54.一切責任を負いません
おおかた、吉崎の知り合いがコンカフェで働いていて、客引きをしているところに遭遇したとか、そういうイベントだろう。
果たして、俺の予想は当たっていた。
相手は吉崎の知り合いの女の子ではある。
ただ一つ驚いたのは——俺も知っている相手でもあった。
「な、なん…………だと…………?」
思考に抑えておくことができず、声として漏れてしまう。
なぜなら、そこそこ露出の多い魔改造メイド服を着ていたのは——
「あれぇ? こんなところでなにしてはるんですー?」
性格の悪そうな目元に、二次元であればビッチと名高いピンク色の髪。振り回したら痛そうなツインテール。
そして、百五十もないだろう身長に不釣り合いな爆乳。
(うっっっっっっっっっっっっそだろお前! 京都メスガキじゃねぇかッ!)
いつか見た——九重とラフトに行った時だったな——シールをくれた子だ。
まさかここで再会するとは、神様も粋な計らいをしてくれる。
「久しぶりだねー!」
おっと、またもや変態という名の思考の海に沈むところだった。
吉崎とメスガキは知り合いみたいだが、どんな背景があるのだろう。接点はなさそうに見えるが。
とりあえず、メスガキの元へ駆け寄る吉崎についていく。
「最近なにしてるの? え、最後にあったのいつだっけ」
「そうやなぁ……ウチが中学2年のときやった気ぃしますねぇ」
「ってことは、高校入ってからは会ってないのかぁ」
口ぶりからして、メスガキは吉崎より年下で、最大でも二年離れていることになる。
しかし「最後に会ったのが中学二年」であれば、吉崎も中学生だったと考えるのが自然か?
だとしたらメスガキは俺の一つ下、現在は高校一年生だ。
「あ、ごめんね横島くん。この子、中学の時に同じ陸上部だったんだ」
「陸上はもう辞めてしもたけどね」
「え、そうなの!? 凪ちゃん早かったのにぃ!」
自分と競える相手が減ったことに肩を落とす吉崎だったが、その視線をメスガキの胸に向けると、何かを察したようだった。
「……そればっかりはしょうがないよね。限度があるし」
「まぁ、辞めた理由はこれと違いますけどね〜。そ・れ・よ・りぃ〜! まさかおにーさんも一緒やとは思いませんでしたぁ」
メスガキにロックオンされる。
「なになに、もしかして横島くん、凪ちゃんのこと知ってたの?」
「前に渋谷でシールをもらったんだよね」
「シール……?」
首を傾げる吉崎だが、正直、俺もあのイベントの意味が分かっていない。
あの時は神……つまり俺の欲望がもたらした次回予告かと思ったが、誠に遺憾ながら、この世界の神は俺ではないらしい。
となると、こんなゲテモノが存在していたことよりも先に、ある疑問が浮上してくる。
——このエセ京都弁、なに?
あれか、自覚したのか?
『あれ、私ってもしかしてメスガキなのかも! だったら他の人を煽って煽って煽りまくらなきゃ! でも、もう一つぐらいインパクトが欲しいよねぇ……あっ! だったら京都弁はどうかな!? 京都の人ってナチュラルに煽ってくるし!』
という感じなのかもしれない。
ちなみに、京都人が煽ってくると感じるかどうかは個人差であって、俺は想像上の彼女の言葉には一切責任を負いません。
まぁ、彼女の言葉遣いが先天的なものであっても後天的なものであっても、どちらでもいい。
問題なのは、この子が俺の新たなターゲットになり得るかどうかだ。
こちらを弄ぼうとしてくるのであれば、それを逆に弄び、ドン底まで叩き落としてから奴れ——可愛がってやるのもやぶさかではない。むしろアリだ。馬に乗って矢を放ちたいまである。
まずは彼女の情報を得るところから始めようと、俺は久々のキュートスマイルを浮かべた。
「あの時はありがとう。僕は横島樹、よろしくね」
「そういえば、まだ自己紹介してへんかったねぇ。ウチは町出凪。凪ちゃんでええよ。よろしゅうね」
初手でちゃん呼びを求めてくるとは、なかなかやる。
「よろしくね、凪ちゃん」
「ウチはなんて呼ぼかな〜。おにーさん、もええなぁ? 樹先輩かなぁ?」
くすくす笑いながら呼び方を考える凪。うん、えっちだぜ!
言わずとも理解しています。メスガキに乳はいらないという方もいるでしょう。
しかし、こればかりは譲れません。私はこの時のために筋トレを欠かしていませんので、シバき倒して差し上げます。
それはそうと、これからもエセ京都弁はエセです。それに理由があるのかどうか、それとも歩く魚流の味付けなのか、考えてみてください。
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