第7話 基本的に何も考えてない
「サロ様!」
「長老様!」
「長老?」
奥から足を運んできた高齢の鳥人族は長老と呼ばれていたので、おそらくはえらい鳥人族なのだろう。
「長老様! 人がここに入ってきているので、撃退しようと……」
「……そなたらの用事はなんじゃ?」
「お話をしてくださるのですか?」
さきほどまでなかなか会話にならなかった鳥人族だったが、急に会話になってルナルデッタが驚いていた。
「長老! なぜそんな人間と!」
「そなたらは、もっと考えねばならん。人間だけではないじゃろう。猫人族もおるし、普段人と一緒におらぬ狐人族までおるし、しかもこちらの方はタニア国の現女王じゃろ」
「ご、ご存知でしたか」
「話は聞いておる。カトリーネ殿にも迷惑をかけた。わしが見ておらぬ間に勝手なことをしておるな。何度言えば考えて行動できるのじゃ」
「ルナ様!」
「カトリーネ! 無事でしたか……」
サロの後ろからカトリーネが出てきて、ルナルデッタと抱擁する。
「よかったです」
クレアロッテもその様子を見て安心していた。
「皆様ご迷惑をおかけしましたな。本日はもう遅くなっておりますので、お休みください。明日詳しい話をいたしましょう」
「ずいぶん話が早いな」
二一はほかの鳥人族が聞き分けが悪いのに対して、この長老のサロだけ妙に話が早いのが気になった。
「わしも昔こうでした。鳥人族はどうも若いころは思考が単純でな。種族の数が少ないのも、短絡的に行動してしまい、死亡してしまうことも多いからじゃ。200年前の戦争もただ単に人間が気に食わないという理由で魔物の味方をしてしまい、結果的に人から敵対されて、今のような位置になっておる。人間側から話し合いがあるのであれば、わしとしてはいい話じゃ」
「なるほど。年をとると丸くなるというわけか」
「一応具体的な話はもうカトリーネ殿から聞いておるから、明日正式に話をいたしましょう」
その日は長老の用意した宿があったが、大きい部屋が1つだけだったので、二一は1人だけ小さな小屋のようなところにいた。
歩が二一のほうに来たがってはいたが、万が一のことを考えて、ほかの女子メンバー(ジャンマリア含む)は全員同じ部屋にいた。
「可能性があるとすればあっちだろ」
サロのことは二一は信用していた。
鳥人族の村で長老である彼が自分たちを襲うことは簡単であったはずだし、わざわざ話し合いを設ける必要もない。
それでも万が一はある。襲われるとすれば、一番戦闘力のなさそうなルナルデッタなので、ジャンマリア含めて全員をあちらに置いておいたのである。
「まぁ、とりあえず話はできそうだし、プチ狐さえいりゃなんとでもなるだろ」
二一は安心して眠りはじめた。
「ふぁ~? ん?」
基本的に二一は寝つきがいいので、あまり変な時間に目を覚ますことはない。
なのに、目を覚ましたらまだ外が暗い状態で、それがすごく気になった。
(やっぱり一応警戒してんのかな)
違和感はあったものの、まだ眠気があったので、また寝ようとする。
「寝れないなぁ」
ところが、まったく眠くならず、違和感が完全にぬぐえなくなった。
「おかしいな……、むしろ気分がよくなってきてるというか……。目覚めがいいというか?」
「………襲える……か?」
「長老は基本的に俺らのことを……」
「人間なんて……」
すると外から声が聞こえてきたので、二一は警戒する。
「覚悟! 人間など!」
ダダダダダダダ!
二一はサブマシンガンをぶっ放した。
雷属性の拳銃は、狭い入口を通して3人ほどいた鳥人族を襲った。
「ギャー!」
「なぜ……」
「う、動けない……」
狭い場所では鳥人族の空を飛べる能力も素早さも全く生かせず、あっさりと沈黙させられてしまった。
「なんだよ……、襲い方も雑だし、襲う相手も雑だろ……」
まさか鳥人族を圧倒している自分を襲ってくるとは思わなかったし、そもそも襲いに来る可能性そのものが低いと思っていたので、二一としてはあきれるしかなかった。
「何事だ! ああ、貴様何をした!」
騒ぎを聞きつけ鳥人族が何人か出てきて、様子を見て二一に向かう。
「いやいや、どう見てもこいつらが襲ってきたんだろうが。ほら見てみろ。手になんか持ってるだろ」
二一は1人の手を開いて、粉のようなものを持っているのを見せた。
「これは……しびれ薬……、なぜこんなものを……」
「大方俺に使うつもりだったんだろうが、残念ながら俺にはそういうタイプの技は聞かないんだ。ちゃんと下調べをしとくんだったな」
「くそ……、人間はこういうものに抵抗力がないはずでは……」
「だから、そういう前提で動くから間違えるんだ。さて、この件は長老に話させてもらうぞ。いい条件がもらえそうだからな」
「くっ」
「まったくたわけものが。こんな単純な手段でなんとかできるのであれば、そもそもこの村にこれておらぬじゃろう……」
「二一ちゃん!」
「二一さん!」
「二一様!」
「二一殿!」
「……くー」
歩、クレアロッテ、ルナルデッタ、カトリーネが騒ぎを聞きつけて外に出てくる。ジャンマリアは余裕の睡眠状態で、歩の頭の上で寝ている。
「大丈夫大丈夫、心配すんな。一応警戒はしてた。だから、長老さんも気にすんな。明日の話し合いを楽しみにしてますよ」
「……、仕方ない。明日の会議はフレードリク様に合うことは前提にお話ししましょう」
「長老!」
「お前らが悪い! もうこれ以上わしを苦労させるな!」
サロの怒りで、鳥人族は完全に黙ってしまった。
「命があるだけでもありがたいと思え。命を狙っておいて、命があるなど奇跡なのだ」
「ですが……」
「頼む……。これ以上鳥人族の数が減ってしまっては……本当に魚人族同様絶滅してしまう……。まだ小さきものもおるのじゃ……。もう少しでよいからいろいろ自粛してくれ。わしの用の年を重ねてから後悔してほしくないのじゃ」
「……長老……すみません」
サロが頭を下げてさすがに好戦的な鳥人族も鞘を納めるしかなかった。
「さて、それでどうなるんだ?」
「はい、今からわたくしがご案内いたします。ただ、非常に気難しい方ですので、会えるかどうかは私もわかりませぬ」
「鳥人族と竜人族は同盟関係にあるのではございませんか?」
「ルナルデッタ殿。それは間違いでございます。私たちが竜人族のいらしたこの森に、人を入れぬよう守ることを条件に住まわせてもらっているだけです。なので、立場はわたくしたちのほうが下です」
「なるほど……」
「竜人族の人嫌いは私たちの比ではございません、正直に言いますと、顔を見ることだけでも嫌がられます。ですので、私にできることはご案内までです。そこからはどうしようもございません」
「まぁしゃあないか」
「お話をさせてさえもらえれば、何とかなるはずです」
「よろしければ私から話をしてみます」
「お姉ちゃんと一緒に私も行きますです」
「亜人の方が味方にいるのは心強いですね。亜人ならフレードリク様も大丈夫なはずです」
「ああ、じゃあまずは頼むぞ、折れ耳」
「は、はいです!」
クレアロッテはかなり声を高くして返事をした。
基本的にある程度なんでもできる二一に頼られるのが珍しかったので驚きもあったようだ。
「では、ここから入れますので。すいません、フレードリク殿!」
「……なんだ?」
洞窟のような場所につくと、サロが声をかける。すると、中から低い声が返ってきた。
「タニアから亜人の方がご挨拶に来られました。会っていただけますか?」
「……本当に亜人だけか?」
「……入られるのは亜人の方だけです」
「なら構わない……。中に入ってもらってくれ。あまり訪ねてもらえることも多くないから楽しみだ」
「では、お3方、中に入ってください」
「ではルナ様、行ってまいります」
「私も行ってきますです」
「カトリーネ、ロッテちゃん、気を付けてくださいね」
「私もご一緒するのでございます。ご心配なさらないでございます」
そして、カトリーネ、クレアロッテ、ジャンマリアが竜人族の住む洞窟に入っていった。




