Hello, mou mou. 4
牛さんの群れに突入した僕たちは、360度を牛さんに囲まれちゃってる状態!
前も、後ろも、左右も牛。
サラウンドでモーモーと鳴き声が響いて来ちゃって。
入口に居た時よりも、一層重低音が強く響く!
僕とツキノは音の迫力に圧倒されちゃって。
スズメさんにお願いして、周りの音量をまた和らげてもらったんだ。
「結構見つからないなー」
「まままままま♪」
それでも、繋いだ手からは小刻みな振動が伝わって来ているけど。
キミはもう、アトラクションとして楽しんでるよね?
心配しなくて良さそうだし、いいんだけどさ。
空いてる牛さん探すの、手伝ってくれてますか?
「入口近くは、プレイヤーの数も多いの?」
『そうですね。
プレイヤー付のnavigatorは、近場の個体に誘導しますので』
「それなら、奥の方まで移動した方がいいのかな?」
『奥地まで入ると、牛の数も減りますが、プレイヤーの数は更に減ります。
目視で探されるのならば、入口から離れるのは良い案だと思います』
「じゃあ、そうしよう!
歩いて行ってもいいけど…転送してもらった方が良さそうだね」
『畏まりました。
プレイヤーの配置が少ない位置まで転移します。
転移完了まで、目を開けない様にして下さい』
この牛さんの群れを歩きで突っ切るのは難しいかも。
質量的な話でもそうだし、方向感覚も狂いそう。
他の人のペットを見て愛でながら歩くのは、また今度!
スズメさんに転移をお願いしてから、素直に目を閉じる。
自分が転送されてる時の電子の光も、見てみたいんだけど。
視覚からの情報を遮断しておかないと、視神経に負荷がかかるらしいんだ。
脳が情報を処理しきれなくて、体の調子が悪くなりますって。
一応、目を開けても疑似的な情報が見られるだけになっていて。
頭がパンクする程の情報は感じ取れなくなってるみたいだけど。
それでバイタルを悪化させて、ゲーム中断なんて笑えないもん。
転移って、10秒くらいで済むことだし。
良いって言われるまで、目を開けないで居よう。
『転移完了。
二人とも、もう目を開けて大丈夫ですよ』
「…ん。
ありがとう、スズメさん」
「きゅまー」
振動が止まっちゃったからかな?
ちょっと残念そうなツキノの鳴き声を横耳に。
ゆっくりと目を開けた先には、牛さんの群れ。
でも、さっきよりも数がまばらで。
密集率も低そうに見える。
さっきまでのは、満員電車とまでは言わないけれど。
高台から見て、牛が5に、地面が5って感じだったから。
入口付近は、もっとキツキツだったと思うし。
「奥まで来ると、牛さんもそんなに集まってないんだね」
『牧場の牛達は、溜まっている乳を搾ってもらうために、牛舎から自ら出てきています。
入口付近に多くの牛が集まるのは、プレイヤーが牧場に入って来る、その近くに位置する事で、搾乳して貰いたいとアピールをしているのです』
「お乳がパンパンになってる子たちってこと?」
『そうですね。
かといって、奥に位置している牛達から搾乳できない訳ではありません。
搾乳してもらうよりも、食事や散歩が目的で歩いている個体が多く居ますが。
搾乳される事に満足感を覚える事に違いはありません。
仮に、今日はもう搾乳不可の個体であれば、その都度お伝えします』
「ここに居る牛さんにミルクをお願いしても、お邪魔にならないかな?」
『牛達は気性が穏やかですので。
問題なく、ウィートさまの訪問を喜ぶでしょう。
皆、私と同じ電子体ですから。
人間とのふれあいは、嬉しい事なのです。
牧場の奥地に居るのは、同胞にその順番を譲るためです』
「そうだったんだ。
やっぱり、入り口近くで探した方がよかったのかな?」
『大丈夫です。問題ありませんよ。
先ほど見た通り、多くのプレイヤーに牛達のお相手をして頂いています。
仮に、牛達の要求に比べてプレイヤーの訪問が少ない日でも、牛が不快にならないよう世話係のnavigatorが調整していますので。
この奥地にウィートさまが居ることで、この場の牛達にも活力が沸くでしょう。
どうぞこのままで、搾乳する個体をお探しください』
何となくだけど、感じてはいたんだよね。
ここに転移した時から、歓迎されてる雰囲気って言うのかな?
牛さんたちが、ちょっとウキウキしてるっていうか。
そんなに視線を向けてくるワケじゃないんだけど。
明らかにって程ではないにせよ。
それとなく意識を向けられてるのが、わかる気がするんだ。
結局、いい意味でもお邪魔はしちゃってるみたいだけど。
喜んではくれてるみたいだし、いいのかな?
それともう1つ、気付いたことがあって。
「奥に居る子たちは、あんまり大きな声で鳴かないんだね。
こっちに転移してから、ほとんど鳴き声を聞いてない」
牧場入口から牛さんの群れに入った時は、四方八方からすごい迫力だったけど。
ここはとても静かで。
のんびりした鳴き声が、たまに聞こえる程度。
牛さんが草を食む音や、草の上を歩く音の方が耳に入って来るくらい。
さっきの賑やかさが、ちょっと嘘みたいに思えちゃう。
君たち、同じ牛さんだよね?
『入り口付近の牛達は、少々興奮状態にある個体が多く…
人とふれあえる喜びと、搾乳してもらえる喜びが合わさり。
鳴き声が大きくなってしまいます。
その、嬉しさ故の事ですので。
ご容赦頂きたく存じます』
「ぜんぜん、全然いいんだよ!
ただ、あんまりの落差にびっくりしちゃっただけ。
…まぁ、正直に言うと。
のんびりできて、こっちの方が居心地はいいかなー」
そもそも、ここは牛さんたちのお庭みたいな場所だからね。
お乳を下さいなって、僕たちはお伺いに来ているんだし。
この奥地の様に、静かな場所だってあるんだから。
牛さんたちに文句を言うのは、違うよね。
それに、奥地に来た事で、すごい発見もあった!
それはね…
小っちゃな牛さん。
仔牛たちが、ちらほら歩いているんだよ!
「さっきの混んでた場所には、仔牛は居なかったよね?」
『仔牛からは、ミルクが出ませんので。
成体になるまでの1か月は、奥まった場所で放牧されていることが多いですね。
乳は出ませんが、ふれあう分には大丈夫ですよ。』
「僕より先に、ツキノが遊んであげてるね。
…遊んでもらっているのかな?」
『ふふ。愛らしいですね』
スズメさんと話し込んでいると。
いつの間にか僕の手から抜け出してる子グマさんは。
あっという間に仲良くなったのか、何体かの仔牛に囲まれている。
きゅむきゅむもーもー、楽しそうにお話してる?
彼らは、意思疎通ができているのかな?
それとも、雰囲気で何となく?
…まあ、両者とも楽しそうだし。
なにより、どっちも可愛いし。
見ている僕は、ほっこり満足なんだけど…
「…あれ、ツキノが教えたのかな?
さっきまで、誰もやってなかったよね…?」
『そのようですね。
牛達の間で、流行るかもしれませんよ?』
「きゅむ☆」
「もー☆」
「もー☆」
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