観戦・アニマル大相撲! 3
『クマ安~。クマ~安~』
「くうーっ!
ええ取組やったわーっ!」
「あっという間だったね…」
「きゅまー…!」
立ち合いが成立するや否や。
クマさんの強烈な体当たりを、サイさんが両手を広げて受け止める。
バスンッ!って音が、会場中に響き渡る衝撃。
サイさんが土俵際まで押し込まれつつ、勢いがそこで止まって。
クマさんの廻しにサイさんの右手がかかって、ここから逆転か!
そう思ったのも束の間。
先に廻しを掴んだのは、クマさんの右手だった。
クマさんがもう1つ気合の押し込みを見せて、そのまま土俵割り。
決め手は、寄り切り。
迫力のぶつかり合いは、クマさんの勝利で終わった。
「最初にぶつかった時、凄い音だったね!
なんかもう、バーンッ!って音が響いてた!」
「立ち合いの体のぶつけ合いっちゅーのは、わかりやすい相撲の面白さよな。
特に、体の大きな力士同士の立ち合いは、細かい事気にせんでも楽しいやん?
それもあってか、大相撲って外人さんにも大人気なんや。
言葉わからんでも魅力が伝わるし、日本の伝統も感じられるしで」
旅行や仕事で日本に来た海外の有名な人が、テレビ放送に映ってたりするね。
日本を案内する側としても、連れて行きやすいのかもしれない。
「聞いたことあるかも。
15日間、毎日続けて試合が見れる格闘技は、世界でも珍しいって」
「せや。相撲は相撲やから、格闘技と呼ぶかどうかはともかく。
それだけ過酷なんは間違いないで」
比べるものでは無いと思うけど。
格闘技って呼ばれる競技で、2週間も試合をし続ける競技って、なかなか無い。
練習とか稽古とか、毎日の努力が大変なのは一緒なんだろうけど。
毎日テレビで試合を映す格闘技って、すごく稀なんだと思う。
きっと、体にかかる負荷が大きいのが理由じゃないかな。
それに耐えていけるお相撲さん達は、やっぱり凄いんだ!
「クマ安関みたく、明確な強みのある力士は強いわなぁ。
当たりの強さって、誰に対しても強く出れる武器やし。
変化で透かそうにも、体の大きさと突進の速さがあるからな。
中途半端な体勢で受けたら、跳ね飛ばされて終わってまうわ」
「変化って?」
「立ち合いで相手とぶつかる事を避ける動きのことや。
正面から突っ込んで来る力士の横に回り込んで、立ち合いの衝突を避けたり。
相手の横や後ろに位置できれば、絶対的に有利な取組になるしな。
なんなら、目標を見失った相手側がそのまま土俵に倒れこむこともあるよ」
「あー、思い出した。
おじいちゃんが怒ってたやつだ。
いい体格をして、けしからんって」
「まぁわからんではないかな。
正直。
見る側としては、面白く無いんよ。
小兵力士が使うならまだしもやけど。
やっぱり、力士同士のぶつかり合い。
力比べが好きで相撲を見とる面もあるから」
「でも、ルール違反じゃ無いんだよね?」
「せや。禁じ手や無いから、誰がやってもええ。
つまり、全力士が頭に入れておかなアカン事でもある。
土俵上の力士は勝つか負けるかで闘っとるんやし。
大相撲って、番付社会やから。
誰にどう見られるかより、勝ってナンボっちゅうのもわかる。
ただ、客としてはな…がっかりするねん」
「なるほど。
じゃあ、今みたいなガチンコのぶつかり合いは?」
「そんなん…大好物やんか!」
「きゅままー!」
おっと、右膝の上の子グマさんも大興奮しちゃってる!
あんまりお手々を振り回すと、僕の顔にポスポス当たるんですけど。
全然痛く無いし、むしろ幸せ触感だから。
ドンドンやってくれていいんだけど。
若干、前が見づらいです。
頭をポンポンして、ちょっと落ち着かせようと試みる。
…興奮、収まらず。
うーん。
次の取組が始まれば、また集中して見てくれるかな?
元気なのは良い事だし。
騒いだ音は、周囲に伝わらないって聞いてるから。
好きにさせておいてあげようか。
一方、左膝の子猫ちゃんは。
僕の左手を抱えて、カムカムチロチロ。
フワっとした毛並みが僕の膝の上でユラユラ揺れて。
プニっとした肉球が僕の左手を包み込む。
ザラッとした冷たい舌の感触が指先を這う。
…何だろう、この可愛い生き物は。
次にペットにする動物、どんな子にするか決めてないんだけど。
これは、心が揺らぐ。
愛ちゃんは、ペルシャ猫だったよね?
猫ちゃんかー…いいよねー…!
「愛、飽きてもうたか?
ゴメンなウィート君」
「ううん。
いま、ちょう幸せだから。
お構いなくー」
「ああ、うん。
迷惑でないならええのよ。
…お茶とお菓子でも頼もうか」
「ここって、飲食大丈夫なんだ?」
「座席での飲食なら可能やで。
国技館には飲食物を外から持ち込まないのがマナーやけど。
アニガーの心技館なら、料理を作って持って来てもオッケーや!
ナビ子ー、メニュー出してー」
キツネさんタヌキさんの解説パネルとは別に。
手元にもう一つの電子パネルが生成される。
手元とは言っても、僕の両手は塞がっているけれど…
おや?
2人とも、僕の手よりパネルの方が気になるの?
…そうだよね。
誰だって、美味しい食べ物には勝てないよね。
「国技館の飲食店を参考にしたメニューになっとるからね。
定番どころは幕の内弁当とか、焼き鳥、豚まん辺りやろか。
意外なトコで、ハンバーガーセットなんかもあるで」
「ここで、ハンバーガー?
雰囲気に全然あってない気がするけど」
「結構人気があるみたいやで。
15日ずっと来てる人も居るし、変わったもん食べたくなるんやない?
外人さんにも食べやすいメニューやろうし」
外人さん向けって考えると、違和感が消えちゃう不思議。
2週間通い詰める人にとっては、たまにジャンクフードを食べたくなるのかも。
ショッピングメニューにも、アメリカンドックとか載ってるもん。
「スイーツ類も充実しとるんやで。
甘味大将、アライグマ親方のおすすめスイーツパンも美味そうやわ」
「ほほう。
僕にパンをおすすめするんだね?」
「なんや、パンに一家言持っとるんかいな?」
「まだ言ってなかったっけ?
僕の実家、パン屋さん」
「…ホンマもんかいな!」
「ホンマもんです。
僕はまだ、お手伝いだけなんだけど」
ふふん。
国技館グルメ…じゃなくて、心技館グルメ。
その実力、見せて貰おうかな!
ブックマーク登録・評価ポイント・いいねを付けて頂き、ありがとうございます。
誤字報告も助かります。
読んで貰えて、嬉しいです。
がんばります。




