登場!難波のナナミ(自称)2
「あのね、ナナミさん。
ゴリスチャンたち、触ってもいいかな?」
「お、触る前に確認取るんは花丸やわ。
他のプレイヤーとかペットとかに勝手に触ろうとしても、シールドが生えて弾かれるから気ぃつけやー。
試しにゴリスチャンと握手してみ?
ウチから許可出さんままにしとくから」
「やった!
ゴリスチャン、握手してー」
「ウホ」
「わーい!
…なんか、ぐにょっとするー…」
なんだろう。
目の前に差し出されているのは、ゴリラさんの大きな手なのに。
その手に触れる直前くらいで、何かに妨害されてるような感覚がある。
かなり不快な感触で…
頑張って例えると、固いゼラチンの塊に手を突っ込んだ感じ。
触った経験が無いんだけど、ヘドロとか、タールとか。
こんな感じの、いやーな触れ感なんじゃないのかなぁ。
「あわー…」
「めっちゃ気持ち悪いやろ?
マナー違反すると、その気持ち悪さがお仕置きになるねん。
ペットに暴力とか振るおうとしてもなるらしいし。
プレイヤーに暴言吐く輩もお仕置されるらしい。
必要な罰なんは、間違い無いねんけどな」
「んー…
このダウナーな感じなら、悪い事する人も少なくなりそうだねー…」
「きゅーま?」
「ん-…
大丈夫じゃないかもー?
ちょっと元気の充電させてー…」
「きゅま?きゅままー♪」
ツキノを抱きしめて、栄養補給ならぬ、元気補給。
僕がアニガーで求めてるのは、この温もりなんだよー。
さっきのいやーな感覚は、本当にお呼びじゃない。
あれがマナー違反のペナルティっていうなら、ツキノと一緒に良い子にしていよう。
…あわー、生き返るー。
きゅむきゅむと可愛い鳴き声に、体の底から力が湧いてくるみたい。
ん、元気の充電完了!
「きゅまま?」
「ツキノのおかげで、すっごく元気出た!
ありがとー!」
「きゅまま~♪」
「いい子いい子ー」
「きゅ~ま~♪」
なでりなでりモッフモッフ。
褒めてあげてるはずなのに、褒めてる側の僕まで嬉しい好循環。
目尻を下げながら、ツキノを撫でることに集中する。
おでこの三日月模様のところを親指でくにくにしてみる。
目をうっとりさせて、気持ちよさそうにしてくれるツキノ。
ん-、これはいい反応!
僕だって、毎日ただこの子を可愛がってるだけじゃあない。
撫で方とか、抱きしめ方とか。
角度や強さを変えたりして、ちょっとずつ反応を伺っているんだよ!
「にやにや」
「ウホー」
「ワフー」
「にゃーん」
「…はっ!」
そういえば、ここホームじゃないし!
なんなら今、人と話してる真っ最中だし!
もっと言えば、結構な数の人に注目されてる気がするんですけど!
「お二人さん、お熱いねー!
1月なのに、ここだけアツアツの鉄板焼きやわー」
「ウッホッホ」
「ワンッ!」
「うにゃー」
…は、恥ずかしい!
さっきも実名を言っちゃって恥ずかしい思いをしたばっかりなのに!
視線を上げなくても、ナナミさんがニヤ付いてるのがわかるし!
てゆーか、わざわざ口に出して言ってたし!
周囲の生暖かい視線まで感じるし!
ぐぬぬ。
穴があったら入りたいし…!
「きゅーま?きゅままー?」
「なっはっはっ!
大丈夫やで、ツキノちゃん。
ウィート君な。
君と仲良しなん自慢したくてしゃーないんやて!」
「きゅま?きゅ~ま♪」
「相思相愛、アッチアチやわ~!
なっはっはーっ!」
「ウッホッホー!」
「ワンワンッ!ワンッ!」
「うにゃにゃーん」
「きゅまま~♪」
ぐぬぬ。
~~~~~~~~~~~~~~~
やー、オモロい子やで。
切っ掛けは、ナビゲーターからの依頼やってん。
適当に街中ブラつこー思うてたら、クエスト生えてきたんよ。
時間に余裕あったし、GP美味しいし。
なにより、暇やったからね。
新人ちゃんの案内任されるくらいウチの評価が高いっちゅーなら、まぁ悪い気ぃもせえへんしな。
このナナミさんが、一発ご案内したろやないかと。
そう思うて声かけてみたんやけど。
ウチの子等に興味深々やわ。
実名で挨拶しだすわ。
嘘ついてからかえば、見事にひっかかるわ。
お仕置きに触らせてみれば、ペットの子熊と二人の世界に入ってまうし。
ホームならともかく、衆人環視の中やで?
しかも、ウチ等のことも忘れていちゃついとるし。
さっきまでフツーに話しとったやんか。
生暖か~い周りの視線が、ウチにまで刺さるん勘弁してほしいんやけど。
原因になっとるお仕置きに、触らせてみたんはウチやけど。
アレは新人の登竜門っちゅーか。
何も知らんと、うっかりやらかしてまう前に。
一回体験さしとくのも優しさやん?
まあ意図的に触ろうとしない限りはあんな風にはならんし。
いらんっちゃいらん気遣いかもしれんけど。
全然知らん人相手にアレやってまうと、色々と後悔しまくるねんて。
ただでさえ気まずいのに、気分まで落ち込んでしまうし。
その上、知らなかった事とか説明して、真剣に謝らなあかんし。
ナビゲーターも、説明くらいはしてくれるけども。
アレは体験してみんと、わからん辛さがあるから。
ホンマに親切心から、一回試しにやらせてみたんやわ。
いや、それで気分が落ち込むのはわかるんやけど。
だからって、あんなに夢中でペットといちゃついたりはせんやろ。
動物好きとは思うてたけど、予想以上やったわ。
アニガーってゲームは、基本的に動植物が好きな人しか居らん。
魔法も無ければ銃も無い。
ドンパチどころか職業だのスキルだの、ゲームで定番の戦闘や育成のシステムが何も無いんや。
いくら最新のフルダイブゲーム言うても、ペットとか庭仕事とかに興味が無い人間はあんまり入って来ぉへんのよ。
アニガー運営はマナーやルールを守らん人間に対して厳しく接しとるし。
真っ当に楽しんでるウチからしても、ちょっと厳しいなって感じるくらいやで?
結局このゲームを楽しめるのは、普通に動物が好きな人と、植物が好きな人。
スポーツとか料理とか、趣味の分野で楽しみたいって人も一定数居るけどな。
要するに、大体の人はホンマにこのゲームが好きやねん。
せやから、ウィート君が自分のペットといちゃついてても、誰も文句なんて言わんし、馬鹿にしたりもせんねん。
だって、ここに居るほぼ全員、同好の士ってヤツや。
ホームに帰れば、大体似たような感じになるよ。
ウチもそうやし。
衆目の前でソレをやるんは、猛者と言ってええやろうけど。
まぁ、だからこそ親近感が沸くっていうんかな?
すれ違う人たちも、みんなにっこにこ微笑ましく見とるし。
自分のペット撫でながら、足を止めてウィート君達を見守ってる人まで居るし。
この先、ウィート君がちょっと困ってたら。
いま周りで見てた人たち、みんな助けに入ってくれるんちゃうの?
つーか、ウチにまで目配せしてくんのやめてーや。
任せたで…ちゃうねん。
いや、今は保護者みたいな任務受けてるけども。
…はあ。
なんや、軽い気持ちで引き受けたクエストやったけど。
予想の斜め上、大物ルーキーを引き当てたんかも。
めっちゃええ子なんはもうわかったし、今日は最後まで付き合うけども。
これ以上注目を集めるのは勘弁してな?
うん、ウチのペット触らしたるから。
とりあえず、場所から変えよか?
方言については、雰囲気でキャッチして頂けると幸いです。
活動報告に、一件追加しました。
一読して頂けると嬉しいです。
がんばります。




