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大事な物は……(末っ子8)  作者: 夏目 碧央


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3/11

女性アイドルとの噂

 カズキ兄さんと女優さんとの噂に関しては、会社が声明を出した。一時交際していたが、今は別れたと公表したのだ。事実確認が取れたから、と会社の上層部から説明があった。相手が隠そうとしていない以上、そう出るのが正しいと判断したのだろう。

 しかし、いくら今は付き合っていないとは言え、過去に付き合っていたという発表をするのはどうなのだろう。ずっとカズキ兄さんのファンだった人は相当ショックを受けたのではないだろうか。アイドルも人間だから、恋愛もするし実際交際もするけれど、それを隠し通すのがファンに対する礼儀ではないだろうか。夢を売る仕事だ。夢中になっていた時期に、実は一人の女性と交際していたなんて事を後から知ったら、どのように気持ちに折り合いをつければいいのだろう。自分の事として考えたら……ずっと好きだったテツヤが、実は俺の知らない内に誰かと交際していたなんて事を後から知ったら……実際女性アイドルとの噂はあったけど、

「ナナは友達だよ。」

と言ったテツヤ。ナナさんとは、ただの友達として一緒に出掛けただけだと言っていた。それが本当なのか、ナナさんがどう思っていたのか、それはもう、本人にしか分からない事だ。それを、実は付き合っていた、なんて後から言われたら……俺の胸は潰れるな。それでも嫌いになったりはしないけど、実際に会えない、ファンの人達だったらどうだろう。辛くなって離れて行っても仕方がないのではないか。

 などと考えていた矢先、またもやいきなり降ってきた。災難が。今度は俺の上に。

 今をときめく女性アイドルグループの一人と、俺が付き合っているという噂が流れたのだ。青天の霹靂!なぜそんな噂が立ったのかと言うと、その女性アイドルと俺がお揃いのネックレスをしていたからというのだ。

「レイジ、お前まさか……。」

SNSに広がったその噂を、俺よりも少し先に目にしたテツヤ。呆然とした顔で俺を見つめ、徐々に手で口を覆い、泣きそうな顔になる。

「何?どうしたの?どうしてそんな顔してるの?」

焦って問いただすと、テツヤがスマホを俺に見せた。女性アイドルと俺の写真が並べられており、拡大した胸元の写真も。あー、このネックレスは確かに俺が買ったものだ。俺が、俺の分だけ。

「付き合ってるのか……?」

テツヤがまた言うので、

「怒るよ。」

思わず言った。テツヤが目を見開く。

「本気でこの噂を信じるわけ?俺が、今付き合ってるのが誰なのか、知ってるよね?」

俺がそう言うと、テツヤは唇を噛んだ。

「俺。」

そして、ボソッと言う。

「そう。そうでしょ?俺が、他の人と付き合ってると思う?」

「……思わない。分かってる。レイジは俺だけを……愛してるって。」

ちょっと照れる。テツヤも照れたようだ。ちょっと目を見交わし、思わずニヤけてしまった。お互いに。

 因みに、ここは会社である。振り付けの練習中、少し休憩をしているところだった。近くには人がいないものの、少し離れた所では、スタッフや他のメンバーもいて、ガヤガヤという程でもないが、静かではない。だから話は聞かれないものの、ここで抱きしめるわけにはいかない。でも、肩を組むくらいならいいだろう。俺はテツヤの肩に腕を掛け、ギュッと引き寄せた。テツヤはフフッと笑い、俺の腰に腕を回してやっぱりギュッとした。

「好きだよ、誰よりも。」

俺が呟くと、

「レイジ……」

俺も、と言ってくれると思ったところで、邪魔が入った。

「なーにをやってるんだ、こんなところで。」

シン兄さんが俺たちを引き離そうと割って入ってきた。そして、俺たちにキックをしてくる。わざと変な風に。

「ちょっと、何だよぉ。」

「シン兄さん、辞めてよぉ。」

俺たちが口々に言っても辞めないので、そのままお尻の蹴り合いになった。

「レイジ、ちょっと。」

そこへ、会社のお偉いさんがやってきて、俺を呼んだのだった。


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