第24話
本日はもう1話22時に投稿予定
国王陛下の印章が入った手紙を見下ろして考え込んでしまった。ユリウスが見せてくれた手紙には、先日の件の処遇が記されていた。
「落ち込んでるの?」
心配気な声に顔を上げると緩く首を振った。
「そうじゃないわ。彼のしたことは簡単に許せる事じゃないし、仕方ないと思っているわ。」
「じゃあ、なんでそんなに悲しそうな顔をしているの?」
ユリウスの言葉に軽く唇を噛んだ。
「……私が、彼を変えてしまったのかしら。」
前世、私がいなくなった後の事情等は知らない。
けれど、どこか壊れたような彼は異常だった。
「君のせいじゃない。」
落ち着かせるように肩を撫でるユリウスは、私の隣に腰を下ろして深く息をついた。
「彼は、断ろうと思えばそうできた。エリシアを想っているなら、あんな事はしない。」
カイトは、コーネリア家を敵視していたケーリオス公爵家に取り引きを持ち掛けられたそうだ。
捕えられ、大人しくなった彼は全てを話したらしい。
あの夜会の日、レイリーンは父親の名を使って私をユリウスから引き剥がした。「彼女を失ったユリウスを慰めたらいい」そう言ったケーリオス公爵の話を鵜呑みにしてしまったのだ。
それを聞いたユリウスは、「頭が悪い令嬢だからマークしていなかった」と悔しげにしていた。だからこそ彼女が利用されたのだろう。
そして、それはカイトもだった。
こんな怪しい取り引きを受けるなんて。昔の彼はもう少し慎重な人だったと思っていた。
「気に病む必要は無いよ。彼らは自分の意思で君を陥れた。重労働に修道院。自業自得じゃないかな?命があるだけマシだと思って欲しいね。……まぁ、とは言っても、エリシアは優しいからなぁ。」
少しむくれた様子のユリウスは、以前より裏の顔を見せてくれるようになった。今回の処遇も、少し生ぬるいのではと口を尖らせていたくらいだ。
「……思うところがあるのは事実だけど、そうね。気にしていても仕方ないわね。私も、もうすぐ母親になるんだもの。強くならなきゃ。」
気分を切り替えるようにソファに深く腰掛ける。
そんな私を見て、ユリウスは呆れたように笑う。
「エリシアはもう少し大人しくしててよ。僕は心配で仕方がないよ。」
困ったように呟かれた言葉にフッと笑う。
「初めはそのつもりだったんだけどね。誰かさんに影響されたのかしら?」
何もせず穏やかに生活するつもりだった。田舎に引き篭って花を育てるのもいいなと。
それなのにいつの間にか隣にいたいと願う人に出会って、彼の守るこの国のためになにか出来ないかと思っている。
覗き込むように首を傾げれば、青い瞳が細められる。
「僕のせいだって言いたいの?」
じゃれるように私の肩に頭を擦り付けてくる。
「そんなんじゃないわ。」
擽ったくて笑いが漏れる。サラサラの金の髪を撫でてあげれば、「ふーん」と機嫌のいい短い返事が返ってくる。
「ふふ、明日は休みでしょう?久しぶりに街へお出掛けでもしましょう?」
「ふふ、いいね。魔道具と魔法書と、あの怪しげな骨董品店も見たいなぁ。」
ウキウキとした子供のような顔に、いつまでも変わらないなぁと思う。
「いいわね。楽しみだわ。」
私もユリウスに微笑むと、優しい口付けが降ってくる。
満足気に鼻を鳴らした彼は、ご機嫌に明日の予定を立て始めた。愛おしいその横顔に、そっと重ねた手をゆっくりと握った。




