64.口でしてあげても
ドームが明るさを取り戻すとともに、凪は俺の下着の中から手を抜いた。
(な、なんとか……耐えたぞ……!)
ここで暴発でもしてみろ、とんでもないことになる。
俺の男としての意地とプライドを賭けた戦いだった。
凪の腕前はというと、最初のうちはゆっくりとした動きで俺の様子を探り、やがて無意識に反応してしまう場所を見つけると、そこを的確に攻めてきた。
男に触れる機会なんてないはずだが、快感を与える方法を熟知している。
(男じゃなくて、同性で練習しているのか……?)
俺はまだそちらの扉は開いていないが、百合案件というやつだろうか。
男と女の身体は別物だが、性という面では近しいところもある。
応用できても不思議じゃない。
凪が手を抜いても、俺はしばらくの間、荒い息を抑えることができなかった。
それがようやく治まり始める。
「プラネタリウム、どうやったぁ?」
親指と人差し指をくっつけたり離したりして、そこに橋をかける液体を見ながら凪が言った。
「……なかなか楽しめたよ」
「ウチもやよぉ。でも、なんだか喉が渇いてしもたなぁ」
彼女は自分の指、そして手のひらを舐め始める。
長い舌で、味わうように。
何度も何度も、猫のように、蛇のような舌使い。
その動きがいかがわしい動きを連想させ……俺の煩悩が再び立ちあがろうとしている。
「なぁ……樹せんぱい?」
ドームが完全に明るくなり、人々の話し声が混ざり合って、誰が何を言っているか分かりにくくなる。
凪は俺の両足の間に手をついて四つん這いになり、生ぬるい吐息を浴びせてきた。
「この後……口でしてあげても、ええんやけど」
——ドクン。
心臓ではなく、股間が脈を打つ。
blowでのjobには練度というものが存在するというのは周知の事実だろう。
口の大きさや歯の生え方、唇の厚さ、唾液の量。
様々な要因が重なり合って、それらを複合的に用いることができれば、与えられる快感は計り知れない。
中には子作りよりも好きだという猛者もいる。
その中でも、舌の長さというのは注目されにくいが、とてつもない威力を発揮できる。
キスも同じだろう。短い舌では相手の口内に辿り着くのでも精一杯。
一方で、蛇のような舌であれば相手を蹂躙することができるのだ。
凪の舌は長い。俺が今まで見た中——比較対象は多くはないが——でも断トツの長さだ。
そんな彼女が、相手の気持ちのいいところを的確に読み取ることのできる彼女が丁寧に舐めてくれるのであれば——
(ぼ、暴力的な提案だ……!)
この世に、この提案を断固として跳ね返せる男がどれだけいる?
正確には前世だが、そんな奴は無に等しい。
しかも、使うのが胸ではなく口というところが流石だ。
これはあくまで俺の持論だが……胸がデカければデカいほど、それを使わない時に興奮できる。
凪の一番の武器は何か?
人によって答えは違うかもしれないが、胸と言わないのは嘘だ。
持つ者と持たざる者の明確の差があるのが胸。
であれば、爆裂な乳を持つ相手と相対した場合、それを堪能することが世界への礼儀というものだ。
精をブチまけるのは胸でなければならない。
にも関わらず、口で済ませる。
足元で無様に……なんならニュートンのゆりかごにすら見える滑稽さ。それがまたエロさを際立たせる。
(はぁ……本当に困るよ)
もう一人の俺はため息を吐いてしまった。
こんな千載一遇のチャンス。
期待するような視線を向ける凪を、俺が拒否することができるか?
「——今日はやめておくよ」
「えっ」
できる。あまり舐めるなよ、小娘が。
貴様のその目。俺の行動を操っていると言いたげな生意気な目が、萎びかけていた俺の闘争心を燃え上がらせたのだ。
「楽しみは後に取っておこうと思ってね。今日はもういい時間だし、帰ろうか」
「……せやね」
拍子抜け、または動揺しているのを瞳のブレから読み取った。
というわけで、俺と凪の初デートは痛み分けで終わりだ。
ここまで追い詰められたんだし、お前の負けじゃないかって?
出さなきゃ負けじゃないんだよ。
しかし、爆発直前のリビドーを抱えた状態なのは確かだ。
今日は家に帰ってひたすらに、テクノブレイクしない程度に自己研鑽を積もうと思う。
……ちなみに、この世界に来てからの俺には、賢者モードというものがほぼない。
それどころか、何発出そうが量も質も衰える様子がないのだ。
もしかすると神が与えてくれたスキルかとも思うのだが……まだ限界を試すのは怖い。
何かの間違いで死んでしまえば、本当に終わりなのだから。
下品な性癖発表会か?
興味のないプラネタリウムの内装を書いている時に比べて、2倍くらい筆が乗っています。
評価ポイントをいただけるととても嬉しいので、お手数ですがよろしくお願いいたします!
作品作りにご協力いただけると幸いです!




