35.カスの品定め part2
論理的な思考。
これこそ、男が決して失ってはいけない唯一の武器である。
だが、論理的なだけでは希望を叶えることはできない。
いくら正しい論であったとしても、自分に実現できるだけの力がなければ、作戦が遂行不可能な難易度なら、机上の空論と笑われてしまう。
ならば、もう一つ足そうではないか。
経験だ。経験があるから論理は補強され、より輝く結果をもたらす。
俺には論理的な思考も経験もある。
この世界だけじゃない。これまで俺が過ごしてきた幾百幾千という明晰夢。
その世界たちを巡る旅の中で、俺は多くの経験をしてきた。
故に理解している。彼女だ。彼女を作るんだ。
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放課後の空気が、やけに澄んでいるように感じる。
今日も何の変哲もない一日だった。
クラスメイトたちにとっては毎日がフェスティバルなのだろうが。
「ねぇ〜いっくん、今日はどっか行ける? プリ撮ろうよプリ」
「横島くんだって忙しいんだから、あんまり迷惑かけないの! 束縛は冷められるらしいよ?」
「そうですよ。横島くんを鎖で縛るだなんて、そんな事が許されるはずがありません!」
「……それは横島くん以外にも嫌われるよ?」
俺が転入してきてから——する前のことは知らないが——ますます仲良くなっているような三人。
もちろん、この中から俺の初彼女が誕生する。
ここで考えてみよう——誰が彼女に相応しい?
いや、これでは語弊があるというか、分かりにくいかもしれない。
相応しいのは全員だ。みんな可愛いし、俺を幸せにしてくれるだろう。
こう聞くのが正しい——誰を彼女にするのが一番面白い展開になる?
一人ずつ考えてみることにしよう。探偵の推理タイムだ。
「プリってプリクラのことだよね? 今度行ってみたいなぁ」
「マッッッッッジで!? いっくんとのプリなんて家宝確定すぎる……額縁に入れないと!」
九重綾香。ご存知の通りギャルである。
彼女を前に立たせれば引っ張っていってくれるし、ナチュラルに持ち上げてくれるから気持ちがいい。
それに、三人の中では最も美容に気を遣っているだろう。
御厨も同程度の意識は持っているだろうが、積極性が違う。
全てのカードの中から強い何十枚を選ぶのと、限られたカードを活かすのはワケが違うのだ。
二人が戦った場合、勝つのは後者である。
うん、最初の彼女として申し分ない。
俺が他の子に構っていても、可愛らしく嫉妬してくれるはず。
「そういえば、吉崎さんって何のスポーツをやってるの?」
「私は基本的に何でもやるよ。どれ始めても一番になっちゃうから、気分で変えてるんだ」
吉崎千翼……って、そんなに運動神経が良かったのか。
彼女はなんていうか、等身大の恋愛をさせてくれそうだ。
学校帰りの買い食いとか、よくわからん遊びとか、派手さはないけど美しい青春。
そして、やはりポニテと脚の組み合わせは凶悪だろう。
こと脚に関して言えば抜きん出ている。圧勝と言っていい。
なんか性癖も歪んでそうではある。
うん、最初の彼女として申し分ない。
獣のような毎日になりそうだ。
他の子に対する嫉妬も、ある程度はしてくれるだろう。
「御厨さん、家に鎖とかあるの?」
「どうでしょう……横島くんを縛るのには使いませんが、必要なら用意しますよ?」
大ボケお嬢様——じゃなかった、御厨美桜。
彼女は最強の権力を持っている。
俺が男だからギリギリ釣り合いが取れているだけで、よく考えたらそれも異常だ。
男と同じパワーを誇っているのだから。
仮に付き合ったとして、俺が望むものは全て用意してくれるだろう。
家であっても限定の何かであっても、鎖であっても。
うん、最初の彼女として申し分ない。
ズレている感性は俺が直していけばいいし、深く愛してくれるだろう。
嫉妬は……あんまりしそうにないな。
育ちが良すぎて「最後には自分のところに帰ってくる」という余裕がありそうだ。
ということで、これで推理タイムは終わりだ。
三者三様、みんな違ってみんないいとは美しい言葉。
俺の考えを読める人間は果たしているだろうか。
「……ごめん、みんな。今日も用事があるんだ」
そう告げて、またもや俺は教室を出る。
これまでと違うのは、一人にMINEのメッセージを送ったこと。
その内容というのは「みんなが帰ってから教室に来てほしい」というものだ。
もちろん、俺は最終的に三人全員——月ノ原を入れれば四人——と付き合うつもりだ。
どの子も魅力的過ぎる。現実世界の俺なら逆立ちしても付き合えないどころか、視界に入れるのが精一杯だろう。
そんなトップクラスの美少女たちと死ぬほど楽しむのが今回の明晰夢の目標であり、一度目覚めたとしても、都合よく改変して再開する。
だから、本当は「最初の」なんて改まる必要もない。
俺はただ暴れられる展開を作り出すことに全力を注げばいい。
(…………来たか)
人知れず教室に戻り、メッセージを送った相手を待つこと十分。教室の扉が音を立てる。
ゆっくり振り返ると、その子がいた。
これから、俺の彼女になるだなんて想像もしていないだろう。
男子と教室に二人きりだなんてロマンチック……なんて思っているかもしれない。
俺は、その子に向けて笑みを作りながら口を開いた。
「来てくれてありがとう。————さん」
誰だと思いますか?




