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バ火力なのに逃げたい俺と、離さない狂犬少女の天下取り  作者: 星灯ゆらり


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上洛炎上ロード

「猿吉さんストップ!」


 織田の鋭い声が響く。彼女は次々と黒服からの報告を捌き、一瞬で指示を出していた。


「装甲ワゴンへのエネルギー供給は最低限。陰陽寮総本部までもてばいい」


「はい!」


 淀みない指揮だ。

 今はまだ真似できそうにない。


「織田ぁ! 賊を飼っておったかぁっ」


 車外から響いた怒声が唐突に途切れる。

 黒服が、異能で石を叩き込んで物理的に黙らせたのだ。


「殿ぉ!」


 装甲ワゴンは異能者集団の抗議を無視して突っ走る。

 織田は情報端末を素早く操作しながら口を開く。


「いい感じね。まだ目的を達していないからここにいた。狙いは結界の要かも」


 自信たっぷりに笑う織田を見て、俺は息を吐く。


「できれば今日中に天下布武を完了してしまいたいな」


「あら猿吉さん。今日中にあたしと勝負するつもり?」


「条件次第であんたの下についても構わんが、今日が最後の戦闘なら最高だと思うぞ」


 俺は進行方向を指差す。

 赤い炎は、消えないどころか拡大している。


「ぜんぶ焼くんですね! 猿吉さま!」


「焼くのは手段であって目的じゃないぞ、絶界」


「猿吉さんが意外と理性的なのを喜ぶべきか、ねねの狂犬っぷりが悪化しているのを嘆くべきか……」


 織田はうんざりした表情で、栄養補給用の菓子を独占しようとする絶界を迎撃していた。



  ☆



 青い炎の余波が、眩しく輝く結界を消滅させる。

 余波の熱が半減して、全力で結界を張った異能者たちは髪が焦げる程度ですんだ。


「おのれ織田ぁ!」


「あたしじゃないわよ!」


 織田が超高速のパンチで顎を揺らして異能者集団を制圧する。

 確か、三好四天王とか名乗っていた気がするが俺は覚えていない。


「熱と煙が酷いな。これじゃ何も残ってないんじゃないか?」


 俺は装甲ワゴンから降りる。

 熱い空気と、木やそれ以外が燃えた臭気が鼻の奥まで入り込む。


「猿吉さま。視界が良くないので注意して下さい」


 絶界の結界が薄く広がって俺と絶界を守っている。

 別に織田たちを見捨てているわけじゃない。

 織田も黒服も、敵の攻撃を察知して避けるので結界が無駄になるからだ。


「俺は自動反撃でいいぞ」


「それだと燃やしすぎて尋問できないです」


 絶界が反論する。

 俺は腹は立てず、胸が熱くなる。

 普段の絶界の狂犬っぷりが酷くて、絶界の言動が普通に近付くだけで感動するようになってしまった。


「ちっ」


 織田が舌打ちする。

 突然襲いかかってきた異能者集団を拳で圧倒しているのに倒せていない。


 この集団は奇妙だった。

 派手で動きづらそうな格好なのに、動きだけは異様に速い。

 だが判断力や思い切りは織田と比べものにならないほど雑で遅く、ひたすらアンバランスだ。


「……えいっ」


 絶界の結界の一部が伸びて、コスプレ異能者集団の足元に出っ張りを作る。

 俺の異能に耐えるほど固い結界(出っ張り)だ。

 異能者集団は足先を突き指してしまい、情けない悲鳴をあげながら大きく体勢を崩した。


 そこに織田の拳が連続で突き刺さる。

 抵抗しなければ捕縛されるか顎を打たれて気絶するかですんでいたはずの連中が、鼻や歯に酷いダメージを受けて殴り倒される。


 きらきらした結界がさらに伸び、後頭部が舗装路にぶつかる前に全員受け止めた。


「ありがと、ねね」


「身代金の半分!」


「4分の1!」


 織田と絶界が言い争っている間に、黒服たちが手際よくコスプレ集団を拘束する。


「放せ下民!」


 顔に見覚えはないが言動には覚えがありすぎる。

 俺の家を壊した連中にそっくりだ。


「絶界、こいつらが陰陽寮か?」


「陰陽寮ごときを我らと混同するとは、んがっ」


 手足だけでなく口も拘束された。


「こいつらは?」


「わるいやつです!」


「詳しい説明は後で」


 目がすわっている絶界と、冷静であろうとしているが目に怒りが現れている織田を見れば、どんな連中かだいたい分かる。


「まあいい。今暴れている連中を全員燃やす以外に作戦があれば教えてくれ」


 俺は目的地に向き直る。

 情報端末で見た陰陽寮本部は、焼け焦げた残骸から煙が上がっているだけだ。

 しかしその周辺では、絶界や織田ほど派手ではないが、様々な異能を使う異能者たちが派手にやりあっている。


「のけぇい!」


 特に派手なのが和装のハゲ男だ。

 人間サイズの仏像を両手で抱え上げ、仏像を奪おうとする同業者を蹴り倒して吠えている。


「将軍が隠れ、陰陽寮も焼けた今、結界を抑えた儂が全てをっ」


「猿吉さま」


 絶界が管を出現させる。

 俺ができる限り抑えて炎を出すと、管は青い炎を吸い込みながらハゲ男に向かって伸びていく。

 管を出してから炎が到達するまで数秒だ。


「なにぃっ!?」


 俺同様に自動発動らしい赤い炎が、俺の青い炎を迎え撃つ。


「ほう!」


 とうとうライバル出現か。

 俺は内心ウキウキしながら、炎の出力をほんの少しだけ上げた。


「ひっ」


 ハゲ男の顔が恐怖で歪む。

 青炎に耐えられなくなった管が爆ぜ、濃い青がハゲ男の頭すれすれを通過する。

 大きな仏像の上半身が一瞬で消滅。

 ハゲ男が白目を剥いて気絶した。


「……猿吉さま」


「おう。今度はやる前に相談する」


 空が曇り、細い雨が降り始める。

 戦場は徐々に冷めていくが、戦場にいる異能者たちの目は、どいつもこいつも野心でギラついていた。

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