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大事な物は……(末っ子8)  作者: 夏目 碧央


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恋人繋ぎ

 マサト兄さんとテツヤと俺で、食事に出かけた。一杯だけ飲んで、それからマサト兄さんの家に行った。最近マサト兄さんとコラボして話題になったキャラクターの、洋服などをたくさんもらったとかで、見せてもらいに行く事になったのだ。

「うわ、これ可愛い!」

キャラクターが胸に描かれた緑と白のジャンバーを見て、テツヤが言った。

「あ、それあげるよ。レイジの分も。二人で着てみせてよ。」

マサト兄さんが言った。早速そのジャンバーを羽織った。テツヤとお揃い。

「いいねえ、写真を撮ってインスタに載せよう。」

マサト兄さんがそう言って、スマホを構えた。

「じゃあ、この棚をバックにしようか。」

俺が言うと、テツヤが同意して俺の隣に立った。

「いいねー、可愛いよー。それじゃあ、次は手を繋いでみようかー。」

マサト兄さんは写真を撮りながら、カメラマンのようにポーズの要求をしてきた。

「ほら、もっとくっついて。」

顔を赤くしているマサト兄さん。さては酔ってるな?

 するとーふいにテツヤが手を繋いできた。恋人繋ぎで。テツヤも少し顔が赤い。酔ってるな。

「おー、可愛い、可愛い。どんぐり兄弟だなー。」

俺が、どんぐりの帽子みたいなニット帽を被っていたからか、マサト兄さんがそう言った。

「これをインスタに載せよう。どう?」

マサト兄さんが写真を表示させてこちらに見せた。

「うん。あはは。」

テツヤが返事をして笑う。何だか嬉しそうだな。


 「テツヤ、これで元気になってくれるといいな。」

テツヤが他の品を見に行ったところで、マサト兄さんが俺に向かって言った。

「え?」

よく意味が分からず、マサト兄さんを見た。マサト兄さんは写真をアップしながら、チラリと俺を見た。

「テツヤ、かなり落ち込んでたみたいだからさ。」

「え、そうですか?わかんなかったけど……。」

テツヤが?

「お前には気づかれないように振る舞ってるんじゃないのか?よし、アップできたぞ。」

俺とテツヤの恋人繋ぎが、世界に公表されたのだった。


 翌日、どんな反応が出るのかソワソワしていた。流石にこの写真を見たら、誰かが何か言い出すだろうと思っていた。ドキドキする。ワクワクもする。でもちょっと怖い。そんな風に思っていたのだが……ただ、いいねが付くばかり。何も、なし。多少ニュースにはなっていたが、

「可愛い!」

「仲良しだね!」

「仲良し兄弟!」

といった反応ばかり。安心した面もあるが、やっぱり少し寂しい。サナとはたまたまた被ったネックレスであれだけ騒がれたのに、こちらは恋人繋ぎでべったりくっついた写真をわざわざ公表しているのに……理不尽だ。

 テツヤに会うと、ニッコリ笑ってこう言った。

「マサト兄さん、優しいね。俺、あの写真撮ってもらって嬉しかったんだー。」

本当に嬉しそうだ。俺は思わず後ろから抱きしめた。

「ん?レイジ?」

ここは会社だから、いいだろう。いや、俺たちは案外、どこでイチャイチャしたって騒がれないのかもしれない。喜ばしいような、寂しいような。


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