第3話 鳥人族
「ルナルデッタ姫ですか?」
そうして森をさらに進んでいくと、た亜人らしき生物に話しかけられた。
「あ、あなた達は誰ですか?」
ルナルデッタが警戒の様子をみせたので、彼女にとっては見慣れていない。つまり普段ロゼッタに来ることがないということである。
「申し遅れました。私たちは鳥人族です。竜人族とは協力関係にあります」
彼らが名乗ったのは鳥人族。
比較的これまでの亜人は小柄だったが、鳥人族は二一よりも体格が大きく、羽とクチバシ以外は人間に近い。
鳥人族と竜人族は長い間人間に対して敵対をしてきた種族であり、ルナルデッタの前にクレアロッテが立って警戒する。
「そんなに警戒しないでください。カトリーネ殿から話は聞いております。タニアで亜人が冷遇されなくなったと。それで私たちは案内に来たのです」
「あら、そうでしたか? それは申し訳ありません」
ルナルデッタが警戒を解いて、話を始める。
「大変ご迷惑をおかけした。案内をするはずの2人が逃げてしまったそうで」
「最近オオバチが出られるのですか?」
「ええ、実は最近魔王の四天王の1人がここで目撃されたそうで、一気にオオバチを作っていきました」
「私はオオバチにあったことはなかったです」
「クレアロッテ殿がいられるところは、平和なのです。私たちが陣取っているこの辺りが襲われました。おそらくなんですが、今回タニアがまとまって、すぐにこうなりましたので、魔王に亜人が人間に協力する可能性が疑われたのでしょう。
私たち鳥人族と竜人族が人間に協力していないことは、存じているはずですから」
「それは、申し訳ないですね」
「いえいえ、今回ほとんどのオオバチを倒していただけました。今後協力関係を続けていければ対策も立てられるでしょう」
鳥人族からは敵意がなく、特に迷う様子もないまま進んでいく。
「これで大丈夫そうかなっ」
クレアロッテがルナルデッタのそばにつき、その後ろをほかの3人が歩いている。
歩が二一に耳打ちで質問をしていた。
「どうかな。あいつらの言っていることが本当ならいいんだが、おいプチ狐。四天王っていうのは分かるか?」
「わかりますでございます。ただ、メンバーが200年前とは変わっている可能性がたかいのでございます。あの鳥人族がいうとおり、四天王にも魔物を生み出す能力は確かにあるのでございます」
ジャンマリアが嘘をつくことはメリットがないので、つまり鳥人族の言っていることは、辻褄が合わないことは言っていないということである。
それでも二一は警戒はしていた。話に整合性があるからといって、それが真実であるという根拠は全くないからである。
ついでに四天王も調べておいた。
『四天王』
大魔王が従える最上級の魔物で、無敵の大型魔物ミドリン、猛毒使いイクスナ、不死身のシマクニ、変幻自在のクトカのことである。
ミドリンは体格が大きすぎること、イクスナは隠密に向かないので、大抵魔国の外で見つかるのはシマクニかクトカである。
「分かりやすい説明ご苦労さん」
便利な自分の能力に感謝した。
「結構歩きますね。私はあまりこちらの森には来ないのですが、広いのですね」
既に長い距離を歩いているうえに、オオバチの襲来もあってかなり披露している。
そのうえでさらにかなりの距離をまた歩いているので、ルナルデッタは顔に明らかに疲労の色がにじんでいた。
「少し休憩したほうがいいです」
それを見て、クレアロッテが休憩を申し出た。
途中から案内を鳥人族に任せていたので、歩はライトをつけていない。
そのためずっと暗かったのだが、明らかに日が沈みつつあることは理解できる空気はあった。
時間的にもそろそろ眠くなる時間帯か、歩が頻繁にあくびをしていた。
二一もそろそろ休憩のタイミングであろうと思った。
「もう少し進んだほうがいいと思いますが。ここは魔物の危険性があります」
だが、鳥人族はそれをよしとせず、もう少し進むことを進言した。
「魔物が出るリスクはどこでも一緒だろう。別にここでも一緒じゃないか?」
もちろんそれを二一が納得するはずもなく、疑問を問いかける。
「もう少し行けば確実に安全な場所があるのです」
「どうして分かる? そこが目的地なのか?」
「いえ、ですがわかります」
「根拠がないだろう。それじゃまるで、『魔物が出てくる場所が初めからわかっている』みたいじゃないか?」
「な、なんていうことを言うんですか。すいません」
人間と亜人が協力関係になっていく方向性であまりといえばあまりな発言をルナルデッタは咎める。
「いえ、しかしどちらにせよ、野宿は危険でしょう」
「俺がマジックテントを持ってる。疲れてるピッキーとを休ませて、俺と折れ耳で見張っててやる。ここで待ってるから、あんたらはその安全なところに行って休めばいい。ここはあんたらのテリトリーだから、場所は分かるだろう」
「ここから結構遠いんです。あなた達を明日発見できなかったら大変ですよ」
「それはおかしいだろう。だとしたらこの明らかに疲れている様子のピッキーが歩ける距離じゃない。無理はさせない」
「…………」
鳥人族が黙る。その様子をみて、ルナルデッタが首をかしげる。
「平和ボケしたタニアの人間にしてはずいぶん察しがいいんだな」
ピク!
「危ないです!」」
鳥人族の1人が自身の羽を1枚飛ばす。
クレアロッテがその動きを察してはじきおとした。
軌道がそれた羽は木に当たったのだが、木は深くえぐれ、その威力がうかがえた。
「ど、どうして?」
「どうしても何もないだろう。我々は人間に敵対している。そのためにはあんたがいることはまずいんだ」
「本当はもう少し先に完璧な布陣を整えてあるんだが、ここでも十分だ。1人だけ戻ってもらって、3人でここにいてもらおう」
すると、4人組のうち1人が後ろに走っていき、残りの3人が臨戦態勢に入る。
「まぁそんなことだろうと思ってたがな」
それに対して、二一、クレアロッテ、歩も布陣を整える。
鳥人族という種族は、戦闘力、知力のバランスも良く、決して不遇されている種族ではない。
そもそもカトリーネが確認した通り、亜人には7種類いる。
それが、狐人族、犬人族、猫人族、牛人族、竜人族、鳥人族、魚人族である。
このうち魚人族は200年前の戦争で魔物の味方をしたため、現在は存在していないといわれている。
亜人の中でも、最も信頼されているのは、犬人族である。
戦争でもほぼ全部の種族が人間の味方をし、人間に対しても友好的な態度をとる温厚な種族である。
ハンドーロに住んでいて、人間は犬人族を見ても一応逃げることはない。
まず危害を加えられることはないからだ。
そして、今回の二一の実績で、よりその信頼を深め、タニアにおいて有力な地位を持っている。
他国でもわずかに信頼されている亜人はほとんどが犬人族で、なんとドルツには1人だけだが、犬人族の要人がついに迎えられているのだ。
ドルツが反亜人主義をとっているため、あまり立場は高くないが、それを抜きにしても採用されることはやはり犬人族が優遇されていることは間違いない。
それと並んで信頼されているのは、牛人族。
種族の数自体は多くないが、犬人族以上に温厚でだが戦闘向きというタイプである。
戦闘時のスタイルが凶暴なため、多少敬遠されているので、タニア国外にはまったくいないが、タニアではそこそこ存在がみられる。
そして、中途半端な地位が猫人族である。
クレアロッテみたいな純粋な存在は少なく、基本的にはプライドが高くて気まぐれな種族で、人間に対して友好も敵対も半々くらいで、しかもそのメンバーがたまに入れ替わる。
その割には戦闘力が高い。じつはカトリーネとクレアロッテ以前には、猫人族の要人はさすがのタニアも引き入れていなかったくらいである。
そして、竜人族。数こそ多くないが、単独で一国を支配できる戦力を持っているというほど。
単純に戦闘を行えば、狐人族とも対等に戦えるとまで言われる。
狐人族には実質上の戦闘力がないことを考えると、数は少なくとも亜人族最強と言っていいのである。
そして、人間族に敵対しながら、あまりの強さに200年滅ぼすことができなかった。
1体いれば、1つの都市が滅ぶ。
そんな彼らがおとなしくしているのは、狐人族が一応人間についていることで、戦闘を行えば、間違いなく苦戦を強いられることと、同じ亜人のことは嫌っていないことの2つである。
人間と大きな戦争になれば、友好を結んでいる犬人族も倒すことになる。
彼らは人間を嫌っているだけで、人間に味方する仲間を嫌うことはない。
そして、狐人族には尊敬の念を抱いている。
なので、亜人が0人になれば、その国は絶対に竜人族によって攻め込まれるとずっと言われている。
さて、件の鳥人族だが、もともとは友好も敵対もない中立の種族であった。
空を主な存在とする彼らには、あまり地上での戦いは興味がなく、魔物も自分たちの邪魔をするくらいなら倒すくらいであった。
なので戦争もさほど参加せず、大した報酬も処罰もなかった。
そんな彼らがなぜ人間に敵対するようになったかは現在も不明である。
本当に何があったのかはわからなかったが、数十年前に、彼らが人間を大虐殺し、それを竜人族がかばい建てたことしかわかっていない。
もともと謎の多い生態だけに、竜人族以外の種族とも接することが少なく、原因は分からないままであった。
そんな彼らだからこそ、ルナルデッタは疑いはあったが、本当の意味では疑うことができなかった。
亜人を同族としてみている彼女は、鳥人族のことも知りたかったのである。
だが、その期待は裏切られ、鳥人族は彼女を襲った。
これは今回の竜人族の呼び出しも安全を保障できるものではなくなってしまったことを証明するものであった。




