第6話 やるならやられても仕方ない
「あのー、二一様、大丈夫ですか?」
鳥人族の3人はきちんと羽を拘束して、飛べないようにして、徒歩での案内になっていたが、その過程の道は全く整備されておらず、凹凸も激しかったり、木の枝などが進路を妨害している場所も多かった。
その状態で、人を1人運んでいる二一を心配してルナルデッタが声をかけたのである。
「別に重いとは思わん。さすがに折れ耳やプチ狐よりは重いけどな」
「それは当たり前でございます。大きさが違いますのでございます」
ちなみにジャンマリアはいつもは二一の頭の上にいるが、さすがに気を使って歩の頭の上にいる。
「二一ちゃん、私はっ?」
「お前は見た感じ軽いだろ」
「そうだよねっ」
「あのー、別に私重いかどうかは聞いてないんですが……」
「ご主人様、もしよろしければ、私の念力を使いましょうか? だいぶ楽に歩けますよ」
「ジャンマリア様、よろしいですか? では……」
「だめだ。俺がやる」
ルナルデッタがジャンマリアの提案を飲もうとしたが、それを二一が止めた。
「二一様?」
二一にしては珍しく激しい口調であり、歩ですら驚いているところを見ると、二一がこのような止め方をするのは珍しいのだろう。
「一応言っとくが、このプチ狐は存在自体がチートみたいなやつなんだ。頼るのは最低限にするべきだぞ。あまり便利に使いすぎるといなくなったときに困る」
「存在がチートって、二一ちゃんがいうセリフでもない気がするけどねっ」
「プチ狐とは意味合いが異なるだろ。こいつのステータスは本当にやばい。近々セーレンが滅ぶ出来事があっても、こいつとあのニート狐は生き残りかねんぞ」
「ニート狐とはジャンルカのことでございますか……。ある意味狐人族はみんなそうでございますが」
「とにかく、プチ狐には俺は頼らない。さっきみたいに、盾みたいな使い方でいいんだ」
「神様を盾扱いとは二一さんは大胆ですねです……」
「とにかく、プチ狐はあくまでもやばいときの最終手段に留めるべきだ。むしろ神様の扱いとしては俺のほうが正しい」
「ご主人様がよろしいのでしたら、私は何も言わないのでございます」
ジャンマリアも一応提案しただけなのか、すぐに引き下がる。
「そろそろつきます。ライトを消してください」
そんなこんなしているうちに、どうやら目的地についたようで、歩がライトを消す。
だが、ライトを消しても、視界は良好だった。
そこには、松明があって、きちんと明るくなっていたのである。
あまり科学的なものは見当たらず、住宅らしきものがツリーハウスのような感じで設置されていた。
「あ、お帰りなさ……、人間!?」
「3人が捕まっています! 人間にとらえられたのか!」
「やばいぞ!」
そして一歩入ると、二一たちを襲ってきた3人をやや幼くした鳥人族が十数人おり、二一たちと捕まっている3人を見て大慌てしはじめた。
「おい、ちゃんと説明をしてくれよ」
「も、もちろんだ。おーい、みんな!」
3人が必死に説得に入った。
「あのー」
10分ほど待っていると、3人の鳥人族が申し訳なさそうに二一に話しかけてきた。
「どうだった?」
「とりあえず問題ないです。ただ、ここに人が来ることはほとんどなかったので……」
二一たちは周りを見渡したが、どう見ても歓迎のムードではない。
周りからのするどい目線が飛んできて、悪い意味での注目を浴びている。
まだ亜人側であるクレアロッテとジャンマリアはその目線を受けていないが、3人はかなり激しい目線を受けていて、その中でもとりわけ二一への目線が激しかった。
「…………」
二一はその目線を受け流すこともなく見返す。
二一は独特の癖の強さから、無視をされることもあったが、割とみられることも多く、そうなると、特に何かを言い返すわけでもなく、睨み返す。
そうすると、たいていの相手は自ら目を逸らしてしまう。これは二一が見られているから、何かあるのかと思い、睨み返すだけである。特に意味はない。
「……なんだその目は!? この平和な村に人が入ってきているだけでも許されないことなのに、そんな態度をとるとは!」
ところが、その二一の態度が若い鳥人族には気に食わなかったようで、1人の鳥人族が激昂する。
「あんたらが俺を見てるから見返しただけだ。なんでそんなことで怒ってんだよ」
「反抗的な目をしてるからだ! そんな態度で村の奥に行けるとでも思っているのか」
「反抗的な目なんてしてない。あんたにそう見えるってことは、どこかで俺を悪い目で向けてるから、そう見られてるかと錯覚するんだ。予測と態度だけで、俺の考えを決めてんじゃねぇよ」
鳥人族は体格は人より少し大きいくらいだが、羽があるので、実際よりも大きく見える。
そんな相手でも二一は一切ひるむことはなく見ている。
「調子に乗ってるんじゃないぞ!」
二一としては正論を返しただけなのだが、どう考えても煽りにしか聞こえないセリフで相手の怒りは増幅するだけだった。
二一はたまに教師に説教されると、このような返しをして、困らせることも割とあった。
「人間は出ていけ!」
教師が相手であれば、注意されたりはするが、暴力や暴言は吐いてこない。
だが、鳥人族はそうではない。怒りのあまりに二一に高速で突撃してきた。
鳥人族という種類は、空を飛べる能力と、亜人でもトップクラスの速度が自慢で、戦闘力は非常に高く、その能力に彼ら自身が自信を持っている。
実際に人と1対1で、細かい作戦や戦略なしで戦えば、鳥人族が負けることはまずない。
自分たちの中でも強い鳥人族が負けたとは言っても、負けた鳥人族は3人で相手は人を含めて5人。何か卑怯な手でも使ったのだと思い、不意を衝いて戦えば負けるはずなどないと思っての行動であった。
「二一様!」
ルナルデッタが叫び、鳥人族は二一が貫かれる姿を想像した。
ガキン!
「な…………」
だが、そのするどい突進は嘴の部分が二一が取り出したドゥンケルハイトの剣の部分の部分に止められていた。
「単純な突進攻撃に、狙う位置も心臓の位置か……。本当に何も考えてないな」
二一はただ剣を自分の前に置いただけである。
二一がさきほどそこそこ苦戦したのは、攻撃こそ単純だったが、遠距離からの陽動と素早い動きがあったからこそである。
若い鳥人族なので、速度こそ上ではあったが、選択肢が1つしかない以上は、簡単に読める。
とはいっても、その威力はかなりのもので、衝撃は強かった。いくら鳥人族の攻撃が読めたとはいえ、万が一読みが外れていれば命の危機にあることに対して、それだけ自信をもって対応できるのはさすがである。
二一は自分の考えと心中できるからこそ、迷わないのである。よく考えている人間というのは、逆にうまく行動できないこともあるが、二一はそこが違うのである。しっかり考えてとる行動というのは、結果的にシンプルになるのである。
「あんたらの考えもわからんでもない。だが、一応こっちは話し合いに来てるのに、そっちから問答無用で殺しに来てるってことは、それなりの覚悟はあるんだろうな?」
二一はドゥンケルハイトに氷の属性を発動させる。すると嘴から順番に氷漬けになって、地面に叩きつけられる。
「何をする!」
すると別の鳥人族がまた激昂する。
「何をするはこっちのセリフだ。いきなり殺しにかかってきて、返り討ちにされてんだ。責任はこいつにある」
「に、二一様、ご無事なのはうれしいのですが、あまり揉め事は……」
歩はもとより、クレアロッテ、ジャンマリアは二一の行動に慣れつつあったが、ルナルデッタはどうも本来の性格からから、二一の行動にいまいち安心できない。
今の表情は二一がけがをしなくてよかったといううれしさと、揉め事になりそうな不安感が入り乱れた表情になっていた。
「ピッキー、別に喧嘩をしようとは思ってない。だが、立場は対等であるべきだ。ちゃんと話はする必要がある」
二一も別に戦いたいわけではない。ただ、話し合いをする上では最低でも対等であるべきだと思い、絶対に一方的な話し合いは嫌だったのである。
「話し合い? 敵対する人間がいきなり同志を3人捕まえてきたら、信用などできるか。3人が大丈夫だといっても、疑うのは当然だろう」
なるほど鳥にしては理論的な意見だと二一は考えた。
例えば人間側の目線で、魔物が自分たちの知り合いを3人捕まえて自分たちの住処に入ってきて、その魔物が大丈夫だよ、と言ってきたようなものである。すぐにはいそうですかというほうがどうかしている。
「だがそれでも俺はこっちから手は出していない。理屈としてはわからなくもないが、いきなり殺しにかかってくるのは、俺が殺し返しても文句は言えないだろう。魔物じゃないんだ。種族が違うとはいえ、会話がちゃんとできる関係なんだから、話し合えよ。一応3人を殺さずに帰しているし、そういう話も3人からあったはずだ。前提がまず違う」
「1人を氷漬けにしておいてよくも……」
「殺してないだけありがたいと思えよ。こっちにも全く責任はないとは言わない。だが、お前らにも全く責任はないとは言えないだろ。今回はタニア国の姫様まで連れてきているんだ。話し合いをしようじゃないか」
「しかし……」
「何事じゃ騒々しい」
すると、明らかに年老いた鳥人族が奥から出てきた。




