グレゴル校長、家族になる
広い中庭に、子供たちがずらっと並んだ。
今日の授業は──
「人生サバイバル講座」
教壇代わりの切り株に、どっかり腰を下ろす伝説の元極道の組長グレゴル校長。
その存在感だけで、場がぴりっと引き締まる。
子供たち、緊張。でも、アルだけはにこにこしていた。
「今日、オマエらに教えるのは──」
グレゴルは、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「……生き残るための知恵だ。」
ごつい手で、指を一本立てる。
「まず。勝てねぇ相手には、絶対にケンカを売るな。」
「逃げるのは、恥じゃねぇ。」
「生きて帰って、また、立ち向かえばいい。」
子供たち、真剣な顔で頷く。
グレゴルは、さらに続けた。
「次に。仲間を、裏切るな。」
「信じられるやつは、命を懸けてでも、守れ。」
「それが……生きるってことだ。」
言葉は、どこまでも不器用だった。
でも、その声には、本物の重みがあった。
──それを、グレゴルは、生きてきた中で、何度も、何度も、痛みとともに学んできた。
子供たちの間に、ぽつぽつと、拍手が広がった。
やがて。
「校長先生、だいすきー!!!」
誰かが叫んだ。
それが、連鎖した。
「だいすきー!」
「グレゴリ校長、さいこー!」
「また教えてー!」
グレゴルは、ぐしゃっと顔をしかめた。
「な、なにバカなこと言ってやがる……!」
ごつい手で、乱暴に頭をかく。
でも、ぐいっと空を見上げたその目は、ほんの少し、滲んでいた。
──本当は。
ずっと、欲しかったんだ。
誰かに必要とされること。家族と呼べる存在。共に笑い、叱り、成長する絆。
かつて、夢見ることさえ怖かった未来。
それが今、ここに、確かにあった。
ふと。アルが、にこっと笑って言った。
「家族だもんね、オレたち。」
グレゴルは、ごつい拳を、ぎゅっと握りしめた。
「……あぁ。」
「オレの、 大事な──家族だ。」
校舎いっぱいに、ちいさな歓声と笑い声が広がった。
大空に、未来への希望を乗せて。




