Hello, mou mou. 6
「それじゃあ、お節介のアドバイスをさせて貰おうかな!
クエストじゃないから、お互いにポイントは入らないけどね!
おじさんのワガママだと思って、付き合ってくれたまえ!
あっはっは!」
「ポイントなんて、無くても大丈夫です!
僕たち、牛乳を貰いに来ただけですから。
あと、牛さんと遊べたらいいなって。」
「それは良いゲームの楽しみ方をしていると思うよ!
あっはっは!」
今日は、GPを稼ぎ来たわけじゃ無いし。
今回みたいな場合、僕がクエストで貰えるBPってさ。
人に助けて貰った上で、そこから更に頂けちゃうポイントなワケで。
助けて貰った分のポイントが入らないからって、文句なんか出るはずないよ。
「早速、レッスン1といこう!
まずは、好みの牛を見つける事だね!
見た目、雰囲気、フィーリング!
どこでもいいから、好きだと思える牛を見つける事が重要だ!」
「気になる子なら、もう見つけてるんです。
すごく優しそうな牛さんが居て」
この場所に来てから、近くに居る牛さんの、その殆どが僕たちに注目しているというか。
何となくでも、みんなが好意的に見てくれてるのが感じられる。
だから多分。
どの子にお願いしても、お乳を搾らせてくれるとは思うんだ。
でも、その中でも。
ツキノと仔牛たちを、静かに見守ってくれてる牛さんが居るんだ。
他の子と同様、僕やジョージさんの事も気にしてはいるみたいだけど。
それでも仔牛たちを優先して見てあげている、お母さんみたいな優しさの。
艶のある黒い毛並みで、牛さんの中でも一際大きな体。
澄んだ黒目と、まっすぐなお鼻が美しいお顔立ち。
ジョージさんが言ってた好きだと思う点が、全部当てはまってる!
僕は、あの牛さんに一目惚れしちゃったんだ。
「おお、それは良い!
素晴らしいよ!
牛選びをナビゲーターに任せていると、体験できない事さ!
最初の乳絞りから『これだ』っていう相手が見つかるのは、凄い事だよ!」
「声をかけて来てもいいかな?
僕、あの子とお話ししたい」
「あっはっは!
勿論だとも!
レッスン2は、牛としっかり対話する事!
いきなり手を伸ばすのではなく!
顔を合わせて、話しかけて!
牛乳を貰うのは、それからさ!」
…ごめんなさい、ジョージさん。
正直、もう話半分で聞いてしまっている。
でも、僕の集中力は今、あの牛さんだけに使われちゃってるんだ。
少しづつ近づく度に、僕に視線を向ける頻度が高まって来る。
ちょっとソワソワしてるのかな?
仔牛たちの方を見たり、僕の方を見たり。
顔の動きと尻尾の動きが合わさっていて、ちょっと面白い。
そんな牛さんも、目の前まで近づくと、やっと視線を合わせてくれる。
「こんにちは、牛さん。
僕の名前はウィート。
よろしくね?」
「…モー」
「あわ、綺麗な声だね。
他の子は大きくて低い声がお腹に響くのに。
君の鳴き声はとっても聞き心地が良くて、すんなりと鼓膜に響く」
「…モゥ」
「気を使ってくれるの?
大きな声じゃなかったから、大丈夫だよ」
「…モー」
「うん、やっぱり綺麗な声だ。
ねえ、体を撫でてもいい?」
どうぞって感じに、体を横に向けてくれる。
牛さんは横に視界が広いから、僕は顔の横辺りに立つ。
触る人の姿は視界に入っていた方が良いだろうからね。
ゆっくりと、頭と背中を撫でてみる。
光沢のある黒い毛並みは、見た目通りの滑らかな手触りに、暖かな感触。
柔らかくて、指が沈み込むようで。
あんまり触り心地がいいから。
脳が命令しなくても、僕の手が勝手に動き続ける気がする。
もう、ずうっと撫でていたいけど。
今日は牛乳が欲しくて来たんだから。
しっかりしないとね!
「僕さ、今日はミルクを貰いに来たんだ。
誰にお願いしようかなって、探していたんだけど。
君にお願いしたいんだ」
「…モー?」
「うん、君がいいんだ。
綺麗な子だし、優しい子だし。
ずっと仔牛たちのことを見てあげていたでしょ?
それを見て、僕は君の事が好きになったんだ」
「…モゥ」
「いいの?
ありがとう!
嬉しいよ!」
喜んだ勢いで、ぎゅーっと抱き着いてしまう!
あわわ、あったかーい!
つやつやすべすべで、暖かくて。
手の平とか頬っぺたが特にだけど。
全身が、すんごく幸せな感触に包まれるー!
…あわー。
このまま眠ったら、控えめに言って最高なのではー?
「いやあ、若くて良いねえ!
私も若かりし日々を思い出してしまったよ!
青春って良いねえ!
あっはっは!」
「ウキャー!」
「天くん、突っ込みが強烈だね!
アニガーなら痛くないから、問題ないけどね!」
「ウッキーッ!」
天くん、突っ込み役お疲れ様です。
ジョージさんたちとは、さっき会ったばかりだけど。
彼らの立ち位置って、何となくわかったかも。
ジョージさんが明るく飛ばして、天くんがブレーキ役。
ピピちゃんがフォローに回って、チールくんがついて回る。
短い時間の印象だけど、そう間違ってない気がするよ。
…こう考えると、チールくんは要領がいいのでは?
一番被害が少なそうなポジションを確保したのでは…
ちょっと、名前に引っ張られてる気がする…
「あっはっは!
私だって若い人のお邪魔をしたくはないがね!
搾乳するのを忘れてないかと思うじゃないか!
時間は有限だよ!
とりわけ若いうちは、時間が足りないものさ!」
「…いや、忘れてはいませんよ。
お乳を搾って良いって、許可をもらえましたし。
…時間の事は、ちょっと忘れてました。
ごめんなさい、ジョージさん」
「謝ることは無いよ!
ゲームを楽しむ事は良い事さ!
動物が好きな事も良い事さ!
ただ、時間が限られているのが残念なだけさ!」
よく考えたら、僕1人の時間じゃ無いんだった。
せっかくジョージさんが付き添ってくれたんだから。
まずは、目的を果たさないとダメだよね。
「ではレッスン3!
搾乳段階の注意点だ!
搾乳のやり方は知っているかな?」
「親指と人差し指で輪っかを作って、中指から順番に絞る!」
「惜しい!
親指と人差し指の輪っかで乳首の根元をしっかりと絞ってから、順に指の力を入れていくんだ!
これは、牛の病気を防ぐために大事な手順だからね!
痛そうかと気遣って力を緩めた搾乳は、乳房炎のリスクを高めてしまうんだ!」
「指で輪っかを作るのは、牛さんのためなんだね。
あ、手袋をした方がいいって聞いた事もあるかも」
「正解!
人間が持つ細菌を、乳頭経由で牛に移さないために手袋をするね!」
「牛さんを守るためのルールが多くあるんですね」
「そうさ!
牛の健康を守ることで、人間も安心して牛乳を飲めるからね!」
「なら、この子のためにも気を付けないと…!
他にも気を付ける事はありますか?」
「人間用のミルクを取る前に、前絞りをしてあげる必要があるね!
3回程度絞っておくことで、新鮮なミルクを出してくれるのさ!
そのあと、乳頭を綺麗に拭いてあげると良い!
乳を搾った後にも拭いてあげよう!」
牛さんのお乳を搾るのにも、色々と手順があるんだね。
その殆どが、牛さんの健康を守るための決まり事。
だったら、僕も教わった事を守って乳絞りをしよう。
ミルクを貰うときに、この子を傷つけちゃいけない。
仲良くなりたい相手なんだから、しっかりと気遣ってあげなきゃ!
軽いナンパに映らないかが心配で、悩んで、見直して。
真剣な態度に書けていると判断して、投稿します。
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がんばります。




