57
―――異次元パスポート受付開始し始めた。
いや、めっちゃ忙しいな……!
ちなみに異次元ゲートのある部屋に俺はいて、手を繋いで異次元ゲートに入る要員だ。その側にはサンクさんがいる。
受付側には佐久間さんたち国家危機管理部から来てくれた人が対応してくれてる。本人確認書類等の書類の管理もあるから、そちらは俺は触らないことになった。
最初はやる予定だったんだけど、襲撃があったため不特定多数の人が来る最初の受付はやらないで、本人確認が終わった方だけやってね、ということだった。
ちなみに防犯も兼ねて垂れ流し配信しながらオッケーになっている。
「いやー。やっぱりかなり登録の人来てますねー。ここ東京とかじゃないのに、うちの県にわざわざ来てくれてありがたいです。
あと、もし酔い止めお忘れの方とかいましたら、たぶん今日だけ特別に〇〇薬品の方が来てくださってますのできちんと伝えてくださいね。異世界に入ったら動けなくなると逆戻りですからね。
それと近所のお菓子屋さん、山岸菓子店でディルス族の方が異世界の品物を使ったクッキーを委託販売してくれています。
まあディルス族の方がつくっているわけじゃなく山岸菓子店の方が作ってくださっているのですが、それも食べると酔いは少し軽減されるかもしれません。これは個人の体質によって変化があるのでわかりませんが、試してみてもいいと思います。
もしよかったら山岸菓子店の方のお菓子もなにか買ってくださると俺も助かります。異世界で保存食にもなりますしおすすめです」
【お菓子販売も始めたのか】
【〇〇薬品の人やるな】
【そこ遠いんだよな】
【俺は明日行くからホテルから配信見てる】
【まじかすごいな】
【宣伝しててえらいな】
【酔い止め忘れた人に現場価格で売る商機】
【地元にカネを落としていく】
「お、一人いらっしゃったので行ってきます。酔い止めは飲みましたか? 体調が大丈夫そうであれば異世界側でギルドの登録もこのまますると思います。では行きましょう」
手を繋いで一緒に入る。サンクさんも入る。
異世界側のギルドはアミール族と、あとは副ギルドマスターのガラットさんが来てくれてる。少々急だったらしいから、そのうちガラットさん以外が来るみたいなことを言っていた。
行商人さんもそのまま行商してるみたい。チャンスを逃すな! みたいなことを叫びながら設営してた。
「……いけそうですね。では、ここからは異世界側です。何があるかわからないです。自己責任になりますので、気を引き締めてやってくださいね。それでは、がんばってくださいね。怖くなったらすぐ戻ってきてもいいので、気をつけていってらっしゃい」
―――俺達はまた受付に戻る。
ゆっくりする間もなく、また一人受付する。
俺達が一人一人連れて行くので、俺の準備ができ次第ドアを開けて迎え入れる形を取っている。
同じ説明をしてまた送り出す。……これの繰り返しだ。今のところ三人ほど魔力酔いで動けなくなり戻ってきた。
そういう人は山岸菓子店のお菓子を進めておいた。異世界のお菓子なので少し身体に魔力が入るかもしれないから今日よりはマシになるはずです。と伝えておいた。
【忙しそう】
【同じこと言わないといけないのつらい】
【わかる】
【でもその人にとっては初だからな】
【それはそう】
【魔力酔いやばそうなひといるな】
【顔色とんでもない状態で戻ってくるもんな】
―――やっと昼休憩だ。
【一時間二十人くらいか】
【さっくりやって一人三分くらいだもんな】
【八時から受付してずっとこれきつすぎる】
【サンクさんと田川さんで分担するのはどうか】
【それいいな】
【一人は雑談しようぜ】
「仕事ですからねえ……あー、お腹すいた。サンクさんもお疲れ様。はい、お弁当……。弁当朝買っておいてよかったけどこれ毎日だときついな。朝出るのめんどい」
「ははは、ありがとうございます。いただきます。
人が多くてびっくりしますね。みんな無事でしょうか……?
武器の持ち方も何もわからない人を送り出すのは心もとないです」
「ギルドで新人研修みたいなのしてくれるんじゃないっけ?」
「あれは強制ではないんですよ……。それにあちらのお金が必要なので、あまり受ける人はいないのではないかなと思います。なのに新人は自分の力量を知らないので無茶をする人もいるんですよ」
「あぁー。俺なら行ける! とかで研修しないでやる人とかもでてくるということか」
「そうです」
……なるほど。
【武器の持ち方から教えないといけないわけか】
【俺ならいけるって人まじいそう】
【そういうのすぐ死ぬんだよな】
【普通の日本人武器持ったことある人いないからな】
【金ないから研修うけれなそう】
【授業で柔道選択した】
【研修受けれないのやばくね?】
「ですよねー。うーん」
最初新人研修みたいなのをしてくれる人探す? 少しでも異世界行ってすぐ死ぬみたいな危険がないようにしたいよね。
「あ、サンクさん新人監督官するのはどう?
んー、いやでも、サンクさんはもう会社の人事に入ってるからそうもいかないよな……」
ん? そうだ。サンクさんのパーティーの人、合コンしてたよね? あれどうなったの?
もしこっちにいたいとかあるのなら、新人監督官みたいのしてもらうのありかもだよな。
「そういやさ、サンクさんのパーティーの方と佐藤さんの同僚の天女の方たちと合コンしてたよね? あれどうなったの?
もしうまくいっててこっちの世界にも居場所欲しいとかあるなら、武器の持ち方とか体の動かし方とか、魔物の知識とか、ざっと新人研修みたいな感じの監督官とかしてもらうのありかもと思うんだけど。
こっちのお金で依頼料貰うとかしたらさ、家住むときに家賃になるし」
【合コン!?】
【ねえええええ!!! 詳しく聞きたい】
【天女の方って!?】
【知らないところですごいことになってた】
「……おかげさまで先の天女殿たちとの食事では、うちのパーティーの者たちにも破格な幸せが訪れました。
報告せずに申し訳ない。俺がこれからのこと聞く前に二人ともあちらに戻ってしまって……何分やつらも初めてのことで、大慌てであちらに帰って今の行商の専属依頼を違うパーティーに変えるというギルドへの届け出や、後釜のパーティーの選出などで奔走していると思います。
俺もたしかに、最初、なにも後のことは考えずに行動してしまったなと、ほんと田川さんにはお世話になりっぱなしで……」
【うまくいってるううう】
【サンクさん先日はありがとうございました】
【本人いねえか?】
【しゅがみお:サンクさぁん】
【これ佐藤さんでは……?】
【田川さんに足向けて寝られないんじゃないか】
「ああ、うまくいったんだねえ。よかったよかった。ご本人さんきてるっぽいよ。休憩時間なのか。うまくいってみたいでよかったですね、お幸せになってくださいね。
じゃあ、新人監督官みたいなのお願いしてもよさそうだねー」
おっと、佐久間さんから連絡が来た。
先日の襲撃が場所がどこから漏れたのかがわかったらしい。
「ちょっと失礼」
この話題はさすがに配信の前では出来ないから、聞こえないようちょっと家側に移動する。
襲撃の経緯はこうだった。
1、佐久間さんがお寿司屋に予約、ここで念のため獣人の方だけど大丈夫ですか? と確認する。騒ぎになるといけないので内緒でお願いしますねと伝えてはいたようだ。
2、責任者オッケーだす。職人さんたちやスタッフさんが異世界の方の初めての外食に選ばれたと奮い立つ。
3、スタッフさん親御さんに嬉しくて伝えてしまう。
4、親御さんがご近所さんに話す。うちの子の職場が異世界の人に選ばれたらしいのーすごいわー! みたいな感じらしい。
5、ご近所さんたちの間で近場に異世界の人くるらしいと話題に。
6、ご近所さんのどなたかのお子さんがSNSに、噂で聞いたんだけど○○日に近所に異世界の人来るらしいよーほんとかなー? みたいなことを書く。
7、襲撃者の人たちが執念で見つけ出す。
8、襲撃者の人たちがお寿司屋さんの近場の観光地と帰る経路を調査して、一か八かで網を張る。
らしかった。
なるほどなー。ギャンブルでもあったのか。
逆に良かったわ……。
こちらサイドから情報が洩れてたわけじゃなくてよかった。俺言ってないしな……。
サンクさんとかもBランクなのもあってそういう護衛の経路のことは絶対口に出さなかったもんな。
―――さっさと増毛出せるようにどっかと交渉しないとな。




