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終末世界とセーラー服  作者: 四宮 式
栄光のマエストロ
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第18話 椅子と地下室、そして

「いい情報源になりそうじゃない?」


 にやりと不気味な顔をしたコルトに、カノンが同調する。


「よし、連れて行こう」


 外から廃墟まで運ぶのには少しだけ骨が折れたが、ヴァリアントの身体能力をもってすれば大した話ではない。コルトとフィーネが手と足を持って歩く。

 捕まえた男は身長180センチ、体重80キロと言ったところだろうか。かなり筋肉質ではあるが、練度はかなり低い。その辺に立っていたコンクリートの柱にありあわせのもので適当に縛り付け、武器を全て取り上げる。何を隠し持っているかもよく分からないのでTシャツ一枚になるまで剥いてしまった。

 地下に部屋があったのは幸いだった。こうした作業を行う場合、演出はとても大切な要素となる。闇は本能的に恐怖感を与えるからだ。相変わらず男は気を失っている。


「じゃあ、とりあえず起こさないとね?」


 運動は避けたほうがよいのではと言って止めたほかの三人を、カノンがやんわりと止めた。


「大丈夫だよ。それに、精神的ストレスはどこかに発散したほうがいいっていうじゃん?」


 カノンの口調が一瞬、いつもと変わった。素直に爆風で死んだほうがこの男のためだったかもしれないとフィーネが考えるほどだ。


「んじゃ、あとはやっとくから二人は外に出てて~」


 事務的にカノンとコルトが人払いをする。まさか拷問に自分が参加させろというわけにもいかず、ドルチェとフィーネが素直に従った。

地下に残されたのはコルトとカノンの二人組だ。出入口しか光が入る場所がないせいで、地下室は暗い。薬を服用したカノンが放つ目の光がぼんやりと目立つ。


「カノン、大丈夫?」


 目の光を見たコルトが心配そうに聞く。薬の副作用は寿命を縮めるだけではない。


「心配ないよコルト。気にしないで。さ、始めよ」


 口調がおかしいとコルトが思ったときには、カノンは行動に移していた。カノンが男を起こしにかかった。普通、気絶している相手をたたき起こす際は水をかけるか気付け薬を使う。しかしそんなものは持ち合わせがない。では何を使えばよいのか。


「えいっ」


 わざとかわいらしい声を上げてカノンが男の顔を殴る。ぐしゃ、という10代の少女が人を殴ったとは思えない音がする。ぐお、と声のようなうめき声をあげた男が強制的に目を覚ました。


「おめざめじゃーん。どう?敵対する組織につかまった気分は」


 男は、すぐに状況を理解したらしい。


「……チッ。俺をどうするつもりだよ」


 男が悪態をついた。技術的な練度ばかり高くて見た目は大したことないのだなとカノンは思った。これなら吐き出せるだろう。


「なるほどね。指揮官は優秀だけど現場の兵士のレベルは低い。なんだかアイリスらしいや」


 内心でカノンのことを心配しつつも、男に対して恐怖感を与えるために外面だけはイメージを作

る。コルトの無遠慮な感想がコンクリートの冷たい壁に空しく響いた。


「あんたはどうでもいいでしょうけど、こっちが聞きたいことは山ほどあるのよ」


 カノンがそう話しかける。コルトは、腕を組んだカノンの人差し指がとんとんとん、と自分の腕を規則正しく叩いていることに気が付いた。普段のカノンがしない仕草だ。


「俺みたいな下っ端がなにか知ってると思うのか?」


 男が返した。確かにそうかもしれない。


「そりゃ知らないかもしれないよ?でも問い詰めればなにか思い出すのかもしれないじゃん?ね、お願い。何か知らない?」


 カノンが返した。やはり口調がおかしいが、コルトはカノンを引かせることをあきらめた。目の前で言い争いなどを始めて注意力が散漫になったら、男が何をするかわからない。


「知らん。見てわかるだろう。ただの下っ端なんだよ、俺は。4人のガキを追い詰めて殺せとは言わ

れたが、その理由までは聞かされていねえな」


 男がまっすぐ目を見たままで言っている。カノンがそれをじっと見つめて嘘か真かを判別しようとした。男は誠実さをアピールしようと目を見つめるが、やがて耐えられなくなり目を背ける。視線をそらしただけで、嘘をついているかどうかはわからない。大事なのは目の背け方とふるまいだ。


「……。」


 同じ様子を見ていたコルトとカノンが目配せする。どうやら嘘をついているとは思えない。しかし、手掛かりは今二人の目の前のガラの悪い男以外には存在しないのである。真実を知らなくても、断片を取り出さなければならない。

 はあ~、とカノンが大袈裟な溜息をついた。


「わかった。じゃあさ、あんたから引き出せることは何もない、ってことでいんだよね?」


 案外素直なものだと思ったのだろう。男が一瞬目を輝かせて、ああと返事をした。しかし、この哀れな虜囚は次の言葉に耳を疑うことになる。


「じゃあ、こっちが生かしておく理由はないよね?」


 一瞬、男が凍り付いた。笑顔を張り付けたままのカノンとそれを聞いても平然としているコルトとはいたって対照的である。カノンが拳を振り上げて、そのまま男の顔面に振り下ろした。


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