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第一巻のエピローグ。其の一

審議がようやく終わったとき、誰もすぐには席を立たなかった。しばらく生徒会室には奇妙な沈黙が残っていた。それは、もう誰も言うことがなくなったときに生まれる沈黙ではなく、今、いったい何が起きたのか、そして自分はこの件の中で何者だったのかを、誰もが黙って理解しようとしているような沈黙だった。


高森先輩の前の机には、まだ印刷された資料が並んでいた。議事録、写真、学園アプリの記録、部活動の掲載物に関する規定の抜粋。きちんと整理された紙の束は、この短い時間で引き起こした感情の量に対して、あまりにも乾いて見えた。たぶん、規則の力とはそういうものなのだろう。叫ばない。言い訳もしない。怒りもしない。机の上に置かれ、掲示板に貼られ、ネット上に公開されているだけだ。けれど必要になったとき、人から評価点を奪う。


最初に席を立ったのは、ハセガワ先輩だった。彼女の笑みは消えていなかった。不思議に思えるかもしれないが、今でさえ――決定が下され、正式な注意を受け、新聞部の評価点が失われ、何より自分自身に大きく響く規則が厳しくなったあとでさえ――彼女は、ただ少し出来の悪い一局を終えただけのように見えた。勝ちはしなかった。だが、負けを認めるつもりもない。


「さて」


彼女はほとんど軽い調子で言った。


「これからは、訂正記事を美しく書く練習をしないとね」


その言葉には、はっきりと皮肉が混じっていた。そして、もしかすると自嘲も。とはいえ、彼女が笑っているのは自分自身ではなく、この審議そのもののようにも見えた。大人の規則を、学生たちが懸命に大人のように扱っていること。俺たちのこと。そして、正義というものが紙に印刷され、生徒会長の署名で証明できるかのように、誰もが真剣な顔をしていたこと。


高森先輩は、瞬き一つしなかった。


「まずは、確認済みの記事を書く練習をした方がいいわ」


「相変わらず退屈ですね、会長」


「ありがとう。それが、この役職を任されている理由の一つだから」


ハセガワは小さく笑った。それから鞄を手に取り、扉へ向かった。


続いて、源先輩が席を立った。彼女の顔に怒りも後悔もなかった。ただ、目撃者の前で敗北を飲み込まされた人間特有の、不快なほど抑えた表情だけがあった。


二人が俺の横を通り過ぎるとき、源先輩は一瞬だけ視線を止めた。その一秒で、俺はいくつもの可能性を思い浮かべた。非難。脅し。面子を保つための一言。短く、ほとんど義務のような「これで終わりじゃない」。結局のところ、彼女には俺に怒る理由が十分にあった。もしかすると、ハセガワ先輩以上に。


だが、源先輩は何も言わなかった。ただ、そのまま通り過ぎた。


時に沈黙は、どんな脅しよりも正直に響く。だからこそ、不快でもある。


二人の背後で扉が閉まった。


その後、他の者たちも生徒会室を出始めた。教師は高森先輩に短く頷き、風紀委員長は自分の資料をまとめ、橘修吾は、まるで今のすべてが審議ではなく、ただの予定表の確認だったかのように、ゆっくりとタブレットを閉じた。


美羽、千花、林は、その間ずっと、うっかり自分たちに注目が向くのを恐れているかのように静かに座っていた。審議の間、彼女たちは俺が思っていたよりもずっと落ち着いていた。特に美羽はそうだ。取り乱さなかったし、言い訳もしなかったし、上級生の言葉を遮ろうともしなかった。ただ膝の上で手を握りしめ、ときどき写真を見つめていた。その目は、写真に反論したいというより、そこに貼りつけられた他人の解釈をただ取り除きたいと言っているようだった。


だが、すべてが終わった今、張り詰めていたものが少しずつ外へ漏れ出し始めた。


「私たち……」


最初に口を開いたのは林だった。


彼女の声は、いつも通り小さかった。


「本当に、全部戻ったんですか?」


千花は何度か瞬きをした。まるで今になってようやく、決定の意味を理解したようだった。


「つまり評価点……えっと……私たちの点、本当に再計算されるってこと?」


「完全にではありません」


高森先輩は、声を荒げずに答えた。


「校内秩序の違反に関わる処分は残ります。ただし、新聞部の記事を根拠として科された罰則は、取り消し、または再検討されます。正式な通知は二日以内に学園アプリに表示されるはずです」


「二日……」


美羽がそう繰り返した。


その言い方は、二日という時間が彼女にとって長すぎる猶予であり、同時に早すぎる結果でもあるかのようだった。


そして、彼女の視線がようやく俺で止まった。


その瞬間、俺はだいたい分かった。


これから何が起きるのか。


状況が複雑すぎると、人はそれを分かりやすい役割に分けたくなる。誰かが悪い。誰かが傷ついた。誰かが助けた。そうした方が、書類と他人の判断と遅れてきた謝罪が絡み合っただけの不快な偶然よりも、ずっと受け入れやすいからだ。


美羽は、まさにそういう目で俺を見ていた。


それは恋でも、憧れでもなかった。むしろ、鋭く、ほとんど痛みに近い感謝だった。そのせいで、俺はすぐに一歩横へずれたくなった。


千花も俺を見ていた。いつもならこういう場面でくだらないことを言って全員を救うのは彼女なのに、今回ばかりは黙っていた。


林は俯いた。


「伊弉波くん……」


俺は彼女に最後まで言わせず、椅子から立ち上がった。


「やめてください」


三組の目が同時に俺へ向いた。


「え……?」


美羽が小さく尋ねる。


俺は机の上から自分のファイルを取り、親指で紙の端を揃えた。その動作は必要以上に丁寧だったが、そのおかげで余計なことを言わずに済む一秒ができた。


「俺を勝者とか英雄みたいにしないでください。今日は、どうにかして事実に近づいただけです。それで全部が正しくなったわけじゃない」


美羽が眉を寄せた。


「今、本気で言ってる?」


「かなり」


「レイ、あんた……」


彼女は言葉に詰まった。たぶん彼女の頭の中では、感謝したい気持ちと、怒りたい気持ちと、俺がまた空気を台無しにしたことに対して肩を叩きたい気持ちが、同時にぶつかっていたのだろう。


千花が、ようやく小さく息を吐いた。


「普通のことを、わざと誤解されるように言う才能あるよね」


「才能じゃない。そっちが俺を正しく理解しようとしすぎてるだけです」


「ほら、まさにそれのこと言ってるんだけど……」


林は弱々しく笑ったが、まだ顔を上げなかった。美羽は相変わらず俺をまっすぐ見ていた。その視線の中で、感謝が少しずつ苛立ちに場所を譲っていく。正直、その方がずっとよかった。苛立ちなら、少なくともどう扱えばいいか分かる。


横で俺たちを見ていた高森先輩が、資料の入ったファイルを閉じた。


「伊弉波くんの言い方は乱暴だけれど、本質的には正しいわ。生徒会の決定は、衝突そのものをなかったことにするわけではありません。あくまで、その影響の一部を修正するだけです」


「じゃあ、喜ぶには早いってことですか?」


千花が尋ねた。


「喜んでもいいわ」


高森先輩は答えた。


「ただ、何も起きなかったふりをしてはいけない、ということ」


美羽が最初に視線を逸らした。


「それでも……ありがとう」


俺はもう一度「やめて」と言いかけたが、寸前で止めた。感謝と争うのは、ときに感謝を受け取るのと同じくらい面倒だ。


だから俺は、ただファイルを脇に挟み、肩をすくめた。


「アプリの通知を待ってください。そのあとで、誰かに正式に感謝すればいい」


美羽はゆっくりと俺を見上げた。その表情を見る限り、彼女の中では二つの欲求が争っていた。俺に礼を言い続けるか、それともやっぱり怒るか。


最終的に勝ったのは後者だった。


「あんた、本当に面倒くさい」


「でも、すごく正しいよね」


千花が付け足した。


それが褒め言葉なのかどうか、俺は確認しなかった。


美羽も、たぶん確認しなかった。


「あんたって、普通にありがとうを受け取ることできないの?」


「えっと……できないと思う」


「それ、誇ることじゃないから!」


「誇ってない」


千花が小さく吹き出した。


「すごい。勝ったあとでも、まるで負けたみたいな声してる」


「英さん」


林が少し厳しく言った。


だがその声には、この夜初めて、かすかな笑みが混じっていた。


ようやく、空気が少しだけ軽くなった。


俺は美羽を見た。


「戻ったのは、俺の評価点じゃない。俺の評判でもない。君たちに戻ったのは、最初から君たちのものだったものです。俺は関係ありません」


彼女は口を開いたが、何も言わなかった。


「それは違うものです」


俺は付け加えた。


「混同しない方がいい」


数秒間、美羽は黙っていた。それから視線を横へ逸らす。俺の言葉そのものではなく、それをあまりにも早く別の意味に変えようとした自分の方を気まずく思っているようだった。


「ねえ……たまにあんたって、正しいこと言ってるのに反論したくなる話し方するよね」


「かなり正直な反応だと思います」


「それで納得してるみたいな顔しないで」


俺は答えなかった。


正直なところ、彼女が間違っているのかどうか、自信がなかったからだ。


俺たちは余計な言葉を交わさないまま、廊下へ出た。窓の外では、少しずつ日が暮れ始めていた。夕方の光が床に長い帯を落とし、そのせいで学校の廊下はいつもより少し静かに見えた。遠くでどこかの扉が閉まる音がした。続いて、部活動から戻ってくる生徒たちの声が聞こえてくる。


学園は、いつも通りの時間割で動き続けていた。


たぶん、それが一番不快だった。システムにとって、どんな騒ぎも最後にはアプリ上の記録になり、ランキングの一行になり、数日間の噂話になり、最悪でも誰かの内申に残る一つの注記になる。けれど、その中にいた人間にとって、この数日はなぜか一行にも、通知にも、うまく収まらない。


美羽は俺の隣を、少しだけ後ろを歩いていた。千花と林は数歩離れたところにいて、まるで言葉にせず、俺たちに少しだけ空間を与えることにしたようだった。


「レイ」


「ん?」


「ありがとう」


俺は足を止めた。美羽も止まった。


彼女はまっすぐこちらを見ていなかった。指先は鞄のストラップを握りしめ、夕陽に照らされた髪はいつもより明るく見えた。普段の自信も、気まずい場面でも軽く話してしまうような余裕もなく、今の美羽はまるで別人のようだった。


俺の前に立っていたのは、誰かの噂話の中にいる女子でも、学内スキャンダルのヒロインでも、減点された評価点の横に並んだアプリ上の名前でもなかった。


ただの美羽だった。


数日間、他人の手で評価され、語られ、修正され続けた女の子。


「言っただろ」


俺は少し声を落として言った。


「いらないって」


「でも、私は言った」


「頑固だな」


「うん。それが何?」


「別に」


俺はブレザーのポケットに手を入れ、そこに入っていたキャンディに触れた。だが、取り出しはしなかった。なぜか、慣れた包み紙に触れているだけで、それを開ける音よりも落ち着いた。


美羽はその動きに気づいた。


当然、気づいた。


「また?」


「何が?」


「あんたのキャンディ。ちゃんと話したくないとき、いつもそれに触るよね」


俺は本気で驚いて彼女を見た。あの甘すぎる味が自分を落ち着かせることは知っていた。だが、それをそういうふうに考えたことは一度もなかった。


まさか、本当にそこまで分かりやすくなっていたのか?


美羽はようやく目を上げた。その中にはまだ感情が多すぎたが、少なくとも今の彼女は、俺を自分に都合のいい何かにしようとはしていなかった。


「目立たなくなってほしいわけじゃない」


彼女は言った。


「ただ……たまには隠れないで」


その言葉に、ちょうどいい皮肉は見つからなかった。


認めたくはないが、そういうことは珍しい。


「自分が最初からやるつもりだったことに礼を言われるのが、好きじゃないだけだ」


俺はようやくそう言った。


美羽が少し目を細める。


「じゃあ、そうするつもりだったんだ?」


「もちろん」


「たとえ、それが私じゃなくても?」


嘘をつくことはできた。


「もちろん」と言うこともできた。


あくまで正義と、規則と、状況の客観的な評価の話だったのだと、そういう顔をすることもできた。


だが、今日の夜のあとでは、そんな嘘はあまりにも怠慢に見えた。


「君じゃなかったとしても」


俺は言った。


「俺はたぶん、介入していた」


美羽が、ごくわずかに笑った。


「うん」


「ただ、もう少しだけ苛立ちは少なかったかもしれない」


彼女の笑みが少し広がる。


「それなら、本当っぽい」


当然ながら、ずっと俺たちの話を聞いていた千花が、背後でわざとらしく咳払いをした。


「すみませんね、仲良しさんたち。変な言葉の投げ合いが終わったなら、そろそろこの廊下から移動してもいい? なんか壁までコメント求めてきそうな気がしてきたんだけど」


「英さん!」


林が顔を赤くした。


「何? 本題でしょ」


美羽が勢いよく振り返る。


「千花」


「はいはい、黙ります。けど、あんな審議のあとなんだから、私は今すぐ甘い飲み物が必要なの。あるいはポテト。二つ。学内正義が今日の分を払ってくれるなら三つでもいい」


一瞬、全員が黙った。


そのあと、最初に耐えきれなくなったのは林だった。


彼女は小さく笑った。とても短く、どこか申し訳なさそうに。それでも、確かに笑った。


美羽が手のひらで顔を覆う。


「最低」


「でも空気を明るくするには便利でしょ」


俺たちがもうすぐ角に差しかかるところで、背後から落ち着いた声がした。


「伊弉波くん」


俺は足を止めた。


美羽も振り返ったが、俺は片手を軽く上げ、彼女が残る必要はないと示した。


「先に行ってて。すぐ追いつく」


「本当に?」


彼女が尋ねる。


「相手は生徒会です。物理的に処理される可能性はあまり高くありません」


「その言い方のせいで、全然安心できないんだけど」


彼女は不満そうに俺を見たが、それでも千花と林の後を追った。


ただし、角の向こうに消えるまでに、二度ほど振り返った。


それを見送ってから、俺は橘修吾へ向き直った。


彼は生徒会室の扉の前に立っていた。審議中と同じ、乱れのない姿勢だった。顔には苛立ちも、疲労も、好奇心もない。無関心ですらない。むしろ、思考がないのではなく、多すぎる思考を隠すために丁寧に置かれた空白のようだった。


「まだ何か?」


俺は尋ねた。


「いくつか形式的な確認を」


「決定についてなら、高森先輩がもう説明してくれました」


「会長が説明したのは、公式な部分だ」


「あなたは非公式な部分の担当ですか?」


「余計な耳がない場所で話した方が都合のいい部分を担当している」


俺は少し首を傾げた。


「生徒会の副会長が言うには、かなり怪しい台詞ですね」


「慣れろ。生徒会では、大事なことの大半は紙の上でだけ退屈に見える」


「俺はまだ生徒会に入っていません」


「だが、もう会長の庇護下に入ろうとはした」


そこでようやく、彼が何を言いたいのか分かった。


俺は小さく笑った。


「情報が回るの、早いですね」


「噂じゃない。というより、自分でそれをはっきり口にしていたことを忘れたのか?」


「つまり、よく聞いていたんですね」


「職務上の必要だ」


「趣味かと思っていました」


橘は何も反応しなかった。


口元も、視線も、間も。


まるで俺の言葉が、彼の内側の議事録に記載されるほどの重さに達していないかのようだった。


それが、何より腹立たしかった。


簡単に傷つく人間は分かりやすい。


自分は決して傷つかないと大げさに演じる人間も、少し見ればだいたい読める。


だが、本当にすべての境界確認に反応する必要がないと考えている人間は、別の意味で厄介だ。


どこまでが冷静さで、どこからが計算なのかが分からない。


橘修吾は、どうやらそういう類の人間らしかった。


彼の背後では、生徒会室の扉が少しだけ開いたままだった。中では高森先輩が風紀委員会の高瀬と話している。こちらに届くのは、断片的な言葉だけだった。


「期限」


「通知」


「再計算」


「内部記録」


最後の言葉だけが、他のものより少し長く頭に残った。


「高森先輩は、訂正記事が二日以内に出ると言いました」


俺は言った。


「一年生の名前は伏せられる。罰則は見直される。俺の喧嘩に対する処分は残る。この中のどれが、別の話を必要とするんですか?」


「どれでもない」


「では?」


橘は、まるでその質問を待っていたかのように俺を見た。


「君は審議中、かなりうまく立ち回っていた。伊弉波くん」


「評価ありがとうございます」


「褒めているわけじゃない」


「なおさらいいですね」


「君は記事の弱点を突いた。だが、連鎖の中の弱い輪を叩き潰そうとはしなかった。一年生の名前を公開しろとも要求しなかった。すべての責任を源に押しつけようともしなかった。審議を個人的な復讐に変えなかった」


「まるで残念そうですね」


「どちらかと言えば、こちらの理解が正しいか確認している」


「何のために?」


彼は短く間を置いた。


「今後のために」


その言葉は、俺たちの間に不快な重さで落ちた。


俺はゆっくりとポケットからキャンディを取り出した。だが、それでもまだ包みは開けなかった。


「もし、生徒会がこれから俺を有用だと判断している、と言いたいなら、やめてください。俺は、人を資源みたいに見る相手にはうんざりしています。仕事だけで十分です」


「なら、別の言い方をしよう」


橘は手に持っていたタブレットを少し傾けた。画面が消えているか確認するような動きだった。


「会長には有用な人間が必要だ。俺には、予測可能な人間が必要だ。君は今のところ、そのどちらにも属していない」


「悲しいですね」


「だからこそ、一緒に仕事をするには面白い」


俺は小さく鼻で笑った。


「目撃者がいない場所で話す人間にしては、ずいぶん率直ですね」


「率直さは時間の節約になる」


「俺が、誰かと一緒に仕事をしたくないと言ったら?」


「それなら、生徒会に入りたいと言うべきではなかった」


俺はすぐには答えず、ただ窓の外を見た。


ガラスの向こうでは校庭が少しずつ暗くなり、廊下の反射が夕方の空に重なっていた。一瞬、自分たちが学校ではなく、どこかの水槽の中に立っているように思えた。


隠れているつもりでも、外からはすべての仕草が見えている。


「高森先輩には、もう忠告されました」


俺は言った。


「勝利と恩赦を混同するな、と」


「いい忠告だ」


「あなたの忠告も、それくらい退屈ですか?」


「いや」


橘がようやく一歩近づいた。


「俺の方が役に立つ」


その声は相変わらず平坦だった。


だが今は、そこにごくわずかな鋭さが混じっていた。


「今日の決定を、自分の勝利だと思うな。必要としていた要素の正しい形を、この学校の誰かが君の手元に渡した最初の例だと思え」


俺はゆっくりと彼に視線を戻した。


「今、何と言いました?」


「聞こえただろう」


廊下が、急に静かになりすぎた。


この瞬間までは、今日の件の輪郭をそれなりに理解しているつもりだった。


だが、橘の言葉には余分なものがあった。


示唆。


そして最悪なのは、それが本当に何かを知っている人間の示唆だったことだ。


「もしこれが、俺に感謝させようとする別の試みなら」


俺は言った。


「やめた方がいいですよ」


「心配いらない。感謝は必要ない」


「なら、何が必要なんですか?」


橘がわずかに笑った。


温かくも、友好的でもない。


むしろ、ようやく書類の中に必要な一行を見つけた人間の笑みだった。


「君に写真の原本を渡したのが誰だったのか、知りたくないか?」


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