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大事な物は……(末っ子8)  作者: 夏目 碧央


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信ぴょう性がない?!

 「レイジ、正直に答えてくれ。この人と付き合っているのか?」

社長に聞かれた。

「付き合っていません。ネックレスが同じなのは偶然です。」

俺はきっぱりと言った。

「でもレイジ、このグループのコンサートに独りで行ったよな、この間。」

マネージャーのイッセイさんが言った。

「はい、サナとは友達なので。」

仕方なくそう答えた。噂になった女性アイドルは、サナという。同い年で、数少ない女友達だ。

「友達……か。そのネックレスはいつ買った?レイジの方が先か?」

社長に言われた。

「え?えーと、1ヶ月くらい前です。先かどうかは分かりません。」

そう答えるしかない。お揃いだった事も噂で知ったのだ。

「サナさんが、お前とお揃いにしようと思って買った可能性は?」

更に社長が聞いてくる。えー、分からない、分からないよう。

「声明を出すのは見送りだな。」

俺が黙っていると、社長がボソッと言った。

「え、つまり、否定しないって事ですか?」

俺は驚いて聞いた。まあ、テツヤとナナさんの噂が立った時にも、会社は声明を出さなかった。逆にカズキ兄さんの時に出したのが驚きだったのだ。

「でも、カズキ兄さんの事では、声明を出しましたよね。どうしてですか?」

思わず聞いてしまった。すると、社長はこう言った。

「一度は付き合っていた、というのを認めたからだ。信ぴょう性がある。一度は付き合ったけれども今は付き合っていない、そう言えば幕引きになる。だが、付き合っていない、ただの友達だと言っても、それは信じてもらえない。信じてもらえないだけでなく、今は付き合っていなくても、将来的に付き合ってしまう可能性もゼロではない。後に結婚なんて事になったら、あの時は会社がウソをついたのだと思われてしまう。だから、付き合っていないというのは発表できないのだ。分るか?」

分かったような、分からないような。いや、俺は将来的にも彼女と付き合わないけど。俺が不服そうに見えたのか、社長が笑った。

「あはは、そう憮然とするな。お前を信じていないわけではない。ただ、相手の事もあるだろ。彼女の方が、お前の事をどう思っているか、本当の所は分からない。もし、彼女の方がお前の事を好きで、わざと同じネックレスを買ったのだとしたら、ただの偶然だと言ってしまうとウソになる。こちらが知らなかったと正確に伝わればいいが、世の中にどう伝わるか分からない。下手に打って出るよりはダンマリを決め込んだ方がいいのだ。」

そう言われても、なおも黙っていると、いや、恐らく憮然としていると、社長は更に付け加えた。

「カズキの時は、相手が付き合っているような事を公表してきたから、こちらが否定しないわけにはいかなかったのだ。黙っていたら、相手の言っている事が本当だと思われてしまうからな。そうだろ?」

「はい。」

もう、頷くしかなかった。俺とサナとの噂は、黙って消えるのを待つしかないようだ。ああ、あのネックレスはもうできないのか。

 それにしても、アクセサリーもストラップも、テツヤとお揃いの物がたくさんあるのに、そっちは全く世の中に取り上げられない。それなのに、女性と一つ、たまたま被っただけでこれだ。世の中、ほんと理不尽だよなあ。

 社長室を出て練習室に戻った。マサト兄さんが俺を気遣ってくれて、肩をポンポンしてくれた。

「今日、練習の後出かけようか、テツヤも一緒に。」

そう言われた。


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