46.これはフルーツパーラー
現実世……前世の俺には縁がなかった場所であるフルーツパーラー。
どのくらい縁がないかと言うと、「あれ? フルーツパーラーって髪切るところじゃね? それはバーバーか」というセルフツッコミができるくらいである。
さっそく店内に入ってみると、普通のカフェに比べて高貴な感じがする。
客は女性ばかりだが、ここに関しては前世と比べて大差なさそうだ。
四人がけの席が空くまで、しばらく待つことになった。
「ひょえー、私にこんな上品なお店、場違いじゃないかなぁ?」
「そんなことありませんよ。千翼さんはお綺麗ですし、華があるじゃないですか」
「い、いやいやいや……御厨さん、褒めてくれるのは嬉しいけど、私に華なんてないよ……綾香はどうなの?」
「アタシもフルーツパーラーはないなぁ。ヌン茶だったらたまに行くけど」
「ヌン茶というのは何でしょうか? ヌンチャク……とは違いますよね」
「ヌン茶はアフタヌーンティーのことだよ〜」
「……なに食べたら、そんな変な略し方が思いつくわけ?」
「ヌン茶! 可愛らしい響きですね! これからは私も使って——」
「「絶対にやめた方がいい」」
今日も彼女たちは仲が良くて、大変素晴らしいことである。
俺にとっても、どこかで俺を見ているであろう神に対しても。
当面の予定として、俺は次のターゲット探しをしようと思っているが、その片手間に吉崎か九重のどちらかを手中に収めるつもりだ。
そうなると、自然と個別イベントの比率が多くなってしまい、いま目の前で繰り広げられているような漫才を見る機会が少なくなる。しっかりと目に焼き付けておこう。
「そ、そういえば……いっくんとお嬢は付き合ってるんだよね?」
俺も会話に入れてくれるようだ。しかもテーマは恋愛。
話を振ってきた九重をちらりと見ると、少しばかり緊張している様子。
「うん、つい最近ね」
「彼女にしていただいてから、毎日が夢のようですっ!」
「ちなみに、どっちから告った感じ?」
「僕だよ」
「横島くんが!? 横島くんって、御厨さんみたいな子がタイプだったんだ……いや、御厨さんに欠点なんてないし、みんな好きだけど……」
漫画であれば顔に影が落とされそうな程の落ち込みようだ。
まぁ、俺の脚への執念を彼女は知っているし、実際に一番深い関係だとも言える。
御厨とは手を繋いだくらいで、月ノ原とはフレンチキス、九重とも普通のキスをしたが、プラスアルファのアレはあった。
それに対して、吉崎とはキスこそしていないものの、なんかもっとアブナイ展開未遂まで至っている。勘違いするのも無理はない。
このままでは二人の心が折れてしまいそうだし、適度にフォローする必要があるな。
「いっくんって、他に彼女とか作る気はあるの?」
「自分を安売りしたり、美桜を悲しませる気はないけど、作っていきたいと思ってるよ。少しでも多くの子孫を作れば、男性の数も増えるかもしれないし」
これは理子さんの意見でもあるし、俺も同意している。
凍結された、過去に存在していた男の精子があるとはいえ、恩恵を受けられる者は限られている。
しかし、世界には数多くの、子孫を残すべき女性がいる。
大それた野望を持つつもりはないが、種の存続に手を貸すのは、やぶさかではない。
「さ、さすがいっくん……」
「男性という立場に甘んじることなく、後の世代にも繋げていこうという姿勢、感服します!」
「なんかもう、人生二周目だよね」
たとえで言ったはずの吉崎の言葉にドキッとする。
「ま、まぁそういうわけで、頑張っていこうかなと思ってるんだ」
「なるほどね……いっくんは今、他に狙ってる女子はいるわけ?」
こうなってくると、ガツガツアタックできるギャルは強い。
さて、ここで択が出てくるぞ。
二人に、俺が月ノ原と付き合っていることを伝えるかどうかだ。
俺の認識が正しければ、御厨は俺と月ノ原の関係を知っていても、二人に伝える事はしなかった。
人のプライベートを広めないという気遣いができる子だし、九重の言葉からも推測できる。
二人目の彼女について明かした場合、吉崎と九重は更に焦ることになるだろう。
圧倒的なリードを保っていたはずの「その他」女子に負けたのだから。
逆に、明かさなかった場合はマンネリ化した時のカンフル剤になる。
どちらの使い方も捨てがたい。
捨てがたいが、俺の選択は——
ヒロインのヒロインに対する呼び方を忘れている作者
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