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【2章開始】男女比が壊れた世界に転生(夢)した俺は、チョロインを弄びながら高嶺の花を狂わせることにした  作者: 歩く魚
夢の世界と月の女神

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37/55

37.祝日にしたいですね!

 それから一時間後、俺と御厨は電車に乗り、適当な街を散歩していた。

 俺からすれば何の変哲もないデートだが、彼女にとっては違う。


「ふんふんふ〜ん…………ふふっ」


 なんて鼻歌まで聞かせてくれる理由は明白。俺という彼氏ができたからだ。

 

 彼氏……つまり自分を特別に想ってくれる相手。

 

 ある種、好意を可視化しているとも言えることで、御厨は積極性を手に入れた。


 これまでは手と手が触れ合うだけでも恥じらっていた彼女は、今では俺と腕を組んでいる。


「あぁ、横島くんが私の彼氏だなんて夢みたいですっ! 今日という日を祝日にしたいですね!」


 これは夢の世界なんだけどな。

 御厨は細いが意外と力は強く、漂ってくる華やかな香りに俺の顔も緩んでしまう。


「祝日だなんて大袈裟だよ。これから、もっとたくさん記念日を作ることになっちゃうよ?」

「まぁ……まぁまぁ! そうですね、三百六十五日が埋まるくらいの思い出を作りましょう!」


 では、ここで答え合わせの時間といこう。

 どうして俺の初彼女が御厨だったのか。


 理由は単純である。御厨が病みにくいからだ。


 積極性の塊である九重であれば、俺に彼女ができると知れば間違いなくヤンヤンしてくる。

 ある程度の節操があるとしても、ヒロインレースに参加してくることは想像に難くない。


 吉崎も言わずもがな、俺に並々ならぬ好意を抱いている。性癖とは諸刃の剣だ。

 あの脚を知った今、俺が彼女を手放す選択肢は消え失せているが、それは吉崎も同様である。


 自らの思考では「横島樹を沼らせている」側であったとしても、数少ない男であること、その中でも格が高いことを本能は理解しているのだ。


 俺が誰と付き合ったところで、吉崎はアプローチをやめられない。

 むしろ、自分の武器を存分に生かしてくるまである。


 しかし、二人に比べて御厨はどうだろうか。

 あまりに清楚すぎる。

 

 仮に俺に意中の相手がいると知れば、御厨は引き下がってしまうかもしれない。

 一夫多妻だということを知っていても、だ。


 そんな御厨を一度恋人にしてしまえば、俺に対する独占欲が生じることになる……というのは、この瞬間にも証明できていることだろう。


 彼女を最大限に弄ぶのなら、特別な関係になるのが手っ取り早い。

 三択とはいえ、最初から御厨を選ぶのは確定していた。


 そして、俺に彼女ができたことに対し、月ノ原がどう感じるかだが……あとのお楽しみだ。

 運命の日は近い。ひとまずは目の前の女の子と楽しむことに集中する。


「ねぇ御厨さん、どこか行きたいところはある?」

「行きたいところ……ですか。横島くんと一緒ならどこへでも、と言いたいところですが、こういう時は女性がリードするのがマナーです。少し考えさせてもらってもいいですか?」


 もちろんと頷くと、彼女は目を潤ませる。


「なんと寛大な心を……私、何があっても横島くんを幸せにしてみせますからね……!」

「う、うん……ありがとう……」


 何を言っても株が上がっていくし、重くなっていくな。


「行きたいところ……行きたいところ……」


 彼女にしては険しい顔で考え込んでいるが、一向に浮かんできそうにない。

 そろそろ助け舟を出してやろうかと思った矢先、御厨は鞄からスマホを取り出した。


「こんな時に便利なのがスマートフォンなんです! 前に綾香さんが『困ったらスマホ見ればいいっしょ。今なんてAIがあるし!』と言っていたのを思い出しました!」


 一人称「わたくし」のお嬢様のギャル口調は貴重だったが、九重よ。AIを過信しすぎるのは良くないぞ。


 俺の危惧はいざ知らず、御厨はたどたどしい手つきでスマホに何かを打ち込み、食い入るように画面を見つめる。

 そして、まるで新たに発見したかのように常識を教えてくれる子供の口ぶりで言った。


「……ファミレスです。ファミレスに行きましょうっ!」


 またファミレスかよと心中でツッコミつつ、俺は頷いた。


 ・


「わぁ……こんなにメニューがあるんですね」


 向かい合うように席につき、店員が去っていくと、御厨はメニューを開きながら言った。

 最初は上下逆に見ていたが、すぐに持ち直す。


「もう夕方だけと、御厨さんはファミレスで良かったの?」

「夕食の心配をしてくれたんですね。ありがとうございます、横島くん。ですがご安心ください。たとえ夕食が何であろうと、私は全て食べ切りますし、横島くんとのご飯が一番美味しいです!」


 胸を張ってみせてくれるが、イマイチ信用できない。

 この細い身体に二食分が入るかと言われると、確実に否だ。


「それじゃあパフェを一緒に食べるのはどう?」

「シェアというやつですね! そうしましょう!」


 俺はタッチパネルを手に取り、パフェを一つとドリンクバーを頼む。

 そして彼女に断ってドリンクを取りに行く。


(御厨は何を飲むんだ……?)


 ドリンクバーといえばコーラやメロンソーダだが、果たしてお嬢様の喉は炭酸を受け入れることができるのか。

 炭酸自体は飲んだことがあるとしても、お高いスパークリングジュースのような、上品なものかも。


 あとで好みを聞くとして、とりあえずアイスティーにしよう。

 もちろん俺はコーラだ。


 席へ戻ろうとすると、位置的にこちらへ背を向けている御厨がスマホを触っているのに気付く。

 バレないように覗き込んでみると、どうやら「パフェの食べ方」を調べているらしい。


(嘘だろ、お嬢様……)


 

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