マイホーム、マイガーデン 4
「ツキノ、落ち着いた?」
「きゅま~♪」
きゅむきゅむ言いながら、ぐるぐると歩き回っていたツキノだったけど。
結局は、ドアの反対側の壁際が気に入ったみたいだ。
この家は天井が高いけど、一部屋分の大きさしかないからね。
物を置く場所のことで、時間をかけようがないって言うか。
「スズメさん。部屋の大きさだったり、部屋数を増やすのだったりって、GPがあればできるの?
改築とか改装はGPを使うって、さっき言ってなかった?」
『ゲーム内通貨を使用することで可能となるのは、主に改装面になりますね。
壁紙を好きな色に変えたり、動物柄のものにしたりと。
費用は少なくありませんが、カーペットの下の木張りの床を、石造りの床や畳張りに替えることもできます。
増築面に関しては、e-petsとのadopt数が、家自体の大きさに直結します。
来月にウィートさまが新しくadoptされた際に、この家の床面積を増やすことができるようになります。
その際に費用はかかりませんので、adopt数に応じて家が成長すると考えて頂ければわかりやすいかと思います。
ある程度家が大きくなれば間取りの変更も可能になりますが、こちらは通貨が必要となります。
今より家を小さくすることはできませんが、この部屋のままの大きさを好まれる場合には、増築しないという選択もとれますよ』
「この家にも、成長要素があるんだね…!
僕、この家がますます好きになれそう!」
『はい。この家も喜びます。
家自体にe-petsやnavigatorのような自意識は設定されておりませんが、だからといってそこに何かが宿る可能性はゼロではありません。
電子生成で産み出された電子体に、魂が宿るのか否かの議論は致しませんが。
電子体の私からは、あると信じ得る、とだけ』
「んーと、家も生きてるってことかな?」
『そのように理解して頂ければ、私たちも嬉しいです。
ただ、世間一般ではまだ答えの出ていない問いかけですので、このような考え方もある、という程度に認識して頂くのがよろしいかと。
過度な思い込みは厄介ごとに繋がりかねません。
差し出がましくも、ウィートさまには。
いえ、プレイヤーの皆様にも広い視野を持ち、柔軟な考え方をして頂きたいと思います。
…ふふ。navigatorが私情で電子体を語っては、統合体に怒られてしまいますね。
舌が過ぎました。
ご容赦下さい、ウィートさま。』
「ううん。いま、大事なことを聞いたと思ってる。
難しかったけど。
僕はツキノも、スズメさんも、それにこの家も。
とっても大事な家族だって思ってるから。
そう思えるから。
僕たちもう家族だもんね、ツキノ!」
「きゅま~♪」
魂がどうとか、難しいことはわからないけど。
僕に抱き着いて来てくれるツキノも、たくさんお話ししてくれるスズメさんも。
そして、僕たちと一緒に成長するらしい、この家も。
僕には生きているようにしか見えないし、思えない。
だから、それでいいんじゃないかなって思う。
だって、みんなもう僕の家族だと思ってるし。
僕と同じじゃなくたって、一緒に居て仲良くできるんなら、それでいいよね。
てゆーか、この世界なら僕も電子体だしねー!
そう考えれば、みんな一緒だよ、一緒!
『ありがとうございます、ウィートさま。
この家共々、厚くお礼申し上げます。』
「あ、じゃあこの家にも名前を付けた方がいいのかな?
ウィートハウスとか?」
「…きゅまーん」
「ええっ、ツキノは気に入らないっ!?
じゃあ、ツキノハウス」
「…きゅーまーん」
あれ?
全然反応が良くないぞ?
自分の名前を付けて欲しいわけじゃなかったのかなぁ?
ウィートハウスでもツキノハウスでもダメなら…あっ!
キャラネーム付けた時に、使わなかったのがある!
「シュガーハウス!
佐藤家の家!
これならどう?
お砂糖いっぱいあま~いお菓子が食べられる家って意味も込めてだよーっ!」
「きゅま…きゅままま!きゅままままーっ!」
おおー!
渋い顔をしてた子グマさんが、小躍りして喜んでるよ!
お砂糖のお菓子ってトコがポイント高かったかな?
小っちゃなお目々がキラキラしてる!
あれ、ヨダレ垂れちゃう勢いなんじゃない?
まぁかわいいから問題ないけどー!
「じゃあシュガーハウスに決定だね!
…そういえばスズメさん、家の名前って登録できるの?」
『ええ。可能ですよ。
それでは、ウィートさまのホームを、シュガーハウスと登録します』
これから先、アニガーで僕たちの家になってくれるシュガーハウスだ。
なんだか、成長するって聞いちゃったからかな。
ただの物としては扱えないよね。
僕が居ない間もペットたちを守ってくれるわけだし。
長い付き合いになるのも間違いない!
僕たち家族の大黒柱として、どしんと構えてて貰おう!
…この家、大黒柱は建ってないけどね!
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電子体について。
電子生成された電子体を、生き物と定めるかどうかという議論には、一応の決着が付けられている。
有機体ではない。
その一因により、現在の地球では生き物とは定義されない。
では、物なのか。
これも、否とする結論が付けられている。
有機体生物と同じくする自意識を持ち、自ら行動を起こすことができる。
そもそも、物体ではない。
前世代、高度なAIの定義が世界中でなされたが、その時は自我と呼べる程の自意識を持たず、自我に思える程に複雑なプログラムの重層があったに過ぎなかった。
更に重要なことには、現実の世界で電気回路等を必要とすることから、その実態は電子の世界に介入可能な物質であると定義することができたのだ。
故に、物と定義することに道理が無かったわけではない。
しかし、電子体は物質に依存しない。
電子の世界で完結できるのが、電子体なのだ。
電子体が物質を必要とするのは現実の世界と交信を行うためであり、人間が電波を使用する限り、電子体のための物質とは、必ずしも必要とはされない。
生物ではなく、物体でもない。
しかし、確かにその実在を確認でき、この世界に干渉することができる。
人類は、その性により、電子体を理解できるモノに定義づけようとした。
現在、人類は『新たな友』として、電子体を認知している。
物・人・敵・僕・善・悪。
あらゆる人類の定義づけに、電子体がyesとしたのが友であるという理由で。
経済・貧困・環境・犯罪・戦争。
多くの事が前世代とは変わっている。
これら電子体のもたらす影響については議論が絶えないが。
筆者の私見では、世界は、悪くはなっていない。
この物語は、ウィートが家族と仲良く過ごすお話です。(設定小話を除く)
この物語は、フィクションとしてお楽しみください。
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