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【2章開始】男女比が壊れた世界に転生(夢)した俺は、チョロインを弄びながら高嶺の花を狂わせることにした  作者: 歩く魚
夢の世界と月の女神

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14.トリプルブッカーイツキ

 凍える吹雪と灼熱の同時攻撃を耐えきり、月ノ原とのファーストコンタクトを得て、初めてのキスを一度に済ませるという並々ならぬ戦果を胸に、俺は記念すべき登校初日を終えた。


 タワーマンションのエントランスを通り、エレベーターを降りる。カードキーを自室の扉にかざして扉を開くと、いつも通りの光景がやけに輝いて見える。


 この世界の男は、基本的にセキュリティの厳重な家を割り当てられる。

 余裕の一等地で、住んでいるのは数人の男だけ。まぁ、俺以外はみんな引きこもりのようで、出会った事はないんだが。

 

 ほとんどの階、部屋は有事の際の隠れ蓑に使うように形だけ設られており、申請すれば移動することも可能だ。

 俺の目標としては、隣の部屋あたりに日替わりで女子を呼びたいのだが……それはおいおいだな。


 とりあえず風呂にでも入ろう。

 夢世界で初めて女子と触れ合った日。

 自己研鑽の満足感も限界を超えたものになるだろう。楽しみだ。


 ・


 身も心も欲も洗い流し、ドライヤーで髪を乾かした俺は寝室へ向かった。


「…………ん?」


 キングサイズのベッドに投げ捨てられていたスマートフォン。

 こちらの世界ではゲームはあまり普及しておらず、サブスクに入っても恋愛モノばかり。

 ニュースを見るくらいしか使い道がない無用の長……短物なのだ。


 そんなスマホが、主人の帰還を察知して明かりを灯す。

 手にとって確認してみると、MINEに数件のメッセージが届いている。


「これからはお前の価値も上がってくるな」


 そういえば、数人の女子とMINEを交換したんだった。

 ようやく俺もメッセージツールの恩恵にあやかることができる。

 アプリを開いてみると三人分の通知。

 送り主はAYAKA、ちひろ、御厨美桜。誰かを考えるまでもない。


 AYAKAはもちろん九重だ。

 ギャルは自分の名前を英語で登録しがち。

 なんなら名前の両側を蝶などの絵文字で囲んでいる場合もある。


 ちひろは吉崎。

 運動部では名前で呼び合うことが多く、吉崎よりも千翼の方が認識されやすいのだろう。


 最後に御厨……はフルネームだな。

 日頃から用件がなければアプリを使わないのだろう。

 アカウント名にも慣れてなさが発揮されている。


 他の女子とも連絡先を交換した覚えがあるが、さすがに初日から送って来れないか。

 さてさて、一体どんな内容だろう。一件ずつ確認してみる。


 まずは吉崎からだな。一番サラッとしてそうだし。

 トークルームをタップする。


『横島くーん! 今日はありがとね!』

『大丈夫? 疲れてない?』


 素晴らしい。まさしく日常の一ページ。

 肩肘を張らずに会話できる逸材だ。

 いや、彼女のポニテと脚を加味すれば逸材なんて言葉じゃ収まらない。神である。


「大丈夫だよ!」

「今日はありがとう、とっても楽しかった!」


 無難に返事しておこう。

 相手と同じようなテンション感と分量で会話するのがいいと、どこかに書いてあった気がする。


 一度ホーム画面に戻り、吉崎のトークルームを軽く長押しする。

 そうすることで彼女にバレずにルームを監視することができる。

 二分ほど待っていると既読マークがつき、すぐに返信がきた。


『そっか!』

『横島くん、明日って暇?』

『もしよかったらどっか遊びに行こうよ!』


 放課後に一人とどこかに行くなんて今の段階だと難しそう……と思ったが、明日は土曜日か。

 登校する気マンマンだったが休みだ。


 吉崎はきっと、相当に勇気を振り絞ったのだろう。

 自分から誘うタイプではないように思えるし、競合がいることも理解しているのだから。

 これもまた、俺という男に魅力がありすぎる証明。罪な男だ。


 彼女に返信しようと思ったが、思いとどまる。

 よく考えてみろ……残りの二人からも誘われるんじゃないか?


 ひとまず彼女はおいておいて、次は御厨のトークを確認してみることにした。

 吉崎の返事は早い。おそらくギャルは秒。

 ならば、一番扱いに慣れていないであろう、お嬢様にメッセージを送るのが効率的。


『ごきげんよう、横島くん。

 今日はありがとうございました。

 クラス一同、横島くんと楽しい学生生活が送れればと思っています』


『それで、ここからは個人の話になるのですが……もしよければ明日、一緒にどこかへ出かけませんか?

 もちろん、これは強制ではなく、あくまで私個人が横島くんと仲良くなりたいからです!』


『仮にご了承いただけた場合は、夕方〜夜がいいかなと思っています。クラスメイトと言っても、私たちはまだ出会ったばかりなのですし、横島くんも心配だと思うので。

 夕食はこちらで予約を取っておきますし、手ぶらできてくださって構いません』


『あ、スマートフォンは持ってきてくださると幸いです。

 連絡が取れなくなってしまいますからね草』


『この草というのが最近の流行と聞いたのですが、使い方は合っていますか?』


 やっぱり慣れてないっすね、御厨さん……。

 文面は丁寧だし、草の使い方は違うし、頑張って和ませようとしてくれているし、草の使い方は違う。


 でも、晩飯を用意してくれるなら行く価値はありそうだ。

 今までは外食もほとんど絶っていたから、良い経験になりそうだし。


「御厨さん、今日はありがとう」

「ぜひ明日会いたいな」

「夕方から夜で空けておくから、後で詳しい予定を聞いてもいい?」


 これで良し。夕方からの予定は決まりだ。

 ということで……残るは九重だ。

 彼女は爆速で返事してくれるだろう。メッセージを開く。


『いっくん』

『今日は楽しかったー!』

『アタシのこと、嫌いじゃないってことでいいんだよね?』


 考えるまでもなく、彼女は俺に好意を抱いているだろう。

 だが、世界観特有の恋愛経験の無さでもギャルはギャル。

 簡単に俺という沼に落ちる事はなく、軽い好意のようだ。


「もちろん。僕も初めてだったし」

「嫌いな人にあげるわけないよ」


 送った瞬間に既読がついた。

 普通の女子だったらちょっと怖いと感じるかもしれないが、ギャルならば平常運転。


 しかし、九重からの返信は何分待っても来ない。

 急ぎで対応することが降ってきたのかもしれないし、一度吉崎のメッセージに戻ることにした。


『そっか!』

『横島くん、明日って暇?』

『もしよかったらどっか遊びに行こうよ!』


 と、先ほどは送っていたのだが……下の二件が送信取り消しされている。

 可愛いやつめ。送ってから不安になって消したのだろう。

 

 俺の生きる世界では、男がこんなことをすれば非モテと袋叩きにされ、女子コミュニティ内で男と送信取り消しの名前が一体化するところだ。


 女子がやると可愛いなんて、納得いくかと問われれば否だが、今は置いておこう。

 残念だが吉崎、逃すつもりはない。


「あのさ、もしよかったら明日遊ばない?」

「って言っても、昼から夕方までなんだけど」


 この世界での俺は常にフルスロットル。

 初めて女子と遊んだ翌日にダブルブッキング――いやトリプルブッキングをかますつもりなのだから、戦国武将でさえ真っ青な知略である。


 メッセージを送ると、九重よりも先に吉崎から反応があった。


『本当に!? 送り先間違えてない!?』

『実は私も誘おうと思ってたんだよね』


 知ってます。


「時間は平気?」

『もちろん! どっかさ、散歩でもしようよ!』


 やはり運動部はデートでも身体を動かしたいようだ。

 俺としても、夜は美味い飯が食えそうだし腹は空かせておきたい。

 

 それに、いま吉崎と密室に入ろうものなら……自分を制御できる自信がない。

 脚フェチは運動部には勝てない。これは世の摂理なのだ。


 これで昼から夜までの予定が埋まった。

 あとは朝なんだが……ここでようやく九重が反応を寄越してくれた。

 

『アタシもいっくんが初めてだよ』

『ぜんぶ』


 言い方がギャルらしくないというか、もう付き合っている雰囲気すら感じるが、俺の恋愛経験が皆無なだけで、彼女からすれば普通なのだろう。


「嬉しい。ありがとう」

「もしよかったら、明日の朝からお昼頃まで会えないかな」

「突然だし、厳しかったら全然断ってね」


 今度はすぐに連絡がきた


 『会いたい!』


 という短いものだが。

 思ったより文字を打つのに時間をかけるタイプなのか?

 今回だけ特別なのかは不明だが、少し意外だな。


 そんなこんなで俺は瞬く間に三件の予定を、それも爆裂な美少女たちとの約束を手に入れてしまった。

 夢の世界とはこうでなくては。これが現実だったら、俺は最低の遊び人として名を馳せることだろう。全ては夢だから成せる技である。


 

夢の世界なんだってよ


評価ポイントをいただけるととても嬉しいので、お手数ですがよろしくお願いいたします!

作品作りにご協力いただけると幸いです!


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