めて聞いたし!」
「パリシア様からすれば、厄介が増えた感じですよね」
確かに昨日から王太子が私の名前を呼ぶようになった。
まあ、そこは良い。
名前を呼ばれて困ることはない。
だが、ミーティアの言う通り、厄介な事が増えた。
「ホントよ! まるで私が駄々っ子みたいな言い方しやがって!! 駄々こねてんのはお前らだっつーの!」
そう吐き捨てれば、三人が苦笑いしてきた。
珍しい。いつもは、同意してくれのに。
……ああ、外だから不用意な発言は出来ないのか。
「はぁぁ、ごめん。困るよね。
てかさ、本当にでなきゃいけないかな」
「まあ、出ることになるでしょうね」
「そっか。だよね」
「諦めてください」
「はいはい。…………法律まで変えて、歴史に史上最悪アバズレ女として名前刻まれたらどうしてくれんだよ」
「ブッ」
私的には、至極真面目に言ったのにカリメアに失笑された。
納得いかん!
「そんな不満そうな顔されてもねぇ」
そうにやけた顔でカリメアは言う。
でも、実際に事実、夫が四人になるわけでしょ?
四人の男と肉体関係持つわけでしょ?
アバズレじゃね?
あー、一週間なんて経たなくていいのに。なんて、思ってる時ほど時がさっさか過ぎるんだから人生虚しい。そう感じた一週間だった。




