第25話
「ラルクー!……もう、あの子ったらどこに行ったの?」
白い息を吐いて不満を口に出す。
冬は終わりとはいえ、まだ冷たい空気を吸い込むと顔を撫でた風が肌を刺す。
ストールを羽織ってすっかり日が暮れた外に出ると、メイドと一緒に花を摘む小さな姿を見つけた。
「ラルク!」
名前を呼ぶと、ユリウスに似た青い瞳をこちらに向けたラルクは、ぱあっと笑顔になりその小さい足で走り出す。両手を広げて迎え入れれば、ぽすっと腕の中に収まった。
「ラルク。何をしていたの?」
「かあさま。このお花ラルクからのプレゼントなのです。かあさま、この花すきって、とうさまが。」
小さな手で差し出してきたガーベラを受け取り、サラサラの銀髪を撫でてやれば上機嫌に笑った。
「そうだったのね。ラルクは優しいわね。ありがとう。」
「どういたしまして!」
「ほら、冷えるわ。父様も心配するからお部屋に戻りましょうね。」
そう言って手を差し出すと、冷たく冷えた手がぎゅっと握った。
◇
私とユリウスの間に生まれた第一子、ラルクは先日で三歳になった。可愛らしい顔立ちをした男の子で、ユリウス曰く私に似ているらしいのだが、どう見てもユリウス似だと思っている。
ユリウスはラルクにも大概甘いのだが、最近は私にベッタリなラルクが気に入らないらしく、「僕は仕事しなきゃいけないのに」と拗ねている。
全く、自分の息子にまでヤキモチを妬かないで欲しい。
今日もそんなこんなで、私と同じベッドで寝ようとしたラルクを引き離し、大人げないユリウスはご機嫌だ。
「はぁ、会いたかったエリシア。」
「ふふっ、おかしな人。いつも会っているじゃない。」
私が笑えば、少し不満げにムッとしながら抱き寄せる。
「そんなんじゃ足りないよ。僕は仕事がなければずっと触れていたいくらいなんだよ?」
「息子を寝室から追い出すくらい?」
「そうだよ。自分の息子とはいえ、君の腰にずっと抱きついているなんて、すごく羨ましいよ!」
「あの子はユリウスを真似しているだけよ。」
宥めるために頬を撫でると、気持ちよさそうに擦り寄って「そうかもしれないけど」と言っている。
結婚してからもうすぐ五年経つというのに、ユリウスはいつまでも新婚のような態度のまま。
私が少し体調を崩せばすぐさま仕事を休み看病をし、仕事から帰ったユリウスを出迎えれば熱烈な抱擁が返ってくる。
恥ずかしげもなく人前でもするものだから、屋敷の使用人にとっては日常の光景となっていた。
「機嫌直して。仕事を頑張るユリウスは素敵よ?」
そう言って自分から唇を軽く重ねると、すぐにお礼が返ってくる。そのまま額に、頬に、瞼、鼻、と唇を落としたユリウスは、最後にまた唇に戻って顔を離した。
「仕方ないなぁ。今回は許してあげるけど、いつもこの手が使えると思わないでね。」
少し不満気な顔に「ありがとう」とクスクス笑って答える。ユリウスはそう言っているが、いつもそれで許してくれる。私の考えが分かっていながらも、許してくれなかったことは無いのだ。
可愛らしい様子に、もう一度口付けを送って明日に備えて寝ようと、ベッドまで手を引いた。
横になった私の隣に体を滑り込ませたユリウスは、そっと私の体を抱き寄せた。
「僕の腕の中にいるエリシアが一番可愛い。」
さらりと伸びてきた髪を撫で、微笑む彼に胸が熱くなる。
「ふふ、いつも言うけど、それはなんなの?」
「エリシアは僕のものってこと。」
いつもの疑問を投げかければ、聞き慣れた答えが返ってくる。きゅん、と胸がなって、相変わらず私も彼に弱いと自覚する。
「そう。だったら貴方も私のものだわ。」
「それは嬉しいね。」
へらっと笑ったユリウスの背に腕を回して、落ち着く匂いに目を閉じた。「おやすみなさい」と言い合ってお互いの体温を感じながら眠りについた。
ここまで読んでくださりありがとうございます(˵ ͡° ͜ʖ ͡°˵)
無事書籍化できましたのはここまで付き合ってくださった皆様のおかげです( ›‹ )
気になった方は是非、電子書籍も見てみてください!
表紙も凄く綺麗に仕上げて頂きましたので♪
このキャラもっと見たかったなどあればコメントくれると嬉しいです!
番外編も読んでくれる人がいれば、書こうかな……と。




