55.二人目のターゲット
「それで、凪ちゃんはなにしてるのって……そりゃあバイトだよね。メイドさんやってるのは意外だったなぁ」
「そうですかぁ? ウチ、こういうの結構好きなんよねぇ」
「確かに、めちゃくちゃ似合ってる。え、凪ちゃんって私たちと学校同じだよね?」
「せやねぇ。千翼ちゃんは何回か、廊下走ってはるん見かけたことあるけど……」
「は、恥ずかしい……」
顔を背ける吉崎には目もくれず、凪がちらりと俺を見た。
「……まさかほんまに男の人が転入してきてはったなんて。ウチ、見たことなかったわぁ」
「同じ空間にいても、意識してないと気付かないこともあるもんね。これからは、見かけたら話しかけるよ」
「やぁん。そないなこと言われたらウチ、好きになってしまうかもしれんよ?」
適当に笑顔を返しておく。
こいつ……なんだか恋愛慣れしてないか?
駆け引きを仕掛けてくるあたり、この世界の女子にはあり得ないタイプだ。
「ま、まぁまぁ……横島くんには彼女がいるから……」
「彼女なんて何人いてもええですからねぇ。でもぉ、今日は千翼ちゃんの邪魔したら悪いし、この辺にしときましょか〜」
そう言って、凪は最後にわざとらしく腕で両胸を潰してみせる。
(ほう……サイズ自体は理子さんや園田に劣りますが……自分の武器を理解しているのは高得点です。あの二人もずば抜けた美人ではありますが、やはり肌のハリが違いますから、ね)
意図せず、俺の心に住まう分析キャラが顔を出してしまった。
しかし、彼の言っていることは正しい。
どんな人間でも老いから逃れることはできないし、若ければ若いほど瑞々しい。特に胸なんて……これ以上はやめておこう。
同じ学校らしいし、これからは彼女が絡んでくることも増えるだろう。
俺としても、次のターゲットとして不足ない相手だと思える。
だが、それはそれ。今日は吉崎とのデートだし、まだまだ脚を堪能しなければならないため、秋葉原を進むことにした。
その後も立ち並ぶコンカフェ嬢たちを魅了していた俺だが、上野に近付くにつれてマイナスイオンが空気を満たして……いたわけではないが、心持ち的には癒やされていた。
「このまま上野公園に行こっか。吉崎さん、お腹空いてない?」
「……ちょっと、空いたかも。あぁでも、横島くんがお腹空いてないなら、私は全然——」
「ううん、僕も食べたい気分だったんだ。少し戻ることになるけど、近くにお洒落なカフェがあるから、そこでご飯にしようか」
頷く吉崎。日常的に運動をしているわけだし代謝もいいだろう。
おそらく、ちょっとどころか大空腹のはず。
引き続き魅力的な脚を育成してもらうためにも、飯は食わさねばならぬのだ。
これから行くカフェは、前世で俺がたまに通っていた場所だ。
今回の「通っていた」は前世という意味での過去形でもあるし、前世においても過去形として使っていたはず。
どういうことかというと、めちゃくちゃ人気が出てしまったのだ。
SNSでお洒落なカフェだと拡散された結果、土日ですら並ばずとも入れた場所が、平日も大行列。こういうの、あるよね。
こちらの世界ではどうだろうと思ったが——
「うわぁ……すごい人だね」
残念ながら待ち時間が発生する。
とはいえ、大行列と言うほどでもない。
せいぜい三組が待っているくらいで、しっかりとしたフードメニューを提供していることを加味しても、三十分もしないうちに入店できるはず。
「少しだし待とっか」
「そうだね。横島くんが辛くなければ」
そうして順番待ちをしようとしたのだが、先の組みの女性たちが俺に気付き、番を譲ってくれる。
それが立て続けに起こり……俺たちは待ち時間三分で呼ばれることになった。やっぱり男って得だよね。
あぁ、もちろん店内のアレコレはカットだ。
次回、懐かしのあの人が登場…?
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