Hello, mou mou. 5
「あっはっは!
随分と可愛い事をしているね!」
不意に聞こえてきた声に、振り返ってみると。
ベージュのテンガロンハットを被った、優しそうなおじさんが微笑んでいる。
一目見て、優しそうなって感じた理由は…
朗らかな笑顔と、からっとした感じの大きな声。
それと、オーバーオールを真ん丸と押し上げている、大きなお腹のせいかも。
「こんにちわー。
ごめんなさい、騒がしくしてしまって…」
牧場入口に比べれば、プレイヤーの数はずっと少ないけれど。
いま僕たちが居る牧場の奥の方でも、プレイヤーの姿をちらほら見かける。
子供たちが楽しそうだったから、つい好きにさせてしまったけれど。
ちょっと、うるさかったかな?
牛さんたちが鳴き声をあげない分、この子たちの声が響いちゃったかも。
「なあに!
子供たちが元気なのはいいことさ!
ここは静かでいいけれど、静かすぎても寂しいからねえ!
あっはっは!」
あわわ。
とてもお声が大きなおじさんだ。
ツキノたちも、びっくりして動きが止まっちゃってる。
さっきまでは仔牛たちの尻尾が左右にぐるぐるん回って、楽しいって気持ちを伝えてくれていたのに。
今はピーンと垂直になったまま。
大人の牛さんと同じくらいに大きな声だったもん、驚いたよね。
「ウキッ!ウキー」
「うん?
おお、こりゃイカン!
大きな声で、驚かせてしまったね!
これは申し訳ない!
あっはっは!」
「ウキーッ!」
「スマンスマン!
あっはっは!」
「ウッキャー!」
大きな声で話し続けるおじさんを注意しているのは、お猿さん!
僕の腰下くらいかな?
ツキノと同じくらいの背丈で、おじさんの周りをピョンピョン飛び跳ねてる!
ちょっと怒って見えるのは、おじさんの声が全然小さくならないからかな?
お猿さんも興奮してきちゃって、おじさんと同じ大きさの声量になってるかも。
呆気に取られて、ただそのやり取り見ていると。
おじさんの大きな体の後ろから、何かが僕のところに飛んで来た!
「チュチュン、チュン」
「きぅきぅ」
「あわー、小っこい可愛い!
こんにちわ、雀さん。リスさん」
「チュン」
「きぅ」
僕の目の前で地面に降りた鳥さんと、その背中から飛び降りたリスさん。
騒がしくてすみません。
そんな感じで頭をペコペコさせてる雀さん。
僕にも見えてるってことは、ナビゲーターじゃないんだよね。
ペットの雀さんは、アニガーで初めて見たかも!
その隣で、手乗りサイズの小さなリスさんが、一生懸命にペコペコしてる。
雀さんを真似しているのかな?
小さくて、すっごく可愛い!
「あっはっは!
ウチの子たちが、すまないねえ!」
「ウキー…」
「チュン…」
「きぅ…」
ああ。言葉は通じないけど、何を言ってるのかがわかるよ。
多分、お前が言うなって感じだよね。
ジト目になってる3体も可愛いけど。
それに全く動じていない、おじさんのインパクトが強いなぁ。
「あっはっは!
急にお邪魔をしてすまないね!
連れているのがクマの子供だけに見えたものでね!
もしかしたら、ここに来るのが初めてなんじゃないかと思ってね!
お節介をしたくなったのさ!」
「はい、初めてです。
…そっか。
子供のペットだけを連れていると、初心者だってわかるんだ」
他の子はお留守番で、幼生体のペットだけを連れてる人の可能性もあるけど。
それをやるのは、結構なベテランさんかも。
最初の内は、嬉しくてペットの皆を連れ回しちゃうよ!
お留守番させるだなんて、とんでもない!
家族が10体くらいに増えた時は、また別の話になるのかも、だけど。
「殆どの初心者は入り口付近で乳絞りを体験するからね!
誰かしらにクエストが出て、やり方を教えてくれるんだけどね!
この辺りは人が少ないからね!
おじさんが、アドバイスだけでもと思ったのさ!」
「牛さんと人が密集してたのは、そんな理由もあったんだ。
僕、最初くらいは自分で牛さんを探そうと思って。
それで、プレイヤーが少ない場所に連れて来てもらったんです」
「なるほど、自分で探して牛乳を貰おうだなんて…通だね!
しかも最初から!
実に天晴れだ!
あっはっは!」
言われてみれば。
プレイヤーが多いって事は、それだけ助けて貰えるって事なんだ。
1人で居たって、スズメさんが助けてくれると思うけど。
クエストが出るって意味では、プレイヤーが多い場所の方が美味しいのかもしれないね。
鳴き声の大きさは、聞こえ方を調整して貰えばいいんだから。
「ウキキッ、ウキッ!」
「おお、そうだったそうだった!
自己紹介がまだだったね!
私の名前はジョージ!
憧れの芸能人から名前を貰って付けたんだよ!
あっはっは!」
「僕の名前はウィートです。
中学3年生で、実家がパン屋で。
えーっと…
アニガー初めて5日目です!
よろしくお願いします!」
ゲームの中の自己紹介って難しいよね。
実名を言っちゃいそうになるし。
住所とか、何県に住んでますって言うのもNGになる。
パン屋の息子はOKでも、佐藤パンの息子はNG。
中学生って言うのはOK…むしろ、推奨されてる。
未成年だから、強く保護されてますよっていう警告になるんだって。
「こちらこそ、よろしくお願いします!
それにしても、パン屋の子供さんか!
私はパンが大好きだから、実家がパン屋なのは羨ましいね!
あっはっは!」
「ウキ、ウキーッ!」
「そうだったそうだった!
この子はね、お猿の斉天大聖!
天くんって呼んであげてよ!
西遊記から名前を貰ったんだ!
ニホンザルだけどね!
あっはっは!」
「ウキキッ!ウキー」
やかましい!
みたいな感じの、綺麗な裏手突っ込みを見せてくれた天くん。
その後で、これまた綺麗なお辞儀を見せてくれた!
西遊記って、三蔵法師が天竺=インドを目指して旅をする話だよね。
流石に、名前に孫悟空は使い辛かったのかな?
…斉天大聖も大概だとは思うけど、ね。
「ウィート君の目の前に居るのが、雀のピピちゃん!
子供の時に飼っていたインコから名前を貰ったんだよ!
この子は、私が最初にペットにした子なんだ!
アニガーの中でだけどね!
現実では、金魚の金ちゃんが最初のペットだったね!
あっはっは!」
「チュン、チュン…」
すみません、すみません。
そんな気持ちが伝わって来るほど、ペコペコし続けているピピちゃん。
君が謝ること無いんだよ、気にしないでって。
にっこり微笑んで、気持ちを伝えようとしてみたけど…
ジョージさんが、他のプレイヤーとやり取りする時もこんな感じなのかな?
面倒見が良さそうで、ちょっとだけ苦労人な雰囲気があるよ…
「最後は、ピピちゃんの隣に居る、リスのチール!
今月仲間入りしたばっかりだから、まだ幼生体なんだ!
来月もリスを仲間に加えて、デップにしようと思ってるんだ!
名前の由来は…怒られそうだから、秘密さ!
あっはっは!」
「きぅきぅ」
お隣のピピちゃんと一緒に、ペコペコしている小さなチールくん。
申し訳なさよりは、ピピちゃんの真似をしているみたいだけど。
可愛いから、全て良し!
モチーフについては、聞かなかった事にしておこう。
…デフォルメ体とか、危ないんじゃないかなぁ。
「僕のペットは、ツキノワグマのツキノです!
僕のペットはこの子だけで…周りの仔牛は、牧場の子たちです」
「きゅま☆」
「もー☆」
「もー☆」
すっかり仲良しな子グマさんと仔牛たちの組み合わせ。
ツキノを中心に、仔牛が周りに集まっちゃってる!
…ちょっとツキノくん。
僕も、その中混ざりたいんだけどー。
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