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Animal Garden  作者: slowly
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45/57

Hello, mou mou. 7

「スズメさん、手袋は貸して貰えるの?」


『はい。勿論です。

 搾乳用手袋、タオル、木桶、牛乳瓶もご用意します。

 補足説明ですが。

 ジョージ様が仰ったのは、現実で行う場合の注意点です。

 Animal Gardenの牛には、必ずしも必要な事ではありません。

 この世界に細菌や乳房炎までは再現していませんので』



 アニガーの牛さんは、あくまで牛をモデルにしたe-petsだもんね。


 この世界に、病気まで再現しないっていうのもわかる。


 ジョージさんに聞いた注意点は、みんなに伝えた方がいいと思うけどね。


 プレイヤーが現実でも牛さんの乳絞り体験をするかもしれないから。



『一方で。

 これらの点を守れば、Animal Gardenの牛達も喜ぶでしょう。

 彼らが牛をモデルにしているのは、外見だけではありません。

 現実で好まれる行いは、ここの牛達にも嬉しい事だと言えます』


「つまり、僕が気を付けて接すれば、牛さんも嬉しいって事だよね?」


『ええ。その認識でよろしいかと思います。

 それでは、道具一式を生成します』



 キラキラパッパと木の机が生成されて。


 その上に手袋などの道具が並んで生成されていった。


 地面の上にポンって置かれないのは、細やかな気遣いを感じるところ。


 別に地面の上でも汚れたりはしないんだけど。


 気分的には、こうして貰える方が断然いい!



「あっはっは!

 すまないね、ウィート君!

 ナビゲーターの雀君に補足されてしまったよ!

 ゲームの中なんだから、何でも現実と同じに考えてはいけないね!」


「僕もスズメさん、僕のナビゲーターに補足して貰いました。

 ジョージさんに教えて貰った事を守れば、牛さんが喜ぶって。

 だから、大事なお話を聞かせて貰えて良かったです。

 ありがとうございます、ジョージさん」


「そう言ってくれると安心するよ!

 いい子だねえ、ウィート君は!

 あっはっは!」



 ジョージさんも同じタイミングでナビゲーターさんとお話ししていたみたい。


 他のプレイヤーのナビゲーターは姿も声も認識できないから。


 プレイヤー間で一緒に行動している時は、ナビゲーターさんとの会話のタイミングをシステム側で同期させているのかも。



「まずは、手袋を付けてっと。

 良し、これで準備万端だね。

 牛さん、お乳をわけてもらうね」


「…モー」


「まずは、前絞りからだね。

 …うーん?

 スズメさん、牛さんのお乳が4つあるんだけど。

 1つだけでいいのかな?」


『いえ。できれば4つとも絞ってあげて下さい。

 その方が牛も嬉しいでしょうから。

 前絞りの分は、地面に出してしまって大丈夫です。

 私が電子分解しますので』


「わかった、ありがとう。

 じゃあ、1つずつ綺麗にしていくね。」


「…モゥ」



 屈んで見たら、牛さんにはお乳が4つ!


 びっくりしたけど、牛さんて複乳なんだっけ?


 念のため聞いてみたけど、4つとも綺麗にした方がいいらしい。


 それはそうだよね。


 自分に例えてみれば、気持ちがわかる。


 左足だけ洗って、右手、左手、右足を洗わない感じだもん。


 正確な例えじゃ無いだろうけど、やっぱり気持ちが悪いよね。



「親指と人差し指で、根元をぎゅっと締めて。

 中指、薬指、小指ー!

 …これを3回ずつだね」



 結構力を入れているけど、痛くないかな?


 逆流させちゃいけないと思って、根元はしっかり絞っているけれど。



「牛さん、大丈夫?

 痛くない?」


「…モー」


『大丈夫だそうですよ。

 丁度いい力加減の様です』


「そっか、良かった。

 じゃあ、残りもやっちゃおう!」



 僕の力なら、強めに絞っても痛くならないみたい。


 牛さんの右側で6回、左側で6回の前絞りをして。


 お乳を綺麗に拭き上げる。


 これだけでも割と運動になるけど、本番はここから!


 木桶を牛さんの下に置いて、牛乳を頂こう!



「何回くらい絞ればいいのかな?」


「プレイヤーは1日20回までの乳絞りが許可されているよ!

 20回やりきると、2Lの牛乳が貰えるね!」


『今回の場合は、1つの分房に付き5回ずつの搾乳がよろしいかと。

 現実の乳牛は1日に一定量の乳を搾る必要がありますが。

 アニガーの牛は経産牛ではありません。

 必要であれば牧場付きのnavigatorが調整しますので、ご心配なさらずに』



 5回ずつなら、あっという間に終わっちゃうね。 


 牛さんに、感謝の気持ちを込めて。


 一回一回丁寧に、しっかりと力を込めて。


 お乳を搾って、ミルクを出してもらう。


 これで、美味しいお料理を作るからね!


 前絞り同様、牛さんの右側で10回、左側で10回。


 しっかりと搾った後は、忘れずにお乳をタオルで拭う。



「ふう、これで終わりっと」


「あっはっは!

 お疲れ様、良く頑張ったね!

 そこから先の作業はナビゲーターに任せるといいよ!

 零す可能性があるし、牛乳瓶の保管もしてくれるからね!

 丸っとお任せしてしまうと良い!」


「ああ、なるほど。

 せっかく貰った牛乳、台無しにしたら悲しいもんね。

 スズメさん、お願いしていいかな?」


『こちらはお任せ下さい。

 完璧に移し替えますので、ご安心を。

 手袋も電子分解しておきます』



 もう使わない手袋は、分解してくれるらしい。


 牛乳の瓶詰めと一緒にスズメさんにお任せして。


 僕は、牛さんに感謝を伝えないと!



「牛さん、ありがとう。

 貰った牛乳、家族でみんなで飲ませてもらうね。

 美味しいお料理も作れると思う。

 本当に、助かるよ」



 手袋を外した手で、牛さんの背中を撫でると。


 短くてサラッとした黒い毛が、手の平をくすぐって来る。


 顔を寄せると、暖かくて、力強い鼓動を感じるよ。


 うーん。


 この子とふれあってると、どんどん牛さんが好きになってくる。


 それだけに、ペットにできないのが残念で仕方ない!


 アダプト可能な30タイプには牛さんが居ないんだよね。


 あわー、ホームに連れて行きたいよー!


 

「…モゥ」


「あわわっ!」



 名残惜しくて、ぎゅうぎゅう抱き着いていると。


 牛さんが僕の頬っぺたをペロッて舐めてくれた。


 ペロッて言うか、ベロッて感じかも。


 舌が長い分、ひと舐めが長ーいっ!



『…ウィートさま、この牛から要請が入りました。

 クエスト発生です』


「…クエストッ!?」



 あわわっ!?


 そんな急に?


 牛さんの顔を見てみるけど、じっと僕を見つめて来ている。


 どうしたの?


 何かして欲しい事があるのかな?



『クエスト・名前付けです。

 この牛に名前を付けてあげて下さい』


「名前?

 僕のペットじゃないのに、いいの?

 ホームには連れて帰れないんでしょ?」


『world's fieldsに居る野生種のe-petsを、ホームに連れ帰る事はできません。

 しかし、仲良くなった個体に名付けを願われる事があります。

 付けられた名前は正式にその個体名として登録され、以降の変更は不可です。

 …ちなみに、ですが。

 名付けをしないまでも、ある程度仲良くなった野生種のe-petsは、該当するプレイヤーのホームに遊びに行くことができます。

 幾つかの条件はありますが、プレイヤーがログイン中か否かは限定されません』



 ホームに連れて帰れなくても、遊びに来てくれる様になるんだ!


 これは、凄く嬉しい!


 牧場には定期的に来るつもりだし、次からはスズメさんにこの子を探して貰おうと思っているけれど。


 ホームでも会えるようになるのは…控えめに言って、最高だね!


 それに、牛さんの名前。


 実はもう思いついてるんだ。


 僕のペットじゃないからさ。


 勝手に名前を付けたり、呼んだりできないと思ってたけど…


 牛さんが望んでくれるなら、この名前がいいと思う!



「春姫。

 ハルヒが、君の名前だよ」



 仔牛たちを見守る優しい眼差しと、抱きしめた体の暖かさ。


 お姫様みたいな綺麗な顔立ち、艶やかな黒い毛並み。


 僕の中ではストンと嵌る、ぴったりな名前だって確信がある。



「…モゥ♪」



 あわわっ。


 体をすり寄せて、嬉しい気持ちを伝えてくれる!


 …この子が喜んでくれて、良かった!


 ホームには連れて行けないけれど。


 ちょくちょく会いに来るからね。


 君も、いつでも遊びに来ていいんだよ?


 これからよろしくね、春姫!




 ~~~~~~~~~~~~~~~




「あっはっは!

 若さってのは良い物だねえ!」


「ウキー」


「大丈夫!

 邪魔なんてしないさ!

 あとはお若いお二人でってヤツだ!

 あっはっは!」


「ウキッ!」


「スマンスマン!

 1度言ってみたかったセリフなんだ!」


「ウキー…」


「あっはっは!

 しかし、あっちの子たちも楽しそうだねえ!」


「ウキ」


「子グマに、仔牛!

 雀に、子リス!

 可愛い物好きにはたまらないね!」


「ウキ」


「天君も混ざってくるかい!?」


「ウーキ」


「私と一緒に居てくれるのか!

 天君は優しいねえ!」


「…ウキャーッ!」


「照れるな照れるな!

 あっはっは!」


「ウーキー…」


「あっはっは!

 しかし何だね!

 あの子たちは、ウインクばかりして目が疲れないかね!?」


「ウキー…」


「しばらくの間、ウチでも流行りそうだねえ!

 天君もやってみるかい?

 あっはっは!」


「…ウキッ☆」

いつも読んで頂き、いいねを付けて頂き、ありがとうございます。

物語を作る活力に、執筆を続けるモチベーションになっています。

本当に嬉しいです。

がんばります。

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