会議。其の三
「もちろんです。ですが、あらかじめ選んだ結論に反するものを資料からすべて取り除くなら、それはもはや合理的な範囲の要約ではありません」
もし十七枚の写真がほとんど同じようなものだったのなら、そのうち数枚だけを公開したとしても、不自然には見えなかっただろう。
だが、今回の状況は違っていた。
「十七枚すべてを公開する義務はありません」
ハセガワが反論する。
「ありません。だから俺は、なぜ全部を公開しなかったのかとは聞いていません。俺が聞いているのは、なぜ選ばれた写真の中に、出来事の全体を示すものが一枚もなかったのか、ということです」
この件について、彼女とこれ以上議論を続けても意味はなかった。
俺は視線を橘へ移す。
「公開されなかった十四枚の写真の中に、技術的に使えないものはありますか?」
問いを受けた橘はタブレットへ視線を落とし、しばらくデータを見比べた。
「四枚はブレています。さらに三枚は、ほとんど同じ内容です。残りの七枚は十分に鮮明です」
公開に耐えうる写真を選び出すと、彼はタブレットをこちらへ向け、テーブルの中央へと滑らせた。
確認するために、俺は席を立って近づく必要があった。
予想通り、写真はトリミングされていなかった。
そこに映っていたのは、複数の女子と俺が浮ついた関係にあるような場面ではない。
ごく普通の、クラスメイト同士の集まりだった。
「つまり、品質の問題ではなかったということですね」
俺は新聞部部長を横目に見ながら言った。
「先輩たちがこれらの写真を使わなかったのは、単に、それが先輩たちの必要としていた物語とは違うものを示していたからです」
ハセガワは、俺の言葉がまるで自分とは無関係であるかのように顔を背けた。
「どのみち、重要な情報を加えるものではありませんでした」
しかし、その言葉はもはや俺だけを刺激したわけではなかった。
それまで比較的落ち着いて座っていた美羽が、ついに耐えきれなくなった。
「でも、それは本当はどうだったのかを示していたんです! 私たちをまるで別人みたいに見せるんじゃなくて!」
「黒瀬、今は遮らないで」
高森先輩がすぐに彼女を制した。
「……すみません」
俺は、思わず小さく笑ってしまった。
それまで少しだけ気になっていた。
この審議は、まるで俺一人が真実のために戦い、自分では黙ることを選んだ人たちを守っているように見えていたからだ。
だが、美羽のその反応は改めて思い出させてくれた。
この件は、俺だけの問題ではない。
そして、ここで被害を受けたのも、俺一人ではなかった。
ハセガワへ視線を戻し、俺は続けた。
「数枚の写真を選ぶ権利は、あなたたちにありました。ですが、写真を選ぶと同時に、読者に俺たちの生活のどの部分を見せないかも選んだんです」
それでも、先輩はまだ引き下がるつもりはないらしい。
「どんな記事も、取捨選択の結果です」
「はい。だからこそ、編集部はその選択に責任を負うんです」
ハセガワは何も答えなかった。
代わりに口を開いたのは、高森先輩だった。
「橘。写真と一緒に、何か文章は送られていましたか?」
「はい」
目的のファイルに戻ると、彼はその内容を読み上げた。
「『こんばんは。源先輩が、この写真はイザナミ先輩が周囲に作り出している雰囲気を示すものになるかもしれない、と言っていました。確認してみる価値があると思います。源先輩は、これが学院の生徒にとって重要なことかもしれないと考えています』」
写真に何らかの説明が添えられていたのかどうかを、俺は事前に知ることなどできなかった。
もし俺が送信者の立場なら、おそらく写真だけを送り、新聞部にそれをどう扱うか判断させていただろう。
源が記事の発生に直接関係していること自体は、筋の通った話だと思っていた。
だが、その繋がりがここまで露骨なものだとは思っていなかった。
考えを整理し、俺は再びハセガワへ向き直る。
「つまり、あなたたちは写真だけを受け取ったわけではなかった」
「情報提供者が説明を添えることは珍しくありません」
「これは説明ではありません。あなたたちは、記事に都合のいい切り口を、最初から与えられていたんです」
そこで、当然の疑問が浮かぶ。
源とハセガワが歩調を合わせていたことに、もはやほとんど疑いはなかった。
だが、どちらが主導したのか。
「最終的な判断を下したのは、あくまで編集部です」
ハセガワが続けた。
「同意します。だから、掲載に対する責任はあなたたちにあります。ただ、これではっきりしました。『雰囲気』という言葉は、新聞部が事実確認を始めるより前から存在していたんです」
俺は短く間を置き、その場にいる者たちに言葉の意味を考えさせた。
「あなたは、新聞部は学院の空気を誰よりも早く察知すると言っていました。ですが今回に限って言えば、その空気は写真と一緒に送られてきたものだったわけです」
生徒会室に、再び沈黙が落ちた。
今度それを破ったのは、生徒会長だった。
「源さん。あなたは、その写真について一年生の女子生徒と話したことを認めますか」
源はしばらく黙っていた。
自分の答えをどこまで詳しくするべきか、考えているようにも見えた。
「認めます」
源は続けた。
「その少し前に、伊弉波くんはうちの部員たちと揉めています。それに、私たちは彼を入部候補として見ていました。主将として、組織の中に入るかもしれない人物がどのような人間なのか、周囲にどのような影響を与えるのかを把握する義務があります」
たしか、二度目に入部を断ったとき、俺も彼女に似たようなことを言った気がする。
気になるのは、彼女が言う「部員たち」が具体的に誰のことを指しているのか、という点だが。
「筋は通っていますね」
俺はそう同意した。
だが、その同意はかえって彼女の眉を深く寄せさせた。
反論されることを予想していたのだろう。
俺が彼女の言葉を受け入れるとは思っていなかったらしい。
「俺があなたの部への入部を断ったのは、いつでしたか?」
「金曜日です」
「カラオケに行く前ですか。それとも後ですか」
「前です」
「つまり、その写真が撮られた時点で、俺はもう入部候補ではなかったわけですね」
源は一瞬だけ言葉に詰まった。
だが、すぐに表情を整える。
「うちの部員と揉めた以上、あなたの行動は部の評判に影響する可能性がありました」
「記事の中で、弓道部の名前は出ていましたか?」
「いいえ」
ハセガワが答えた。
「なら、その記事は弓道部の評判を守るものではありません。そもそも、弓道部について何も語っていない」
それでも源は、自分の立場を崩そうとはしなかった。
「新聞部がどのような記事を作るのか、私は知りませんでした。私はただ、その写真を正しく価値判断できる人たちに渡すよう、一年生に勧めただけです」
「それなら、なぜ部の顧問に相談しなかったんですか?」
「正式な苦情を入れるほどの根拠はありませんでした」
「生徒会には?」
「同じ理由です」
俺は椅子の背もたれに体を預け、しばらく天井へ視線を向けてから言った。
「つまり、正式な手続きを取るには根拠が足りなかった。けれど、校内の新聞部に資料を渡すには十分だったわけですね」
沈黙が生徒会室を満たした。
この場にいる誰もが、それぞれの形で今の言葉を考えているのだろう。
答えたのは、源だけだった。
「新聞部の判断に、私は責任を負いません」
「そしてハセガワ先輩は、なぜ自分に写真が送られてきたのかには責任を負わない。一年生は、あなたにそう勧められたことには責任を負わない。実に都合のいい流れですね。誰もが小さな一歩を踏み出しただけだから、最終的にどこへ繋がったのかについては、誰も責任を負わないことになる」
会話は、だんだんと言葉遊びに近づいていた。
空気だけを震わせ、具体的な結論にはほとんど近づかない。
それを察したのか、橘が議論をもう少し実務的な方向へ戻すように口を挟んだ。
「伊弉波さん。現時点では、それはまだ修辞的な結論です。源先輩が、まさにあのような記事の掲載を望んでいたと証明できますか?」
「できません」
俺は短く答えた。
振り返るまでもなく、美羽、千花、林の驚いた視線がこちらに向いたのが分かった。
おそらく彼女たちには、この場面でなぜ俺が攻勢を続けなかったのか理解できなかったのだろう。
「源先輩が、記事の内容を事前に知っていたとは証明できません。写真から他の人物を切り取るよう、彼女が命じたとも証明できません。だから、その逆を主張するつもりもありません」
俺は視線を下げ、ずっとこちらを見つめていた高森先輩の目を正面から見た。
短い間を置いてから、続ける。
「ですが、別のことなら証明できます」
その言葉を少しだけ空気の中に置いてから、俺は確認された事実を一つずつ並べた。
「俺が明確に入部を拒否した後も、その部の主将は、俺の私生活に関する情報収集を続けた」
「そのために、主将の言葉を行動の指示として受け取った一年生の部員が使われた」
「資料は、あらかじめ与えられた解釈とともに新聞部へ渡された」
「編集部は、その夜の参加者に一人も話を聞かず、大半の写真を隠し、残りをトリミングし、一つの出来事の二十分間を、継続的な行動の証拠として提示した」
「そして、その掲載を根拠に、生徒たちは十分な事実確認が行われる前に処分を受けた」
俺はわずかに笑った。
「これは陰謀ではありません。陰謀なら、関係者全員が事前に示し合わせている必要がある。ここで起きたのは、もっと単純なことです。全員が次の小さな一歩を踏み出し、最終的な結果については誰か別の人間が責任を負うと思っていた」
そこで、高森先輩が中間的な整理を口にした。
「つまり、あなたは彼女たちの間に共謀があったとは主張していないのね?」
「その通りです」
「あなたが主張しているのは、部の主将が、自分の立場を使って部活動とは関係のない情報を集め、新聞部がその資料を十分な確認なしに掲載した、ということ?」
「はい」
生徒会長は視線を源へ移した。
「源さん。入部を断った生徒の私的な交友関係を監視することが、どのように主将としての職務に関係していたのか、説明できますか?」
先輩は黙っていた。
一秒。
十秒。
沈黙が一分にも感じられるほど続いた後、彼女はようやく答えた。
「……新たな衝突を防ぎたかったんです」
高森は即座に返した。
「では、なぜその懸念を顧問や生徒会に報告しなかったのですか?」
もちろん、源は似たような質問にはすでに答えていた。
だが今となっては、その答えは完全に意味を失っている。
もし本当に、俺の行動が学園の安定を損なう可能性があると考えていたのなら、彼女は顧問か、直接生徒会に相談するべきだった。
逆に、正式な介入に足る根拠がなかったのなら、非公式な監視を行い、その結果を新聞部へ渡す権利などなかった。
それはもう、明確な生徒の私生活への介入だった。
そして俺の場合、公人に近い立場の人物として、個人情報の保護に関する追加の規則も存在する。
それに違反すれば、学園の管理部だけでなく、警察が関わる事態に発展してもおかしくない。
「わかりました。生徒会と風紀委員会が協議に入る前に、誰か追加で発言したいことはありますか」
高瀬が言った。
審議の結論がほとんど見えてきたため、風紀委員長は少しずつ会を終わりへと導いているようだった。
「私たちは、あの夜の参加者に話を聞くべきだったとは認めます」
最初に口を開いたのはハセガワだった。
「ですが、記事の対象になった本人が書かれた内容を気に入らないからといって、学校が記者に不都合な話題を扱うことを禁じるべきだとは思いません」
「俺もそうは思いません」
俺は同意した。
彼女の顔に、心からの驚きが浮かぶ。
「なら、あなたは何を求めているの?」
「不都合な話題を、まず確認してから、告発に変えることです。ここは学園で、ここにいるのは全員生徒です。俺も例外ではありません。ですが、あなたたちもまた、ゴシップ紙の記者ではない。俺がアイドルだからといって、都合のいい標的として扱う権利はありません。同じように、俺の周囲にいる人間を無視し、背景の小道具として利用することも許されない」
ハセガワは、委員会の前に並べられたオリジナルの写真へもう一度視線を落とした。
「それでも、世論が完全に客観的になることなどないと、あなたも分かっているでしょう」
「分かっています。俺は、自分という人間を編集したものとして世間に売る業界で働いていますから。だからこそ、よく知っています。どんな姿を見せるかを選ぶ権利は、その過程で何を切り捨てたのかに対する責任から、人を解放してはくれない」
それ以上、誰も発言しなかった。
高森先輩、橘、そして高瀬はしばらく小声で相談し、記録を確認しながら最後のメモを書き込んでいった。
数分後、協議は終わった。
生徒会長が、そこにいる全員へ視線を上げる。
「生徒会は、提出された異議申し立てについて決定を告げます」
室内に完全な静寂が落ちた。
「新聞部の記事およびそれに伴って発生した噂だけを根拠とした評価点の減点は、時期尚早であり、根拠が不十分であったと認めます。この件を理由に減点された生徒の評価点は、すべて返還されます」
その言葉の後、高瀬がいつもの厳しい目で俺を見た。
「ただし、伊弉波くんの喧嘩への関与について確認済みの処分は、そのまま維持します。本審議は、以前に認定された違反行為を取り消すものではありません」
当然の判断だ。
喧嘩で引かれた分まで取り戻そうとは、最初から思っていない。
高森先輩が続ける。
「新聞部の記事は、十分な確認を経ずに掲載されたものと認定します。また、写真に施された編集が、出来事の印象を大きく変える可能性があったことも認められます」
「新聞部は二日以内に訂正記事を掲載してください。その中で、受け取った写真の総数、出来事の参加者に取材を行っていなかった事実を明記し、本人たちの関与なしに言動を解釈された生徒たちへ正式に謝罪すること」
橘が議事録のページをめくり、決定の次の部分を読み上げた。
「ハセガワさんは新聞部部長の地位を維持します。ただし、単独で記事の掲載を承認する権限を失います。今学期の終了まで、生徒の私生活に関わる記事はすべて、掲載前に顧問の確認を受けるものとします」
その後、会長は源へ視線を向けた。
「入部を拒否した生徒を監視するために一年生の部員を使うことは、主将の職務には含まれません。そのような形で集められた情報を第三者へ渡す行為も、規律や部の評判を守るためという理由では正当化できません」
「源さんは主将の任を解かれます」
高瀬が付け加えた。
「競技者および部員として弓道部に残る権利はあります。ただし、今後は下級生に指示を出す立場に就くことはできません」
源は動かなかった。
ただ、テーブルの上に置かれた指先だけが、ごくわずかに強く握られる。
「加えて」
彼は続けた。
「弓道部は一時的に、新入部員の勧誘を独自に行う権限を失い、顧問による強化監督下に置かれます」
「一年生の女子生徒には、正式な警告を出します」
再び高森が口を開いた。
「彼女は調査に協力しており、上級生の影響下で行動したと判断されるため、氏名は非公開とします」
彼女は一度、議事録へ視線を落とした。
「伊弉波くんの学内評価に影響を与えることを目的として、事前に組織された共謀が存在したという見解は、確認されませんでした」
最後に、会長は顔を上げ、結論を述べる。
「私たちは、陰謀の存在を認定しません。しかし、十分な確認を欠き、結果に責任を負う覚悟もないまま下された判断が、連鎖していたことは認定します」
静まり返った室内で、彼女の落ち着いた声はひときわ明瞭に響いた。
「懲戒判断を下すには、それで十分です」




