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大事な物は……(末っ子8)  作者: 夏目 碧央


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7/11

ヒモ男

 翌日、会社に行くとまた呼び出された。夕べの配信が話題になっているらしいが、悪い方の話題になってしまったのだ。下品で、挑発的な言動が問題に。

「プロ意識に欠ける。」

などと、お叱りを受けた。やれやれ。あまり悪い事をしたとは思っていないが、一応謝罪をしておいた。だが、アイドルだからって、そんなに自分を隠さなくてはならないのだろうか。というか、もうアイドルじゃなくないか?そろそろアイドルを卒業してもいいのでは。

 アーティスト、歌手、パフォーマー。だが、どれもしっくりこない。俺たちは多くのファンに支えられて今の地位がある。アイドルの先にある感じがする。実力だけで言ったら他の歌手やダンサーたちの方が絶対上なのに、俺たちは様々な賞を受け、ランキングで上を行く。人気がなければ成し得ない事ばかり。必死に実力もつけてきたけれど、実力以上の成果を出している気がする。それは、アイドル的な人気のお陰でしかない。

 それじゃあ、プロ意識のプロとは、アイドルとしてのって事なのか。だとしたら、虚構を演じろという事なのだろうか。本来の28歳の俺ではなく、下品な事や乱暴な事は決して言わず、悪い事もしないで、ニコニコ笑って、正しい事をして、言って……。

「レイジ!お前、ちょっとうちに来い!」

考え事をしながら歩いていたら、テツヤがやってきて怒られた。家に来いと言われたので、その日は帰りにテツヤの家に行った。

「マスコミにも、かなり叩かれちゃったな。ファンからも。」

テツヤの家に着くなりそう言うと、テツヤは振り返って俺を睨んだ。

「お前、何で家に男連れ込んでんだよ。まさか、一緒に住んでるのか?」

俺を差し置いて……と、小声で続けたテツヤ。ああ、そこに怒ってるのか。そう思ったらちょっと嬉しくなった。

「何笑ってんだよ!ヒモ男のところに帰れば。」

テツヤが更に睨む。ヒモ男って。俺だって本当はテツヤと一緒に住みたいよ……という心の声はとりあえず封印して、ナオキが来た経緯を話した。

「ヒモじゃないよ。ナオキは地元の友達。幼馴染なんだけど、両親が離婚して家を追い出されたから、東京で家を見つけるまでうちに置いて欲しいって言われたんだ。」

「やっぱヒモじゃん。」

ぼそりと言うテツヤ。

「いや、違うって。東京で仕事を見つけたって言ってたし。すぐ出て行くと思うよ。」

「どうかな。あいつの声、信用できない。」

珍しくそんな事を言うテツヤ。ライブ配信で声だけ聞いたから、むしろイメージが悪くなったみたいだ。俺と仲が良さそうに思えたのかなー。ヤキモチだ。

「そんなら、ナオキを紹介するから、明日うちにおいでよ。」

俺がそう言うと、

「分かった。」

テツヤは素直に応じた。

「それで、今夜は泊って行っていいんだよね?」

そう聞くと、テツヤは澄ましてうん、と頷いた。か・わ・い・い。


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