51.狩人
(…………誰も、いない……?)
開け放った先には誰もいなかった。
山田は最初、中で待っていた人物が、自ら助けを求めて外に出たのかと思った。
そうであれば電気が消えていたのにも納得だと。
しかし、それにしてはピンク髪の生徒の反応が無さすぎる。
(最初から——誰もいなかった?)
状況的に、それが一番可能性が高く感じてしまう。
だけど、そんなのはあり得ない。
彼女は自分に何をしようとしているのか。
仮に良からぬことを考えていたとしても、間違いなく自分の方が力が強いし、簡単に逃げることができるだろう。
ターゲットとして自分を選ぶはずがないからだ。
だから、山田は個室に入ってみることにした。見落としがあるのかもしれない、と。
——その行動が山田の運命を変えた。
「……ねぇ、やっぱり誰もいなくないかな? もしかしてイタ——」
背中に衝撃が加わり山田は体勢を崩す。
なんとか立て直そうとして、便座に座る形になった。
イタズラにしてはタチが悪いと抗議しようとした山田だったが、声を発することができない。目の前に顔があったからだ。
「————んんっ!?」
二人の唇が重なる。
突然、自分の唇が貪られたかと思うと——今度は舌を入れられた。
必死に両手で抵抗しようとする山田。
だが口内を——蛇のような長さで蹂躙する舌に意識を持っていかれてしまい、力が入らない。
それどころか、徐々に山田の抵抗は薄れていった。
(き、気持ちいい……)
知ってはいけない。柔らかいくしなやかな舌の感触、鼻から漏れる息の生ぬるさ、甘ったるい香水の匂い。脳が痺れる。
山田の無駄な抵抗が完全に止んだことを確認して、ピンク髪の生徒はゆっくり、余韻を愉しむように舌を抜いた。
「な、なんで、こんな、こと……」
「んー? 花子ちゃんが悪いんやよ? こんなあっさり、ほいほいついて来てしもたんやから」
答えになっていない。
微かに残る理性で言おうとしても、再び口を塞がれてしまう。
「んっ…………ん……あっ……」
山田の口から嬌声が溢れたのは、快感の源がキスではなくなったからだ。
下級生の細くて長い指が、山田の下着の上から秘部をなぞって始めて、自分が情けなく足を開いていたことに気付く。
「そ、そこは、だめっ……」
絞り出すような声に、相手は笑みを浮かべる。
嗜虐的で、心から楽しそうに顔を歪めている。
「んふ……大丈夫。ここには誰も来ぃひんから、好きなだけ声あげて、いーっぱい出してええんやよ〜?」
もう、山田は人の言葉を忘れたように震えるしかできなかった。
誰もいない廊下に響く声を聞くものは一人もいない。
・
「んー……上手くいったなぁ」
事を済ませ、艶々とした肌の少女は一人、廊下を歩いていた。
食堂へは戻らない。あと少しで午後の授業が始まってしまうからだ。
二階、一階と階段を降りていくと、少しずつ生徒が増えていく。
誰もが急いで教室へ戻っている……と思いきや、遠くに人だかりのようなものができていた。
「えー! あれが男子かぁ……カッコいいなぁ」
「隣の子もすんごい綺麗だよね」
「はぁ……私には縁のない世界って事かぁ」
人だかりといっても、遠巻きに眺めるだけで近付くことすらできない。
それもそのはずだ。彼女たちが見ているのは学校で唯一の男子——横島樹なのだから。
余程の美貌を持っているだとか、秀でた何かがなければ、自分から声をかけようとも思わない相手。
彼の方からアクションを起こしてくれるのであれば、向こう百年は不運続きでも耐えられる。そんな雲の上の存在。
それを見て、少女は舌なめずりをする。
「————見ぃつけたぁ」
異性としてワンチャンあってほしいとか、アプローチをかけたいだとか、そういうものではなかった。
彼女の視線は狩人のそれであり、正確に樹を射抜いていた。
明らかに仄めかしてない限りは、突然エロ小説になる方がよくねぇかぁ!?
ということで、樹ですら超えようとしなかったラインを数百文字で超えた女が今回のボスです。
本当はもっと詳細に書きたかったのですが、運営に消されたら怖いので我慢してください。
評価ポイントをいただけるととても嬉しいので、お手数ですがよろしくお願いいたします!
作品作りにご協力いただけると幸いです!




