マイホーム、マイガーデン 7
「よーっし!
それじゃ、庭造りやっていこう!」
「きゅまー!」
『はい。まずは基礎の基礎、種植えからですね。
Animal Gardenでは、全てのe-plantsが種から育ちます。
e-plantsの種はseedと呼称されます。
チューリップに代表される球根植物も、球根ではなく種としてプレイヤーにお渡しされます。
プレイヤーの皆様からは、やはり球根植物が種から育つのは違和感があるという意見も頂いていますが。
e-plantsが種から育つことは、この世界の生成時に定義された原則ですので、その変更は根本的に不可能です』
「うーん。まぁ違和感は感じるのかなー?」
僕には種か球根かのこだわりはないし、そもそも知識として球根植物に詳しくない。
おおまかに、種を飛ばすか、地面で株分けするかって理解であってるよね?
道端に咲いている草花も、タンポポくらいしか名前がわからないし。
チューリップが種から育つって言われても、別に違和感はないんだけど。
植物が大好きで、普段から草花にふれて暮らしている人たちが、アニガーで自分だけのチューリップ畑を造るぞーって、期待してたら渡されたのが種。
そんな感じで、しっくりこなかったりしたのかなー?
『現在では、運営側がプレイヤーのニーズにお応えしようとした結果。
球根の見た目をした種、という結果に落ち着いています』
「あ、落ち着いたんだね。
…それさ、最初からそうしておけばよかったんじゃないかな…?」
『制作側、運営側の準備不足であり、勉強不足でした。
一同、反省しております』
「あはは…」
まぁリリースして半年のゲームだし、色々と問題点も改善点も出たりするよね。
プレイヤーの数だって多いんだし、感じ方だって様々だと思うし。
アニガーのFull_Dive_Gearって、日本だけでもうすぐ80万台突破するらしい。
大体そのくらいの人が居るって考えたら、全部が順調ってワケにはいかないよね。
『話をe-plantsのチュートリアルに戻しましょう。
プレイヤーは基本的にホームエリアでe-plantsを育てることになります。
他のプレイヤーのホームに行き来することもできますし、そこで共同作業していただくことも可能です。
ゲーム内イベントとしてe-plantsに関するものもありますが、ホームでseedを育てることが多くのイベントの軸となります』
「他の人のホームでも、その人の植物のお世話ができるってこと?」
『もちろんプレイヤー同士の許可は必要ですし、ホーム側のプレイヤーがログイン中であることが前提条件です。
ゲーム内通貨を賃金として労働力を増やすのは構いませんが、現実の金銭での交渉は許可されません。
ゲーム内では我々navigatorが情報を管理していますが、ゲーム外の金銭のやり取りは我々の管轄外です…が。
現代において、電子体が活動しているのはAnimal Gardenだけではありません。
現実世界で金銭のやり取りが確認され、それがこの世界での労働だと認識された際には。
警告の後、対応次第で相応の対処が下されます』
「お金で人を使っちゃダメだよってこと?」
『はい。その認識で十分です。
とはいえ、組織的に大きな動きが見られなければ、あまりうるさくは言われないはずです。
お昼ご飯を対価に手伝ってもらう程度ならば、何の問題もございません
仮に、パワハラの様な形での強制力が働いていた場合ですが。
ご相談いただければ、確認の上で、然るべき機関と連携して対応いたします』
うーん。
また難しい話になってるけど。
会社の上司とか、学校の先輩とかに命令されたら相談してねってことかな?
色んなハラスメントが犯罪として明確に線引きされている時代だけど、一向になくならないもんね。
小中学校の授業でもハラスメントを含む法律の授業があるし、犯罪に関する講習を受けることは納税者の義務になっている。
間違いなく効果のあることらしいんだけど、犯罪者を減らしていくって段階で精一杯なんだって。
『申し訳ありません、説明しなければいけない内容でしたので。
これから先は、楽しい話に集中できますよ。
まず、実際にseedを植えてみましょう。
通常、interfaceから通貨を使用してseedを購入して頂くか、イベントの報酬としてseedを入手して頂くことが基本となります。
今回はチュートリアルとして、seedを1つお渡しします。
ウィートさま、両手の平を上に向けて下さい』
「えっと、こうかな…?」
ついに、初めてのseedが貰えるんだね!
言われたとおりに手を上にして、両手で水をすくうみたいにしてみる。
まさか、零れ落ちるほど大きい種じゃないよね?
ワクワクしながら手の平を見つめていると、目の前が光り出してきた!
もうお約束みたいになってきている、キラキラな光の粒子が集まってくる。
手の上でちょっとずつ種の形に集まりだして来ると、一層キレイに見えてきた。
この電子生成を見るのは3度目だけど、こんなに間近で見たのは初めてだよ!
ツキノの時より、シュガーハウスの時より小さいけど、本当に目と鼻の先でキラキラ輝いている!
種が産まれるって、言葉にするとおかしな感じだけど。
僕の目の前で、間違いなく一つの生命が誕生しようとしてるよ!
…あれ?種って生命にカウントされる?
土に埋まって、芽が出てから生命になるの?
「きゅ~ま~」
あわわ。
変なこと考えてる間に、光が虹色になってきてる!
ツキノの声で我に返らなければ、ぼ~っとしたまま終わるトコだった!
今度は真剣に、じっと目の前の虹色の輝きに集中する。
瞬間、一際強く輝いて。
僕の手の上で、その存在を確かなものにした命の種。
小さな、新しいseed。
「これは、僕でも知ってるよ!
ひまわりの種だーっ!」
「きゅままー!」
『おめでとうございます。
ウィートさまの最初のe-plantsは、向日葵ですね』
あわーっ!
なんか、なんだかすっごく興奮する!
ひまわりの種だったら見た事あるし、僕の知ってる種なのに!
なんでこんなにテンション上がるんだろう!
初めてのseedだから?
むしろ、知ってる種だったから?
それとも、僕の手の平の上で、産まれた子だから…?
あわわ。
なんだか感情がごっちゃになって、平静では居られないんだけど!
一個。
一個だけ。
いま決めたことがある!
ひまわり畑。
モフモフガーデンで最初に造るのは、ひまわり畑にするっ!
この子と、この子の仲間でいっぱいにする!
たくさんのひまわりを育てることが僕の目標だよっ!
「うおーっ!
この子は、僕ががんばって育てるぞー!」
「きゅま!きゅままー!」
「うんうん。ツキノも、スズメさんも一緒にね!
目指せ!でっかいひまわり畑!
えい!えい!おー!」
「きゅむ!きゅむ!きゅー!」
『えい!えい!おー!
…ふふ。少し照れますね』
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