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終末世界とセーラー服  作者: 四宮 式
栄光のマエストロ
15/38

幕間

 …今日もお疲れ様です。そろそろ帰っていいですよ。…え?話がしたいのですか?私で良ければ何なりと。相談ですか?…ああ、この前にした、マエストロの話ですか…。あの時の話が頭から離れないと。いえいえ、私もあまり考えずに発言してしまった部分がありますから…。


 オオガミからの報告によれば、マエストロは仕事を始めたようですよ。今回の依頼はまあ、いつも彼女たちにお願いしているものに比べたら簡単なものですから、ピクニックに行くような感覚で成功させるんじゃないですか。


 報酬は、牛肉や豚肉を含めた彼らの一か月分の食糧ですよ。内容はこのメモに記しておきましたから、しっかりと用意してあげてください。


 無理って…可能な限り、彼女たちのために用意してください。そりゃあ、これだけの食材を用意するのはアイリス中をかき集めてもなかなか難しいでしょう。しかし、彼女の仕事がそれだけ価値のある者だということは分かっているでしょう。頼りにしていますから、お願いしますよ。…引き受けてくれてありがとうございます。いつも助かっていますよ。


 え?カロアは食べないのか、ですか?彼女たちは完全栄養食が好きではないようですよ。さすがに依頼を受ける際に戦闘糧食として持っていくようですが、日常的な食事は、依頼の報酬である野菜や肉、魚を使って料理を作っています。


 もともとマエストロの報酬はオオガミが選んでいたのですよ。彼女たちはエステート出身ですから、野菜も、肉も魚も、存在すらも知りません。それをオオガミが教えたのですよ。今ではすっかり味覚を使うことが楽しみになっているようです。


 …?ああ、確かにそうかもしれません。マエストロの話をするとき、確かに私は楽しいかもしれません。だってとても魅力的ではないですか。あったこともない彼女たちですが、正直会いたいと思っています。ただ、私も立場がありますからね。彼女たちと会うことはとてもではないですが、敵わないでしょう。


 彼女たちは実に純粋です。依頼を受け、こなし、報酬を受け取る。それが彼らの存在の全てです。彼女たちは受け取ったものを楽しんでいることがすぐにわかるではないですか。前回行った依頼の報酬部分を見てくださいよ。「前回送ったものとは異なる口紅」だそうです。…よほどお洒落をするのが楽しかったのでしょうね…。次回はトリートメントを送ってあげましょうか。研究所で作られている一級品を調達してあげてください。私にはそれくらいしかできませんから。


 マエストロに依頼を出すようになってもうすぐで1年になりますが、色々なものを送りましたね、本当に。依頼はどれも似たような血なまぐさいものなのに、彼女たちが要求する報酬は極端に調達が難しかったり、逆にこんなもので良いのかと思ったりするものもありました。いくら何でもこれまで人を何人も殺して食べてきた大型イントレアの討伐の報酬にライターでは安すぎます。あの時は確か、オオガミに追加報酬という形で焼き菓子と食器一式を与えました。ただ、アイリスでは当たり前のように手に入るライターも、向こうでは手に入らないのでしょうね…。焼き菓子は評判だったらしいのですが、夜でも火を起こせるようになって楽で喜んでいたとオオガミから聞きましたよ。どうやらエステートの人々は火を手に入れるにも一苦労なようですね。


 しかし不思議ですね…。食材を求めてくるということは料理の作り方を知っているはずなのですが…オオガミも私たちとのつながりがあるとはいえ、エステートの住人です。料理の作り方を知っているにしても数種類が限度です。それなのにマエストロは、本当にたくさんの料理の方法を知っているようです。恐ろしい子たちですよ、全く、どこから仕入れてくるんでしょうね…。


―『小組織「マエストロ」に関する調査報告書』pp.90-97より抜粋

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