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【2章開始】男女比が壊れた世界に転生(夢)した俺は、チョロインを弄びながら高嶺の花を狂わせることにした  作者: 歩く魚
現実だった京都メスガキ

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45.軍師の策・本屋の章

「——はあぁ、今日は夢のような日です。まさか、樹さんが触れてきた文学を知ることができるなんて、そして私に共有してくださるなんて……」


 俺の半歩後ろを歩く美桜が、買ったばかりの本が入った袋を大事そうに胸元で抱いている。


 放課後になると俺は、何か言いたそうに寂しげにしている月ノ原をガン無視し、美桜と共に東京駅の角善に足を運び、本を購入した。


 彼女が抱いているのは、俺のお気に入りの作品である。

 月ノ原と話したものと同じ作品を共有しても良かったのだが、今回は全て違うものにしてみた。


 同じ作品にすれば——ホストが客の名前を「姫」と呼ぶのと同じで——言った言ってないの管理が楽になるという利点がある。


 一方で、個人個人の感想も興味深い一つだ。

 着目点は主観では固定されがちだし、他人の意見は新鮮で、お嬢様ともなれば尚更。


 美桜が気に入りそうな作品と、まったく経験のなさそうな作品をピックアップしてみた。

 

 彼女も、というかこの世界の女子であれば、誰もが俺との接点を持ちたがる。

 若者離れが加速する小説であっても、瞬く間に読んでくれるだろう。


「僕まで買ってもらっちゃってごめんね?」

「そんな、樹さんが謝罪することなど一つもありませんよ。こうして一緒にその……デート、してくださるだけでも、私は一生分の幸福をいただいているのですから」


 彼女は俺の横まで駆け寄り、心底嬉しそうに笑ってくれる。


「それに、本来であれば本ではお返しになりません。一秒……は換算しにくいですね。一日で都内の家を一つ差し上げても足りないぐらいですっ!」


 俺の年収はおそらくスポーツ選手を超えてしまった。

 息をしているだけで億万長者である。


「大袈裟だよ。僕だって、美桜みたいな可愛くて賢い子と一緒に過ごせて幸せなんだから」

「……は、はい…………ありがとう、ございまひゅ……」


 飼い犬が上手に芸をこなしたらご褒美を与えるのと同じで、可愛い彼女にも適度な刺激を与えるべきという考えのもと言葉を紡いでみたが、やはりチョロい。


 俺はフリーズしている美桜と腕を組み、半ば強引に歩かせる。

 恋人との楽しい時間はそろそろ終わりだ。

 吉崎と九重が、きっとどこかから俺たちを監視しているはず。


 女性社会だからどうなるか不安ではあったが、最低限の倫理観はあるらしい。

 俺たちの本屋デート中に突撃してこなかったことが証拠だ。


 とはいえ、そろそろ来ても良い頃合いではある。

 機を見計らっているのは確かだろう。一度、外に出てみるか。


「美桜、この後はどうしようか。どこか行きたいところはある?」

「そうですねぇ……では、この近くのフルーツパーラーなどいかがでしょう! 樹さんは好きな果物はありますか?」


「僕はメロンといちごが好きかな」

「いちごでしたら、今が旬のものもあると思います!」


「美桜は何が好きなの?」

「私はみかんが好きですが、今いちごが一番好きになりました!」


 俺の一声は好きな果物まで変えてしまうのか。


「じゃあ……案内をお願いしてもいい?」

「もちろんですっ! スマートフォンにお願いします!」


 私も日々成長しているんです、と言いたげである。

 彼女のスマホ操作を横から覗いてみると、たどたどしい手つきでマップアプリを開き、フルーツパーラーの名前を入力。目的地はそう遠くない。


 ということで、ここからが本番だ。

 俺たちが角善の入っているビルを出て、ほんの十数メートル歩いたくらいで、背後から声をかけられる。


「あーーっ! いっくんとお嬢じゃん!」

「ほ、ほんとだー。こんなところで会うなんて、奇遇だねー」


 予想通り、九重と吉崎である。

 二人は俺たちが外に出るのを待っていたようだ。


 恋敵への挑戦だというのに行儀がいい……のだが、九重は本気で偶然っぽく振る舞えているものの、吉崎は露骨過ぎる。棒読みだ。


「あらあら、お二人も遊びにいらしてたんですね!」


 だが、そこは流石のお嬢様。人を疑うということを知らない。

 二人とも頑張れ、ここでガッツを見せろ。


「そうなんだよねぇ。でも、思ったよりアタシたちが楽しめるところってなくて……二人はこれからどこ行くの?」

「私たちはフルーツパーラーに行こうかと!」


「へ、へぇーなにそれ美味しそうー」

「……チッヒ下手すぎるし……良いなぁ、アタシ達もちょうど甘いもの食べたかったの! もし良かったら、一緒に行っていい?」


「もちろんですっ! 樹さんはよろしいですか?」

「うん、みんなで行こう」


 見るからに喜んでいる二人。こればかりは演技ではない。

 

 それにしても……やはり美桜を彼女にして正解だった。

 彼氏との時間を邪魔されたくないと、新規イベントの開始を拒否することもないし、育ちが良くて大変動きやすい。


 今ですら満開の善性を見せているのだ。

 付き合わなければ嫉妬などするはずもなく、俺の慧眼に拍手したい。

前にも書いた気がしますが、「軍師の策・〇〇の章」というフォーマットが気に入ったので、これからも出てくると思います


評価ポイントをいただけるととても嬉しいので、お手数ですがよろしくお願いいたします!

作品作りにご協力いただけると幸いです!

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