52.得られない成果
それから数日の間、俺は足繁く食堂に通っていた。
「食堂とは、何度来ても新鮮なものですね!」
「美桜の家には食堂、ありそうだよね」
「まぁ、よく分かりましたね! と言っても、使用人用なので私が利用することは稀ですけどね」
「あ、本当にあるんだ……」
「いいことを思いつきましたっ! 自宅の食堂であれば、樹さんとゆっくり食事を楽しめますね! 今度母に許可を取ろうと思います!」
あまり端には座らないようにして。
「そういえば最近、ランニング始めたんだよね」
「めっちゃ良いじゃん! 横島くんのウェア選び、一緒にしたかったなぁ」
「確かに、ランニングシューズも含めて吉崎さんに聞けばよかったね」
「ちなみに、一回にどのくらい走ってるの?」
「七キロぐらいかな。吉崎さんも走るって言ってたよね。一回どのくらいなの?」
「日にもよるけど……二十キロぐらいかな」
「二十キロ!?」
割とキョロキョロしたりして。
「ねぇいっくん、新しい服買おうと思ってるんだけどさぁ、こっちとこっち、どっちが好み?」
「僕的には左だけど、九重さんの雰囲気に合ってるのは右かなぁ。もちろん、どっちも似合うと思うけど」
「あぁ〜いっくんヤバい! 女子が欲しい言葉分かりすぎてる! もしかして前世もモテモテだった?」
「いやぁ、前世はモテるなんて考えたこともなかったよ」
「いっくんノリ良すぎだって、アタシのボケ拾ってくれるなんてマジ天使……」
「あ、あぁ……そうそう、ボケてくれたんだよね」
なんなら、食堂内を歩き回ったりして。
「ミラは、今日は何を食べるの?」
「タコライスよ。その……樹と同じものが食べたくて」
「味覚でもなんでも、五感を共有できるのって嬉しいもんね。ミラってどんな食べ物が好きなの?」
「私は……そうね、ハンバーガーとか、よく食べるわよ」
「い、意外とジャンキーなんだね……?」
「そうかしら。この前はバーガーカイザーに一人で行って、アルティメットサイズを完食したの。食べきったら無料なんて、大サービスよね」
「し、しかもめちゃくちゃ食べるんだ……!」
何周もしちゃったりして。
「ミラミラって、いっくんとどんなデートしてるの?」
「本屋さんに行ったり、ファミレスに行ったり……あとは水族館にも行ったわよね」
「いいなぁ水族館、私も久しぶりに行きたいかも」
「あら、千翼さんって魚もお好きなんですね。てっきり、チーターのように陸を駆ける生き物が好きかと思っていました」
「ゴリラとかねー」
「綾香、後でシバき倒すからね。私だって、水槽から目が離せなくなるよ! 運動した後だとなおさら、お腹空くし!」
「……それ、満たそうとしてるのが食欲じゃないかしら?」
結果的に、良さそうな子は一人も見つからなかった。
選り好みは最低限にしているのだが、可愛い子や綺麗な子はいても、俺に対する敵意や警戒が見られないのだ。
俺はもっと、頭を使った戦いがしたいんだ。
初対面の女子とデートに行って落とすのも、それはそれで考えはするが、やはり刺激が足りない。
一歩間違えたら失敗するのではないかというひりつき、思い通りにならない行動を見せてくれるからこそ、クリアした時の達成感もひとしお。
(はぁ、しばらくは観察だな……)
来週になれば、一人ぐらいは目星がつけられるだろう。
それでも見つからなければ……そうだな、園田先生に癒してもらうとしよう。
ということで今週末の過ごし方だが……個別イベントの第一弾にしようと思う。
俺の高校生活の第一章にあたる月ノ原編では、美桜とミラとの関係を深めていった。
九重や吉崎ともデートはしたが、トリプルブッキングだったため数時間だけだし、他の二人に比べると掘り下げも浅い。
ならば、予定を組むならどちらか一方だ。
本当は土日で二人と会うこともできるが、そうすると俺の目的を忘れてしまいそうだからな。今回の章では一人にしておこう。
では、どちらとデートするべきなのか……察しのいい人間であれば分かっているだろうが、実質的に一択である。
俺はスマホを取り出すと、その人物に向けてMINEを送信した。
言うまでもありませんよね?
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