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追及。其の三

(伊弉波零視点)


女子たちが書いた申立書は、当然ながら生徒会の高森先輩へ提出する必要があった。それ自体が決定的な証拠になるわけではないが、今回の状況に憤りを覚えているのが俺一人ではないと示す材料にはなる。


目的の校舎まで急いで向かい、今度はノックもせずに生徒会室へ入った。前回と比べると、今日は室内にいる生徒の数こそ少なかったが、それでも十分な人数が残っていた。そして以前と同じように、全員が何らかの仕事へ取り組んでいる。


俺のように、学校内の面倒な業務とは縁のない人間には、彼らが具体的に何をしているのかまでは分からない。ただ、おそらくは部活動に関する業務や予算の振り分け、提出された申請書の確認などが、その大半を占めているのだろう。


中学生の頃から、生徒会の活動にはほとんど興味を持っていなかった。皮肉なことに、その仕事について俺が抱いているイメージの大部分は、漫画やアニメから得たものにすぎない。そうした情報源が、信頼に値するものではないことくらい理解していたが、他に知る機会がなかったのだから仕方がない。


それでも、生徒会が学院のシステムにおいて重要な役割を担っていることだけは明らかだった。しかも、俺がこれまでに理解した限り、セイリンの生徒会が持つ権限は、一般的な学校のものよりもはるかに大きい。


もっとも、それは不自然なことではない。実際、高森先輩は俺の異議申立てについて、直接審議の場を用意すると約束しているのだから。


先輩はいつもの席に座り、疲れた様子を一切見せることなく、生徒会役員の一人と何かを話し合っていた。同時に、開かれたファイルの書類にも目を通している。今の彼女は、どこから見ても真面目そのものの少女であり、生徒会長という肩書きに完全に相応しい姿だった。


新聞部との会話で残った不快な後味をまだ感じながら、俺は二つの組織が持つ空気のあまりにも大きな違いを、改めて意識した。


「伊弉波くん、何か用?」


高森先輩が声をかけ、俺の思考を遮った。ほんの一秒前まで彼女と話していた男子生徒も、こちらへ顔を向け、視線が重なる。


彼は制服をかなりラフに着崩していたが、身なりそのものはよく整っていた。ブレザーは着ておらず、シャツの一番上のボタンは開けたままで、ネクタイもわずかに緩められている。今風に整えられた髪型は、彼の顔立ちと癖のある髪によく似合っていた。そして左耳につけられたピアスが、その印象を完成させている。


全体として見れば、十分に美形と呼べる部類だろう。男の容姿を評価するのは昔から苦手だったが、それでも彼が平均的な生徒よりも、明らかに美男子と呼ばれる側へ近いことは分かった。


「はい、先輩。他の被害者たちの申立書を持ってきました」


俺は、四通の申立書を収めたファイルを彼女へ差し出した。当然、その中には俺自身のものも含まれている。すでに口頭で苦情は申し立てていたが、それとは別に正式な手続きを踏む必要はあった。


「そう……」


彼女はファイルを受け取ると、すぐに中身へ目を通し始めた。


隣に立つ男子生徒は、相変わらず先輩のそばから動かなかった。その姿は、どこか護衛のようにも見える。


「ああ、そういえば、まだ紹介していなかったわね。こちらは生徒会副会長の橘修吾」


彼女は隣に立つ男子生徒を示した。俺たちは互いに、礼儀正しく頭を下げる。


「よろしく、伊弉波くん」


「こちらこそ」


短い挨拶を終えると、高森先輩は橘先輩に、少し席を外すよう頼んだ。彼は理由を尋ねることもなく、他の生徒会役員たちが作業をしている大机へ戻っていった。


「ねえ、伊弉波くん」


「はい、先輩?」


彼女は何かを考え込んでいるように見えた。もしかすると、わずかに気落ちしていたのかもしれない。もっとも、それは単なる俺の思い込みである可能性もあった。


「私が審議を始めれば、話題になるのは新聞部の行動だけではないわ。あなたが起こした喧嘩も、あなた自身の立場も、クラスへ与えている影響も議題に上がる。どうして転入してからたった一週間で、あなたの周囲にこれほど多くの騒ぎが起きたのか、必ず問われることになるでしょうね」


俺は思わず笑みを浮かべた。


「十分に理解しています、先輩。だからこそ、今回の審議は、すべてを一度に片づける良い機会だと考えています」


「そう……」


俺たちの間に沈黙が落ちた。先輩は明らかに何かを考えていたが、その内容を話すつもりはないらしい。彼女はすべての申立書を丁寧に読み終えると、用紙をファイルへ戻し、それを脇へ置いた。それから両手の指を組み、椅子の背もたれに身体を預け、改めて俺を見る。


「伊弉波くん。仮にあなたがこの件で勝ったとして、その後はどうするの? これで全部が終わるわけではないことくらい、分かっているでしょう。それに、あなたの申立書を見る限り、弓道部に対しても間接的に疑いを向けている。今後、それが原因でかなり面倒なことになる可能性もあるわ」


先輩の本当の意図までは分からなかったが、その警告は少しだけ俺の心を温めた。彼女が心配しているのは俺ではなく、単にこれ以上面倒な問題を抱えたくないだけかもしれない。それでも、わざわざ忠告してくれたこと自体は素直にありがたかった。


「理解しています、先輩。この後、源先輩は間違いなく、今以上に俺を嫌うようになって、何かと邪魔をしてくるでしょうね」


「本当にそう思っているの?」


俺は肯定するように頷いた。


「数回話しただけで人間を完全に判断することはできませんが、おそらく彼女はそうするでしょう。俺はすでに二度、勧誘を断っています。そのうえ今回は、彼女と関係のある部活動に疑いを向けようとしている。源先輩以外にも、俺を嫌う生徒はかなり増えるはずです。ですが、他人の作り話を根拠に攻撃され、それを黙って受け入れるつもりはありません。それに……」


「それに?」


「だからこそ、俺は生徒会の一員にもなりたいんです。自分を守る手段としては、かなり優秀でしょう。俺が先輩の庇護下に入れば、源先輩も簡単には手を出せなくなる」


高森先輩は、呆れたように口元を歪めた。


「つまり、生徒会を自分のために利用したいと、本人を前にして堂々と認めるわけね?」


彼女に対して、それほど分かりきったことを隠す意味はなかった。俺が何も言わなかったとしても、高森は十分に賢く、洞察力もある。遅かれ早かれ、同じ結論へ辿り着いただろう。


最初から成立していない腹の探り合いを続けるよりも、正直さと率直さを見せたほうが、はるかに得策だった。


「分かったわ。けれど、そのためには、まずこの件で勝たなければならない」


「理解しています」


俺たちは視線を交わし、しばらく黙ったまま互いの目を見つめた。何が懸かっているのかを、改めて言葉にする必要はなかった。


「いいでしょう。審議は金曜日の放課後に行うわ。あなた以外にも、申立書を書いた全員が出席する必要がある。必ず来るように伝えておいて。以上よ」


「ありがとうございます、先輩」


俺は礼儀正しく頭を下げ、それ以上何も言わずに生徒会室を後にした。


これで、この一件には明確な日時が与えられた。


俺は少しばかり気分を良くしながら、家へ帰った。


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