登場!難波のナナミ(自称)1
「ちょっとそこ行くおぼっちゃん!」
急に大きな声をかけられて、ちょっとビクってなっちゃった!
おぼっちゃんって、僕のことだよね…?
きょろきょろ周りを見渡すと、ポニーテールの女の人が僕を見て手招きをしている。
背の高い人で、足元にはビーグル犬とペルシャ猫、隣にはタキシードを着たゴリラ(!)さんが、付き添うみたいに立っている。
「ウチやで~、ウチ。
ちょっとこっちにおいで~な」
何か、僕に用があるのかな?
スズメさんに目を向けると、しっかりと頷いてくれた。
知らない人だけど、スズメさんのOKが出たなら大丈夫だよね!
てゆーか、動物たちが気になって仕方無いんだよー!
「あ、あのー。こんにちは…」
「ふっふっふー、こんにちは~。
まず自己紹介…の前にー。
ウチが怪しくないお姉さんやって、説明しとかなあかんね」
確かにびっくりしたけど、びっくりはしたけど。
いきなり大きな声を聞いたから驚いたのであって、別に不審者だとは思ってないんだけど。
でも、大丈夫ですって伝える前に女の人が話し始めちゃった。
「このゲームな、初心者さんとかお子供さんとかが初めてプライベートエリアから出た時に、近くのプレイヤーにナビゲーターから依頼が入ることがあんのよ。
ちょっと色々教えたって~言う感じの」
「あー、それで声かけてくれたんですかー。
スズメさんがお願いしてくれたの?」
「あかん、あかんでー君ぃ。
さっきから、君のナビゲーターはん、しゃべっとらんやん?
それな、プレイヤー同士が交流しとる時に、ナビゲーターは前に出てこんのがデフォルトやねん」
「んー、言われてみれば。
スズメさん、ちょっと距離が遠いかも?」
「せやな。こーゆー時、あの子ら一歩引くねん。
ここの運営、プレイヤー間の交流に肯定的みたいでな?
特に、未成年にはまぁ優しいで~」
「確かに、ホームから出ると、アニガーがもっと楽しくなるって言ってたかも」
「せやせや。それにな、ナビゲーターって、自分のトコの子~しか見れんねん。
ウチの子、今ここに居るねんけど、見えへんやろ?」
くるくると手首を回して、左肩の横辺りを指さしてくれるけど、僕には何も見えない。
この人も、からかって遊んでるワケじゃなさそうだし。
そうなると、スズメさんも僕にしか見えないってこと?
「僕のナビゲーター、スズメさんって言うんですけど、見えませんか?
僕の左後ろの、頭の高さ位に居るんですけど」
「見えへん見えへん。
アニガーのナビゲーター、ホンマにプレイヤー専属でな。
自分に着いてくれた子ぉ以外、見えんし触れもせんねん」
あわー。
スズメさんって、ホントに僕の専属ナビゲーターなんだね。
ログインしてる時はいつも一緒に居てくれてるし、この世界のことを何でも教えてくれる。
ログアウトしてる時だって、ツキノの面倒を見てくれてるって話だし。
うーん。
それだけでも十分すぎるほどありがたいのに、僕のためだけに頑張ってるって聞いちゃったら。
もう、ますます頭が上がらなくなっちゃうなぁ。
「よっしゃ!これで不審者認定もされへんやろ!
ウチ、ナビゲーターに推薦される、優良プレイヤーやからね!
遅くなってもーたけど、自己紹介いっとこか!
ウチ、ナナミ!
難波のナナミちゃん、二十歳の大学2回生や!
よろしゅうな~」
「あ、僕、佐藤麦です!
中学3年生です!
よろしくお願いします!」
「あ~、元気がええのは花丸やけども。
君いま、本名しゃべったやろ?」
「…あ」
「あかんで~、個人情報は隠してかな。
厄介ごとに巻き込まれるで~?」
「ご、ごめんなさい。
えと、アニガーでは、ウィートっていいます」
「ウィート君な、よろしゅうに~」
は、恥ずかしい。
お姉さん…ナナミさんが普通の名前に聞こえちゃって、つい自分の本名で自己紹介しちゃったよ!
あわー。
個人情報は大事だって、お父さんともいっぱい話し合ったのにー。
「まぁまぁ、そない真っ赤にならんでも大丈夫や。
こういう経験積まさすために、今回みたいな機会がセッティングされんねやからな。
それに、本名の部分は聞こえへんかったで?
ナビゲーターがあかん空気を察知すると、そこの音声を他人に聞こえへんようにしてくれんねや。
ウチも初めて見たけど、口の動きまで止まるんやね~」
「うー、次から気を付けますー」
「まぁアニガーん中なら、ナビゲーターが助けてくれるしな。
意識しすぎて、現実で『僕ウィート!』なんてやらかす方が赤っ恥やから、そっちの方気ぃつけんとー」
「…それはヤバイ。
4月から高校生だから、気を付けなくっちゃ!」
「あ~、中学生言うとったもんね。
気ぃつけや。
初日やらかすと、3年間、ドギツくなるからね…」
ウチの、甘酸っぱい青春…って呟いてるナナミさんの目が淀んでいる気がする。
なんだか、深く突っ込んではいけない気がするよ!
よくわからないけど、よくわかったこともある。
高校最初の自己紹介は、気を付けよう!
~~~~~~~~~~~~~~~
ナナミさんと、お互いのペットを紹介しあった。
「ゴリスチャンや。
リスちゃうで。
ゴリラの執事で、ゴリスチャンや」
「ウホ」
「タキシードが恰好いいねー」
「きゅまー」
「ちなみに、女の子やで」
「ウッホ~ン」
「あっ、そうなんだ。
可愛いの方が良かったかな?」
「嘘やけど」
「ウホ」
「!」
「ピーナッツや。
先月まで幼生体やったけど、趣のある子犬でなあ」
「ワンッ!」
「わー、モフモフだー!
子犬のときも見たかったなー」
「きゅまきゅまー」
「オネェやで」
「ワッフ~ン」
「…えっ、そうなの?
僕、オネェの人…犬?初めて会うよー」
「嘘やけど」
「ワン」
「!」
「キャッツ・愛や。
宝石の名前から貰うたで。
まだ幼生体やねん」
「にゃん」
「可愛いねー!
子猫ちゃん、可愛いねー!」
「きゅまま~」
「夜は怪盗やで」
「にゃっ☆」
「…嘘だよね?」
「嘘やけど」
「にゃ~ん☆」
「…」
「きゅまっ☆」
「…気を取り直して、ツキノワグマのツキノです。
まだ出会って4日だけど、僕の家族です!」
「きゅま!」
「おー、おでこの三日月が恰好ええね!
名前、カッペーにせんかったん?
うさぎちゃんとか、宗近もええね!」
「え?かっぺいですか?
むねちかもかっこ良いけど、うさぎは何でです?クマですよ?」
「きゅまー?」
「…いや、ええねん。
オタクが本能で口走った、ただの妄言やねんて…」
方言については、雰囲気でキャッチして頂けると幸いです。
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