地獄の徴税講座、開幕
今日の授業は、特別講師を招いた。
──徴税監査官。しかも、ギルド最強の切れ者、元密売担当・現監査役のシルク。
黒ずくめの服。ニヤリと笑う口元。
子供たち、ドン引き。
「え、なんか、怖い人きた……」
「これ、勉強なの……?」
教壇に立ったシルクは、チョークをカツンと黒板に叩きつけた。
「よーし、小僧ども!今日は"お金と税金"について、しっかり叩き込んでやるぜ!」
教鞭に舌を這いずり、ぐいっと笑う顔に、子供たちビビりまくり。
だが、シルクは容赦しなかった。
「まずな!オマエらが店でリンゴを一個買うとき、その金の一部は、ギルドや街に納められてんだ!」
「それを"税金"って言う!道が舗装されてるのも、兵隊が盗賊を追い払うのも、ぜーんぶ税金で成り立ってんだ!!」
ばばん!!
黒板に勢いよく絵を描く。リンゴ。道路。兵隊。
やたら絵が上手い。
子供たち、ぽかーん。
「えっ、リンゴ買うと兵隊さんも動けるの?」
「知らなかったー!」
シルクは、ニヤリと笑った。
「無知は罪だぞ、ガキども!」
「税金ってのは、この街を、国を、未来を、回すための"血液"みたいなもんだ!」
「血が止まったら……テメェら死ぬぞ?」
めっちゃ怖い口調。でも、言ってることはド正論。
アルも、一生懸命メモを取っていた。
──何しろ、アルも「徴税」の授業を受けるのは初めてだったから。
そのとき。一人のちびっ子が手を挙げた。
「じゃあ、お金いっぱい持ってる人が、いっぱい税金払うの?」
シルクは、満足げにニヤリと笑った。
「その通り!!持ってるヤツほど、責任が重くなる。それが"義務"ってやつだ!」
「逆に、持ってねぇヤツから、無理やりむしり取るのは……最低だな。」
その目は、ふっと陰った。
かつて、貧しい街で生きてきた、シルク自身の記憶が滲んでいた。
「だからオマエら──」
「ちゃんと働いて、ちゃんと生きて、堂々と税金払える人間になれよ。」
「誰かを泣かせるような金の使い方だけは、絶対すんな。」
教室が、しんと静まり返った。
怖いけど、あったかい。
重いけど、真っ直ぐな。
そんなシルクの言葉が、小さな胸に、ちゃんと届いていた。
「──はい!!!」
子供たちが、一斉に、大声で返事をした。
シルクは、「……ま、合格だな」とぼそっと呟いて、くるりと教壇から降りた。
アルは、きらきらの目でノートを見つめながら、そっと言った。
「……税金って、命懸けなんだな。」
ちいさな学び。ちいさな成長。
フォルティナの教室に、また一つ、未来の種が蒔かれた。




