第4話 苦戦(相対的に)
「おら! これでもくらえ!」
鳥人属は自らの羽を飛ばし、ルナルデッタを狙う。
「そうはさせないでございます」
だが、ジャンマリアがルナルデッタの前に立って羽をそのまま受ける。
キン、キン。
気もえぐり取られる攻撃力だが、そこはさすがの防御力のジャンマリア。刺さることもなく、まるで金属にでもあたったかのような音をして、普通の羽のようにふんわり落ちる。
「プチ狐。ピッキーのことは頼んだぞ」
「お任せくださいでございます」
ジャンマリアにルナルデッタを任せて、1人1体の鳥人族を相手にする。
「ちっ、硬いやつが味方についているのか。ならば先にお前らから倒してやる」
ジャンマリアの防御力を見て、鳥人族の3人は完全に攻撃対象をシフトする。
「そう簡単にはやらせるわけにはいかない。こっちにも都合があるからな」
二一は高く空を飛ぶ鳥人族を相手に、情報通を使用した。
『鳥人族』
人間と同等の体格を持ち、羽とくちばしを持つ亜人。
鳥の種類によって、タイプは異なるが、全体的に攻撃力も防御力も高めで動きも素早く、空からの攻撃ができるのが他の種族にない強みである。
基本的な攻撃手段はくちばしか突進攻撃といった近距離向きだが、羽を飛ばせるタイプの鳥人族もおり、そのタイプは遠距離からの攻撃を可能にするため非常にやっかいである。
「ということは、やっかいなタイプか」
情報通により、鳥人族を理解したが、敵対している鳥人族は面倒なタイプであることを理解し、少し面倒な表情になる。
「二一ちゃん、どうしようか」
鳥人族は常に高い位置からの攻撃をしてきて、こちらの攻撃が当たらない。
二一のドゥンケルハイトも、サブマシンガンも射程から考えると、空高く飛ぶ鳥人族に攻撃は届かない。
「はっはっは、どうしたどうした」
羽を飛ばしつつも、素早く地上に降りてきて激しい突進攻撃を繰り替えす相手に、さすがの二一も苦戦していた。
鳥人族の攻撃は、ある意味では単純な攻撃で、遠くから羽を飛ばすか、近くから突進するかしかない。
だが、それだけに逆に戦略をたてづらい。
特に攻撃に追加効果があるわけでもないので、偏屈の特性もあまり役に立たず、単純な攻撃ながら規則性もないので、読むこともできない。
ある程度考えて行動するタイプの二一にとっては、戦略も何もなく、突っ込んでくるのが、一番やっかいなのであった。
相手の攻撃そのものは回避は難しくなかったが、このままでは不利になっていくことが見えていた。
「……相手が上にいるのは不利だな。あいつより上にいければ……、あ!」
二一は自分の発言で何かを思いついた。
「おい折れ耳、耳を貸せ」
「な、なんですかです」
「あのな……、ごにょごにょ」
クレアロッテにこっそり耳打ちをして何かを話した。
「大丈夫ですかです?」
「まぁなんとかなる。こいつを試すいい機会でもあるしな」
「それはなんですかです?」
「ブーメランだよ。ここまではほかの2つの使い勝手が良かったからほとんど使ってなかったが、ここなら使える。エリカから買った武器だ」
二一はいたって普通のブーメランを取り出した。
剣と銃でほとんど戦っていた二一は、これを使うことはなかったが、もともと投擲武器も二一の魔法戦士のスキルに入っているもの。その多様性を改めて生かすことになるのであった。
「何をごちゃごちゃ話していやがる!」
遠い距離からの激しい攻撃は続いていて、必死に歩が受けていた。
「そんなに気にするな。新しい武器をみせてやるから」
そして二一はブーメランを取り出し、鳥人族に向かって投げる。
「はっはっは、なんだそれは攻撃か?」
ブーメランの軌道はゆっくりでスピードも遅く、鳥人族は笑いながら回避する。
「悪いが、俺が攻撃してる間、何とか羽の攻撃を回避してくれ」
「わかったよっ」
歩に回避を任せ二一はひたすらブーメランを投げる。
「はぁ……。そんなの当たるわけがないだろう。もういい、一気に行くぞ」
意味のない攻撃にしびれを切らしたのか、3体が集まって一気に攻撃態勢に入ろうとする。どうやら大技のようだ。
「うぐっ?」
「ぐあっ?」
「な、なんだ?」
ところがその技を出そうとして少し高度を落とすと、急に動きが鈍り始めた。
「俺が意味もなくブーメランを投げてたと思ったのか。鳥人族だからって、頭も鳥か」
鳥人族の単純な攻撃から、あまり考えるタイプではないと思い、意味のなさそうな攻撃にたいして、何か裏をかくことなど考えることもないだろうと思ってのことだったが、まさにその通りだった。
「二一ちゃん、あれは何をしたのっ?」
「ブーメランに電気の属性を付与したんだ」
「で、でも、ブーメランは今投げてないし、触れた様子もなかったよっ」
「ブーメランそのものじゃない。ブーメランの軌道上に電気を残したんだ。文字通り見えない攻撃になる」
二一が投げていたブーメランは、ブーメランそのものをあてることが目的ではなく、たくさん投げて、その軌道を多くしておくことであった。
それにより、軌道上に電気を残し、それに触れた鳥人族は動きが鈍ったのである。
「今だ!」
「了解です!」
そして二一の合図で、近くの木からクレアロッテが飛び出す。
「なんだと!?」
高い木からの猫人族特有の大ジャンプで、クレアロッテは鳥人族の上をとった。
「行きますです!」
そしてそのまま上から全力の突進を浴びせる。
「ぐぁぁぁ!」
そして1体の鳥人族を地面に叩きつけた。
「おい、大丈夫か!」
1体が倒されたので、残りの2体は心配して地上に考えなしで降りてくる。
「鳥頭め。ちゃんと考えて行動しろ」
「えいっ!」
そして残った2体は二一と歩の攻撃範囲に入ってしまい、それぞれ雷の銃と光魔法を受けて倒されてしまう。
そして、鳥人族の3体は完全に鎮静化された。
「よっしゃ、折れ耳ナイスだ。よくやってくれた」
「いえいえ、これくらいなら大丈夫です」
「プチ狐。そっちは大丈夫か」
「はいでございます。防御なら任せてくださいでございます」
「ピッキーも大丈夫か」
「は、はい。皆さんお怪我は……」
「うまいことやった。ちょっと疲れたくらいだろ」
おそらくこの世界にきて最も苦戦した戦いではあったが、それでも明確なダメージは受けなかった。




