表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/28

会議。其の二

「はぁ……分かりました」


高森は重く息を吐いた。


「審議を五分間中断します。橘、アーカイブを確認して、今回の資料に関係する情報だけを整理してください」


「了解しました」


俺の発言を受けて、彼らは望むと望まざるとにかかわらず、システム上の記録を確認せざるを得なくなった。それは生徒会の権限内であり、この審議の範囲にも含まれている。当然、俺たちにはしばらく息をつく時間が与えられた。


廊下へ出ると、俺は壁に背中を預け、少しでも休もうと目を閉じた。


まったく。この労力は、ほんの数分の一時的な静けさに見合っていたのだろうか。


そんなことを考えていると、頬にざらりとした何かが押し当てられた。目を開けると、美羽が包装されたロリポップをこちらに突きつけていた。


「何してるんですか、美羽」


「差し入れ持ってきてあげたんだけど!」


彼女は眩しいくらいの笑顔でそう言った。


「はは……」


俺は黙ってそれを受け取り、かさりと鳴る包み紙を外した。人気のない廊下では、その音が妙に大きく聞こえた。


放課後の校舎に残っているのは、基本的に部活動の生徒たちだけだ。とはいえ、彼らはそれぞれ自分の活動に集中しているため、この棟の廊下で偶然誰かとすれ違うことはほとんどない。俺はロリポップを口に含んだ。舌の上に、濃い苺の味が広がる。


「ねえ、送信者の名前がシステムに残ってるって知ってたの?」


美羽が尋ねてきた。


俺は笑った。


「いいえ」


「え……?」


美羽はその場で固まり、本気で衝撃を受けたような顔で俺を見つめた。


「じゃあ、なんで確認してって言ったの?」


「まあ……俺も、そこに名前が残っているかどうか気になっていたので」


彼女は数秒間、黙って俺を見つめていた。俺が冗談を言っているのか、それとも本当にただの推測にすべてを賭けたと認めたのか、判断しようとしているようだった。


もっとも、完全な当てずっぽうというわけではない。


仮にアーカイブに名前が残っていなかったとしても、公式に確認しなければならない状況を作るだけで、相手側には十分な揺さぶりになる。


それに実際、俺には写真が本当に学院ポータルを通して送られたのか確信はなかった。新しく作ったSNSアカウントから送った可能性もあるし、メールで送った可能性だってある。乱暴に言えば、情報提供者の几帳面さに期待して、適当に突いたにすぎない。


俺の推測は、かなり単純な理屈に基づいていた。記事が普通のクラスチャットではなく学院の公式ポータルに掲載されたのなら、資料もそこを通して送られた可能性がある。いずれにせよ、システム上で具体的な名前が見つからなくても、相手側に圧力をかける手段は他にも残っていた。


一番重要なことは、すでに済ませてある。


オリジナルの写真を、テーブルの上に置いたことだ。


「もし何も出なかったら?」美羽が、至極当然の質問を投げてきた。


「その時は、生徒会の貴重な時間を五分間無駄にしたことを認めるしかありません」


「今、冗談言ってる?」


「そのつもりです。失敗しましたか?」


「最悪」


俺たちはその後もしばらく廊下に立ったまま、どうでもいい話をしていた。やがて生徒会室の扉が再び開き、戻るように促される。


元の席に着くと、橘はすでに戻っていた。彼は高森先輩の前にタブレットと、印刷された紙を一枚置く。


会長は受け取った情報にざっと目を通すと、その場にいる全員へ視線を上げた。


「この情報は、未成年である一年生の女子生徒に関するものです。裁定の公開版において、彼女の氏名は記載しません。本審議においては、資料の伝達経路を確認する目的に限って使用します」


簡単に言えば、送信者の名前は本当に見つかったということだ。


匿名性は、彼女を守ってくれなかったらしい。


当然、最初に口を開いたのはハセガワだった。


「新聞部には、情報源を明かす義務はありません」


「それを求めているわけではありません」


高森は静かに答えた。


「私たちは、資料を提供した人物を公に名指しするよう求めているのではありません。しかし、あなた方が自主的に情報源の開示を拒むことと、審議委員会による正式な照会とは別です。後者の場合、あなた方には本件に関係する情報を提出する義務があります」


「はっ」


ハセガワは鼻で笑った。


「そんなことをされたら、今後うちに何かを送ってくる人間はいなくなりますね」


「では、情報源を守る方法を学んでください。その言葉や資料を、未確認の告発に変えることなく」


「秘密がいつ秘密でなくなるかを、自分で決める人間にとっては、ずいぶん都合のいい立場ですね」


「だからこそ、この判断は議事録に記録され、全当事者の立ち会いのもとで行われています。私個人の気分に左右されるものではありません」


高森は、ハセガワに新たな反論の余地を与えなかった。彼女はまたしても、生徒会長の席に座っているのが他の誰でもなく彼女である理由を、目に見える形で示してみせた。


「では、橘くん。確認結果を読み上げてください」


「承知しました、会長」


相変わらず落ち着いた、ほとんど無関心にも見える表情のまま、彼は出席者のほうへ向き直った。そしてタブレットの画面に目を落とし、読み上げ始める。


「資料は、弓道部に所属する一年生の女子生徒から送信されています。新聞部が受け取った写真は、全部で十七枚。送信方法は、伊弉波さんの推測通り、学院ポータル内にある新聞部公式ページの個別メッセージです」


重要なのは、確認によって俺の推測が正しかったと証明されたことだけではなかった。


むしろ、写真が三枚ではなく十七枚存在していたという事実のほうが、はるかに大きい。


新聞部は、受け取った資料の五分の一にも満たない枚数しか公開していなかった。


もちろん、言い逃れの余地が完全になくなったわけではない。残りの写真は、ブレていたのかもしれない。出来が悪かったのかもしれない。あるいは、単純に使いものにならないものだった可能性もある。だが、事実は変わらない。写真の大半は、読者の目から隠されていた。そしてその中には、新聞部が作り上げた出来事の構図や、ハセガワがあれほど自信満々に語っていた「空気」そのものを、根本から崩す写真が含まれていた可能性がある。


「あなた、本気で一年生を、写真を送っただけで責めるつもりですか?」


ハセガワは声を荒げた。


「いいえ」


俺は答えた。


「送信者の名前だけでは、まだ何も証明できません」


橘は同意するように頷き、続けた。


「先ほど申し上げた通り、新聞部が公開した三枚以外にも、十四枚の写真が提出されていました。保存されていたメタデータにより、それらの撮影時刻も確認できています。十七枚すべての写真は、二十分以内に撮影され、一通のメッセージとして新聞部へ送信されています」


もともと静かだった生徒会室が、今度こそ完全に凍りついたようだった。


美羽は眉をひそめた。千花は露骨に不機嫌そうな顔をしており、林も明らかに表情を硬くしている。ついさっきまで完璧なまでに得意げな笑みを保っていたハセガワでさえ、初めてその笑みを顔から消した。


俺は確認するように尋ねた。


「つまり、公開された三枚の写真は、三つの別々の出来事を写したものではないんですね」


「はい」


橘は答えた。


「ファイルの作成時刻を見る限り、すべて一つの連続した出来事の一部です」


今度は、俺が新聞部の部長へ向き直る番だった。


「ハセガワ先輩。あなたは十七枚すべての写真を受け取りましたか」


「ええ」


「撮影時刻も確認しましたか」


「もちろんです」


「では、それらが一つの二十分間の中で撮影されたものだと知っていたわけですね」


「ええ。でも、それで写真の意味がなくなるわけではありません」


彼女は再び、自分の弁舌で話の流れを別の方向へそらそうとした。


「もちろん、意味がなくなるわけではありません。ただ、それは三つの独立した裏付けではなく、一つの出来事になります。全体を見せれば、受け取り方も変わるはずです」


「はぁ……一つの出来事を写した複数の写真でも、継続的な振る舞いを示すことはできます」


俺は頷き、それから再び橘へ声をかけた。


「橘さん。オリジナルと、新聞部が公開したものを比較させてください」


俺の意図を理解したのか、彼は俺が持ってきた写真を手に取り、高森先輩の背後にあるボードへ貼り出した。その隣には、公開された版も並べられる。


違いは一目瞭然だった。


写真を見つめたまま、俺は尋ねた。


「なぜ、同じ場にいた他の参加者をフレームから外したんですか」


ハセガワは即座に答えた。


「焦点がぼやけるからです。構図の基本を無視できないことくらい、あなたも分かっているでしょう」


まさに詭弁だった。


構図の基本がどうしたというのだ。これは風景写真でもなければ、描き手が自由に視線の誘導を決めていいイラストでもない。実際にあった出来事を説明するものとして提示された記事だ。切り落とされた部分によって意味が変わるのなら、それはもはや美的な理由だけで正当化できる編集ではない。


彼女の答えを聞いた高森は、すぐに副会長へ短く視線を送った。橘は慌てることなく、手元のノートに何かを書き留める。


自分の説明があまり説得力を持たなかったことに気づいたのか、ハセガワはすぐに言葉を補った。


「どんな編集でも、中心を選ぶものです。そうしなければ、記事はただの混沌になります」


「編集には、焦点を定める権利があります」


俺は反論した。


「ですが、そのせいで出来事の意味が完全に変わるのなら、他の要素を無視する権利まではありません」


彼女は答えなかった。だから俺は続けた。


「あなたは、記事が一つの出来事ではなく、傾向を示したものだと言いましたね」


「ええ」


「その傾向は、いくつの独立した出来事で構成されていたんですか」


「カラオケの写真、校門近くでの衝突、屋上での一件、それに生徒たち全体の反応です」


「屋上での一件は、俺のクラスメイトの女子たちに何か関係がありましたか。あるいは、自分たちから俺に話しかけてきた女子たちとの会話が、美羽たちと関係していたとでも?」


「いいえ」


「それらの出来事は、俺が誰かを利用している証拠になりましたか」


「攻撃的な行動傾向を示していました」


「では、なぜ記事では、それらの出来事を、俺がクラスメイトの女子たちに囲まれている写真と並べて掲載したんですか」


一瞬、ハセガワは沈黙した。


だが次の瞬間には、彼女の顔にいつもの薄笑いが戻っていた。


「それらすべてが、あなたという人物の全体像を構成していたからです」


言い換えれば、彼女ははっきり認めたことになる。美羽たちは、ただの背景として使われたのだ。絵の後ろに置かれた小道具のように、それ自体の意味など誰も気にしていなかった。彼女たちは、俺という人物像に必要な雰囲気を添えるためだけに使われた。


「あなたは、一つの夜を複数の出来事に見せかけ、一つの口論を性格の傾向に変え、俺のクラスメイトを背景にした。そのうえで全部を一つにまとめて、『傾向』と呼んだんです」


「……」


「ジャーナリズムは逐語録ではありませんよ、伊弉波くん」


ハセガワは、ようやくそう口にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ